225.三精霊様と半神族と
「どうぞ、こちら新作のスパイス梅酒です」
『おぉ、なんじゃ・・・以前のものとは香りが違うのぅ』
『これは色々な香りがするねぇ』
『ほほぅ、これはまた・・・』
以前に作った黒糖生姜の梅酒のアレンジで、シナモンや胡椒にカルダモンなどのカレーにも使うホールスパイスをたっぷりと漬けて、ちょっと個性的なお酒となった。いわゆるクラフトコーラのアルコールバージョンである。
焼肉にジンジャーエールもコーラも合うから、これもアリだろう・・・という事で、ビールなどと一緒に新作梅酒をお披露目してみた。
しかもこのお酒にも薬効はちゃんとあって、すでに【鑑定魔法】でも確認済だ。
今回もエリクサー仕様になっているのは同じだけど、こちらはさらに「滋養強壮」の効果もついていて、さらにパワーアップした模様。
まぁね、そもそもスパイスって漢方薬の原料になるからね・・・。
先に味見をしてくれた大白鷲さんによれば『うむ。これは力が湧いてくる』と言っていた。お疲れの方にも良さそうな『薬用養〇酒』っぽい、過労気味のルーカス様に差し上げたいお酒が出来上がった。
そんな新作のお酒を飲んだり、ゾフィさんご自慢の深紅牛を食べたりと、最初は遠慮がちだった三精霊様も楽しんでくれているようだ。
『ところで、其方はその耳としっぽが良く似合うのぅ』
そんな上機嫌というか、ほろ酔い?の真珠爺様から、まさかの猫耳としっぽが似合うというお褒めの言葉をいただいた。
確かにこのしっぽは我が家では大人気である。主にチビッコさん達にだけど。
「あはは、ありがとうございます。これは苔茶を飲んだその副効能なので、残念ながらポーションの効果が切れたら消えちゃうと思いますけど・・・」
そういえば、ポーションの身体強化の効能もそろそろ切れるはず・・・あれ? もう流石に切れてるわよね?
調理中は便利だったけど、今はもうあれからけっこうな時間が経っている。
なんで耳としっぱがそのままなんだろう・・・。
そういえば猫妖精族のマオちゃんリオちゃんは、私と同じくらいの量を飲んでいたけど彼女たちは身体強化がされただけで、副効能の二本目のしっぽが生えたりはしていないのよね・・・。
これは妖精族と人族の種族差なのかしら。
『そういえば其方は半神族で、すでにその身の半分は人ではないからのぅ・・・只人とは効果の程度も違いそうじゃなぁ。・・・まぁそのしっぽもいずれは消えるであろうて』
・・・なんか今、聞き捨てならない言葉を聞いたような。
何度も言うようですが、私は「人」を辞めた覚えは無く・・・。その「半神」って存在がイマイチよく分からない。自分では以前と変わった感じは全くないし・・・あ、多少は肉体が若返りましたけども。
『あー、確かに愛し子ちゃんは女神様の御力が備わっているから、普通の人よりは効果が続きやすいのかもね』
真珠の君にまで、ほろ酔いの麗しいお顔でそんな事を言われてしまう。
まぁ今のところ不便は無いので、暫くこのままでも構わないんですけどね。しっぽはヴィーちゃん達にもご好評ですし。
・・・ロアの反応だけは意外というか、ちょっと心配になったけど。
『ところでその苔茶、私も飲んでみたいのだが・・・』
カフィの木の精霊様も?
『飲み物としてだが、あのコーヒーと比べたい』
「でもコーヒーとは似ても似つかないですよ? どちらかといえば緑茶とハーブティの中間のような・・・・・・あ、中国茶とかに近いかもしれません」
『ちゅうごく茶?』
そっか。精霊様は知らないよね。我が家でもお出しした事は無かったと思うし。
「中国茶というのはお茶の一種なんですけど、緑茶とか紅茶の仲間ですね。同じ茶葉から作られるんですけど、製法が違うお茶というか」
代表的なので思い浮かぶのは烏龍茶だけど、白茶や青茶とか発酵の違いで色々と種類があるみたいだし、中国茶は奥が深いよね・・・。もちろん中国には緑茶も紅茶もあるしね。紅茶だとキーマンが有名だっけ。
『ほほぅ・・・それは興味深い』
どうやらカフィの精霊さんはより一層この苔茶に興味を持たれてしまったようだ。
とりあえず、さっき作ったお茶が冷蔵庫に残っていたのでお試しをしてもらう事にした。
『ふむ・・・これが苔茶か』
『へぇ、このお茶がポーションになったんだね。僕も試しに飲んでみたいな』
『では儂もいただいてみようかのぅ』
結局、三精霊様みんなで苔茶の試飲会となってしまった。
皆さん、やたら新製品に興味深々なんだもの・・・。
『ふぉっふぉっふぉ。我らは長生きしておるからの。こういった新しい物には飛びついてしまうのじゃよ』
『そうそう。僕らみたいに長生きするとさ、同じことの繰り返しで日々が退屈なんだよね』
『・・・だから「コーヒー」とか「梅酒」とかの新しい物には目が無いのだ』
なるほど・・・言われてみればそうかもしれない。長生きで暇すぎるとか、贅沢な悩みだけど。
でも精霊様のように私たちとは違ったレベルの違う長生きだったら、それも納得かな・・・。
でもその目を惹く新しい事って、すべて食べ物や飲み物なんですね? つまるところ、只の食いしん坊さんなのでは・・・?
まぁ、それはお互い様なので言いっこ無しにする。
「こちらは冷やした苔茶です。そのままどうぞ」
冷茶として苔茶・・・もといポーションをピッチャーからグラスに注ぎ、それぞれにお出しする。
まさかこの身体能力向上のポーションを三精霊様が飲むことになるなんてね・・・。
でも果たして彼らには効くのだろうか。だって普段から梅酒をがぶ飲みする精霊様ですよ? 効果なんて出ないような気が・・・。
『・・・うむ、飲みやすいのぅ』
『口の中がさっぱりするね』
『この味は、悪くないな・・・』
「効能はいかがですか? 身体強化系だそうですけど、精霊様に効果があるかどうか・・・」
『そうじゃなぁ、我等には効かぬなぁ』
『そもそもポーションは、ほぼ人族用だしねぇ』
『我らは味を楽しむだけになるな・・・』
「ですよね・・・。エリクサーだって、精霊様にとってはただの美味しいお酒ですものね」
これは予想通りの結果だった。
『まぁ、これはこれで旨い茶であることは間違いない』
『苔ってこんな爽やかなお茶になるんだねぇ』
『これは苔に限らず、もっと色々な素材を試すのも良いかもしれないぞ』
「そうですね。また地下迷宮で新たな素材を集めてみたいです」
「・・・リサちゃん、このお茶の苔は地下迷宮の素材なのよね?」
メメさんが興味深そうにピッチャーを覗いているので、残っていた原料の苔を持って来てお見せする。
「この苔はあの地下迷宮に湖にたどり着く前に、途中の洞窟で採取したんですよ」
その苔を手に取ってまじまじと観察するメメさん。
美人は何を持っても絵になるなぁ。それがたとえ苔だったとしても。
「・・・この苔に似たものが・・・うちの洞窟にも生えているのだけど」
「え? メメさんのお住まいに?」
それって、また違う種類の苔かしら・・・
「こんど、その苔を見せてもらっても良いですか?」
「もちろんよ・・・この苔と同じかわからないけれど、あなたなら鑑定したらわかるでしょうし・・・」
メメさんと一緒に採取をしに行く約束をして、すっかり俄か苔ハンターとなった私だった。
「メメさんもこの苔茶を飲んでみますか? その、副効能が気にならなければ・・・ですが」
洞窟島で苔茶について話した時も試してみたいと言っていたし、私が飲んでみてもこれといった副作用は無かったから人体実験済みということで安全性は問題ないと思う。
いまや真珠爺様たちのお墨付きでもあるし。
「・・・ふふ。私にも猫耳やしっぽが生えるかもしれないのね・・・?」
「あと効能がどの程度か個人差もあるようですけど・・・それでもよろしければ」
メメさんに猫耳とか可愛すぎるだろうから、ぜひとも生やしてほしいけど。
「もちろんよ、この話を聞いてからずっと試したいと思っていたの・・・」
「こほん。リサ嬢、私も飲んで良いですか? 私は身体強化の程度が気になっておりまして・・・」
私たちの話を聞いていたゾフィさんが同じく挙手された。
彼は純粋にポーションの効果が気になるみたいだけど・・・イケメンエルフさんの猫耳・・・すごい見てみたい。こちらも期待大である。
「どうぞどうぞ」
私はお二人に苔茶をグラスにたっぷりと注いで手渡す。
この「たっぷり」というのは決して猫耳を期待してでは無い・・・無いったらない。
こくこくと味わいながら飲むメメさんに、ゴクゴクと一気に飲み干すゾフィさん。
「あら、おいしい・・・」
「ええ。これは味が良いですね。ポーションとは思えない美味しさです」
三精霊様に続き、二人のお口に合ったようで良かった。
「・・・本当ね。効果がすごいわ」
飲んでしばらくすると、メメさんが尾びれを動かしていた。かなりの手ごたえを感じているようだ。
「今は水中ではないから分かりにくいけど」と言っていたけど、尾びれが速く滑らかに動き、そして身体がずいぶんと軽く感じるそうだ。
でも、あれ・・・? しっぽは・・・お耳は・・・?
今のところメメさんに特に変わった様子は無いみたい・・・うぅ、残念。
「ふぅむ・・・これが身体強化ポーションですか・・・良い! 実に良いです!」
そう言って場所を変えて剣の素振りを始めるゾフィさん。こちらも外見上の変化はまだない。私の時も時間差があったから、もう少し後になって生えるのかな・・・?
その後しばらくゾフィさんは私の目に留まらぬ速さでビュンビュンと型を披露していた。・・・うん、目で追えない・・・つまり私の動体視力は普通という事で、身体強化の効果が切れたという事かもしれない。
しかも、ふと窓ガラスに映った自分を見てみると、私の猫耳は元のヒト耳に戻っていた。
・・・良かった、ポーションの効果が切れたみたいね。じゃぁ私も、もう少しだけ飲んじゃおうかしら。
ちょうどおしゃべりをして喉も乾いたので、苔茶をグラスに注いで飲んだ。
「あー、爽やかで美味しい」
ポーションは魔力を注がなくちゃ作れないみたいだけど、これはお茶として普通に売れそうな感じがする。
苔茶の可能性を見出した私だった。
そしてこの時は、この話にまさかの第二段階があるなんて思いもしなかったよね・・・。
本日もお読みくださりありがとうございます。
ブックマークやニコニコマーク等は嬉しく、とても励みになっております!
あと誤字などのご指摘をいつもありがとうございます・・・( ;∀;)
とっくに夏休みの方も、ようやくお盆休みの方も、毎日普通にお仕事ですーの方も、暑さに負けず元気に過ごしましょうね(^v^)♪




