18.王都への道
急な話ではあったけど、ルーカス様について一緒に王宮へ行くことになった私たち。
出発が2日後と迫っていたので、レティシア様やメイドさんたちが慌ててドレスなど必要な準備をしてくれた。
王宮での謁見用のドレスは作る時間も無かったので、急きょレティシア様の独身時代のドレスを何点かお直しする形で用意してもらった。
これはメイドさんの人海戦術で、昼夜問わず針を動かして1日で仕上げてもらった。
余計なお仕事を増やしてしまって御免なさい! もう頭が上がりません・・・!
なにせレティシア様はスラリとしているのにお胸がばーんとあるので、私が着れるようにドレスは丈を詰め、袖を詰め、胸元を詰め、あらゆる部分を詰めてもらったのでした。
ちなみに唯一詰めなかったのはウエストだけ・・・。
泣いてもいいですか?
ドレスを何着も提供して下さったレティシア様には、せめてものお礼にと我が家で眠っていた頂き物の高級石けんやシャンプーを差し上げたら、とても喜ばれた。
正直この程度じゃお礼にもならないと思うけども。
同じくメイドさん達にも石けん(こちらは牛さんマーク)をお渡したら、こんな貴重なものを!? と恐縮されてしまった。
しかも香りがすばらしいので、しばらくは使わずにタンスに入れておくという人が多かった。
でも石けんだから使ってくださいね。
ともあれ、なんとか出発にこぎつけそうです。
ガタガタガタンゴトン
ガタゴトガタゴト、ガッタンゴトゴトン・・・・・
うぅ、馬車の揺れがひどい・・。
ルーカス様のお屋敷と薬師ギルドまでの短い距離なら問題はなかったけど、街を出たあとに待ち受けていたのがこの悪路!
街中の道はちゃんと整備されているけれど、王都までの道は小石などもちょいちょいある土がむき出しの道で、一部は砂利道のような場所だってあるのだ。
御者さんが良さそうな道を選んでくれてはいるだろうけど、どうしても小石に車輪が乗り上げちゃったりするものだから揺れがひどい。
昔から乗り物にあまり強くない私は、すでにライフがゼロな状態だ。
隣に座る座るロアはまったく平気そうなのに・・・むしろ普段と変わらない感じなのに。
「ねえリサ、顔色がよくないよ。だいじょうぶ?」
ロアにも心配かけてしまっているようだ。
「ちょっと馬車の揺れで酔っちゃったみたい。・・・ロアは大丈夫?」
「僕はぜんぜん平気だよ。小さい頃からずっと荷馬車での移動生活だったから、慣れてるしね」
そうか、これはやっぱり慣れの差なのか・・・。
乗り物酔いで気持ち悪いだけならまだしも、人様の馬車で吐いちゃったら本当にシャレにならない。
色々と、本当に色々と終わる・・・。
「ねぇ、リサはあの家で休んできたら?」
「う~ん・・・でも、もし馬車の中に居ないのがバレたらやっぱりまずいと思うし・・・」
「この馬車の中は僕たち二人だけだから、ここに敷いてあるクッションや毛布でも丸めておけば大丈夫じゃない? 僕がそれっぽく毛布を抱えて座ってるよ」
なんて優しい・・・!
正直その言葉にはちょっと・・いえ、かなりぐらぐらと揺れたけど、私一人だけが休むのはどうなのか。
流石に気が引けてしまって、次の休憩まで我慢した。
ただでさえ、普段のルーカス様だったら取らないであろう休憩を何度も挟んでもらっているし、これ以上は甘えられない。
そういえば、出発前に王都まで私の専属になるという護衛の人を紹介されたのだけど、なんとそれがアルお姉さんだったの。ビックリしたわ・・・。
「ごめんなさいねぇ~、実はワタシ、街で貴女の事を見かけたら密かに守って欲しいってルーカスから言われてたのよ」
どうやらアルお姉さんは領主であるルーカス様のお身内の方だそうで、私の護衛をするよう頼まれていたのだとか。アルお姉さんは隠していた事を何度も謝ってくれたけど、私からしたらこちらこそお手数をかけてスミマセンという感じだ。
ちなみにルーカス様はベルナール領の領主であり、現侯爵様であったりする。
本来だったら私がお話する事もできないような、雲の上の御方だ。王族・公爵・侯爵・伯爵・子爵・・・と続く貴族の序列でもかなり上なのは私でもわかる。
その親戚だというアル姉さんも、当然貴族様なんだろうな・・・あんなにも気さくなキャラだけど。
ちなみにヴァンフリードさんは今回はお留守番らしい。今頃はお店を一人で切り盛りしてるのかな。
ありがたい事に、馬車は私の為にペースを落として走ってくれる上に、今日は途中の宿に1泊してもらえるそうだ。
もうこれ以上は無理かも・・・!と内心思っていた所だったので、ひたすら有難かった。
休憩時間に御者さんに聞いたのだけど、ルーカス様が急ぎの時は自領から夜通し馬を数頭替えて走らせるそう。
もう馬車ですらないんだね・・・。それだと王都までは数時間で到着するらしいけど、とんだ強行軍だね・・・。
でも実際、同行してくれるアルお姉さんも馬でずっと並走してくれてたのに、疲れた様子など微塵も見せない。アルお姉さんは「今回なんて、いつもよりかなり楽よぉ」とか言っていた。
・・・皆さんは超人ですか? 私にはオリンピック級のアスリートに見えますが。
「ふわぁ~、ようやく揺れていない場所だぁ!」
宿のベッドに倒れこむ私と、心配そうに隣に腰かけるロア。
見たところ、彼はあまり疲れてなさそうだ。・・・ここにも超人が・・・?
「リサはもう寝た方がいいんじゃない? 夜ご飯は食べられそう?」
「食べたくないから、もう寝てしまいたい・・・けど、身体が埃っぽいから、やっぱりお風呂に入りたいな。できたらお家で入りたいけど。・・・ロアはどうする?」
「僕も一緒に行く」
ルーカス様達にはもう寝ます、と言って二人きりにしてもらい、我が家へお風呂に入りに行く。
はぁ~
我が家のお風呂は最高だなぁ~
ちゃぽん、とお湯の音が響く。
「ロアも一緒に入る?」って聞いたら、彼は顔を真っ赤にして「僕は後でいいから!」と私はお風呂場に押し込まれてしまった。
うん、そこまで子ども扱いしちゃいけなかったね。ごめんね、疲れすぎて頭がちょっと回っていなかったのよ・・・。
湯舟にゆっくり浸かりたい所だけど、気持ちよくて寝ちゃいそう。
何よりロアが待ってるからもう出なくちゃ。
お風呂からあがると「リサ、僕は今日お風呂いいから、戻って寝よう?」と言われてしまった。
これはかなり心配かけちゃってるな・・・。
「ありがと。でも私が髪の毛を乾かす間にロアもお風呂に入ってきて? 疲れがとれるよ」
「・・・うん。わかった。じゃあ入ってくる」
珍しく悩んでいたけれど、そう言ってお風呂に入っていく彼を見送った。
いつもお風呂だともっと嬉しそうなのに。
ドライヤーで髪の毛を乾かしていたら、ロアがもうお風呂から出てきた。
ちょっと早すぎない!? と思ったけど、私がぼんやりしてたのだろう。もしかしたら半分くらいは寝ていたのかもしれない。
その後はお宿に戻って、ロアには宿で用意されていたご飯を食べてもらったけど、私はそのままバタンキューだったのでした。
翌日の朝、また馬車に乗り込む。
その後は順調で、予定よりも早く領主様の王都にあるタウンハウスに到着した。
あー、やっぱりまだ自分が揺れているみたいだわ、とヨロヨロしながら馬車から降りると、ロアが横から支えてくれました。
ここに・・! ここに小さな紳士がいます・・・!
「顔色が悪いな。王宮に行くのは明日だ。部屋に案内させるから、しばらく休んでいなさい」
「有難う、ございます・・・」
ルーカス様にもそう言われてしまい、私は大人しく部屋で休ませてもらう事にした。
しかしこれは切実な問題だわ・・・。
帰りの馬車移動の事を考えると、今からものすごく気が重い。
もう帰りは王都から【転移魔法】で帰れないだろうか。
そんな長距離を一気に飛べるかも判らないけど。いやでも途中で泊った宿まで飛べば・・・とか色々考えていたらドアをノックされた。
「リサちゃん、少し横になったら? 体調を整えて、明日の謁見に備えなきゃ」
「ありがとうございます。そうさせて頂きますね」
アルお姉さんにも心配かけちゃってるなぁ・・・申し訳ない。
小さい頃は確かに乗り物酔いがひどい方だったんだけど、大人になってからは割と克服できていたのになぁ・・・。
やっぱり馬車は自動車とは違うんだね。これは早く慣れないとまずいかも。
乗り物酔いの時って炭酸とか何かすっきりするのが飲みたくなる。
・・・あ、こう言う時にポーションって効くのかしら。
それに今日はシンジュの木にお水もあげてないし、我が家に行っちゃおうかな。




