【閑話】恋敵?(ロアン視点)
普段からリサは寝つきが良いみたいで、隣ではもう寝息が聞こえてきた。
ぼくは、ちょっと考え事があってまだ起きている。
今日お会いした領主様の家族は、みんなイヤな臭いはしなかった。・・・それは喜ばしいことなんだ。
でも領主様の子息であるアレン様とダリル様はずっとリサから目を離さなかった。リサが招かれ人として注目されてしまうのは当然なのかもしれないけれど。
肝心のリサは、その辺りをまったく気づいてなかったみたいだけどね・・・。
一生懸命にリサの居た世界の事を説明したりしてた。
ちょっと気になるのは、あの兄弟はまだ婚約者がいないと領主夫人が言ってた事だ。
しかも僕と違ってリサより2、3歳くらいしか年が違わないから、もしかしたらリサをお嫁さんに・・・とか思っているのかもしれない。
くやしいけど年の差ってどうやっても変わらないんだよね・・・別に関係ないけどさ。
・・・何だかモヤモヤして嫌だから、違うことを考えることにする。
そう。今日は嬉しい事がたくさんあったんだよ。
僕は今までいつ生まれたとか、自分の本当の年齢なんて知らなかった。
それでも不便は感じる事も無かったし、生きるのに精いっぱいだったから、正直今まではどうでも良かったんだ。
でも・・・そんな僕に、リサが『11歳おめでとう』って祝ってくれた。
まるで僕が生まれてきたのが嬉しいとでも言うように、精一杯お祝いをしてくれたんだ。
大きなケーキまで焼いてくれて、すごく嬉しかった。
リサに出会ってからの僕は恵まれすぎていて・・・ちょっと怖いくらいだ。
彼女は僕を奴隷から解放してくれた恩人だ。そして僕を家族として迎えてくれ、僕が生まれたことまでお祝いしてくれた。
もうこれ以上の幸せって無いんじゃないかと思うんだ。
どうかこれからもリサと一緒にいられますように。
僕は心の中でいつも女神様にお願いしている。
そういえば、ギルドでもうひとつ、判明したことがある。
僕は獣人の中でも幻といわれる銀狼族だったのには・・・正直ちょっと驚いた。狼であるのは知っていたけど、銀狼族は一線を画す種族と言われている。
僕もいずれ自分が成人してギルドに登録すれば、きっと種族は分かるとは思ってた。
両親の記憶が無い僕は、自分が獣人という事以外は知らなかったから。
でも別にそこまで知りたいとも思っていなかった。
本当に、リサに会う前の僕は、生きてゆくのにまるで希望が持てなかったんだ。毎日をただ生きていただけだった。
僕が銀狼族だということは、大きな意味を持つ。
それは大人になる頃にはきっと圧倒的に強くなれるってことを意味するんだ。それこそ並の人間なんかが歯が立たない位に。
だって銀狼族は、あの伝説の神獣フェンリルの血を引くと言われている一族だから。
今はリサに守られているばかりの僕だけど・・・遠くない将来に、きっと僕がリサを守ることが出来るようになる。
僕は早く一人前になって、リサを守れるようになりたい。
貴族様だろうが誰だろうがリサの隣は譲るつもりは無いからね。
どんな恋敵達が現れたって、負けるつもりはないんだ。
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