【閑話】やきもき と やきもち
「にゃ・・・?」
リサちゃんのこえがするにゃ・・・
ロアと小声で話していたリサを見つけるや否や、ヴィオは飛び起きた。
その時、うっかり側で寝ていたグレンの顔をちょっとだけ肉球で踏んづけてしまったが、グレンはまだ夢の中だから問題なさそうである。
そもそもグレンはとても頑丈だし、もし起きていて踏まれたとしても、おおらかな彼は気にもとめないのだが。
「リサちゃん! おかえりにゃさーい」
そのまま椅子からジャンプし、リサの腕の中に文字通り飛び込んで首元に顔をこすりつけ、にゃぁにゃぁと甘える。
しっぽもくるん、とリサの腕に巻きつけた。
「うふふ。ただいま、ヴィーちゃん。遅くなってごめんね」
リサは昼間から晩餐会の準備をするということで出かけて行き、夜も更けた今までずっと不在だった。
そのためヴィオたちはリサのいない夕食を済ませ、いつもならお風呂からあがってリサが遊んでくれるはずの時間を、静かに丸まって過ごしていた。
だがリサを待っているうちに、いつのまにかヴィオはグレンと一緒に眠ってしまったようだった。
いままでこんな長い時間をリサと離れた事がなかったので、落ち着かないような、不安のような・・・そんな時間を過ごしていたヴィオたちだった。
もちろんリサは同行するルーカスとお仕事に出かけただけで、「今日は遅くなるから、先に寝ていてね」とも言われていたし、理由はちゃんと知っていたけれど。
その日のお夕飯はロアが温め直してくれたシチューを食べ、その後はミケネーたちとお風呂に入った。
でもやっぱりリサがいないと、おいしいご飯もいつもより進まなかったし、お風呂で遊んでもなぜかそこまで楽しくなかった。
グレンでさえ、いつもより元気がなかった気がするし・・・ロアもどこか心ここにあらずという感じでソワソワしていたせいかもしれない。
夕食後は気分転換にとゾフィ達に誘われたロアは、オセロを始めた。
それを横でヴィオとグレンは眺めて過ごしていたら、そのまま眠ってしまったようだ。
オセロの最中でロアがポツリと「あっちでエルフ族の貴族との出会いがあったりするのかなぁ・・・」と、思わずだろうか、言うつもりのなかったであろう心配ごとを口にしていた。
それを聞いたゾフィに「大丈夫だよ、ロア君。きっとリサ殿はエスタール閣下たちが片時もお側から離さないだろうから」と言われて、少しホッとしていたようだ。
自分では思いもしなかったロアの一言に驚いていたヴィオも、それを聞いて同じように少し安心したのだけど。
そのような感じで三人ともいつもより元気がなかったのは間違いなく、半日とはいえリサがいないことに何とも言えない寂しさを、それぞれが感じているようだった。
いままで当たり前のように一緒にいた時間が長すぎたのかもしれない。
少し離れただけでこんなに気持ちが落ち着かなくなるなんて、思いもよらなかったロア達だったのである。
そのリサは今「うふふ、ヴィーちゃぁぁん」と言いながらヴィオの顔にたくさんちゅっちゅして、さらにはヴィオのお腹に顔を埋めると、しばらくの間すぅすぅと吸っていた。
ヴィオはされるがままになっており、傍から見たらぬいぐるみと間違われそうだったが、本猫はいたくご満悦だったりする。
リサの一連のこの行動は、ヴィオがペロペロと舐めたり頭を擦りつけるマーキングと一緒で、究極の親愛のしぐさなのかもしれない。
そう思うとヴィオは嬉しかったし、とっても満足していた。
しかもリサはこの親愛のしぐさを、同じ猫であるミケネーにはしないので、ヴィオは「ぼくだけにゃの」と密かに自慢に思っていたりするのだ。
これは余談だが・・・
後日、猫妖精であるネオたちの家に行った時、リサがうっかりヴィオの兄弟姉妹である猫たちに、いわゆる猫吸いをしそうになるのを、慌ててロアから止められたりするのだが・・・リサはあわやヴィオのちいさなこころに傷を残しそうになるのを、彼の機転でまぬがれたのだった。
幼くとも心の機微はおとなとそう変わらないのだ。
立派にやきもちも焼けば、独占欲だってちゃんとある。
ヴィオはちいさなお胸におててを当て考える。
将来、ロアおにいちゃんがリサちゃんの「おっと」になるのなら、ぼくは「こいびと」になるのかな、と。
もしくは「だんなさま」でもいいかもしれない。
グレンはリサちゃんをママと呼んでいるので、もしかしたらぼくの「むすこ」になるのかな、とか。
この考えだと一夫多妻制の逆バージョンになってしまうのだが、ヴィオはわかっているのだろうか。・・・あまり分かっていないような気がしてならない。
そんなヴィオのこころの内をリサは知ってか知らずか、これからもヴィオにちゅっちゅしたり、いわゆる猫吸いを頻繁にするのだが・・・いったいどんな未来が待ち受けているのやらである。
「さてと。私は急いでお風呂に入ってくるね。もう遅いし、ロアもヴィーちゃんも先に寝てちょうだいね」
そう言って意を決したようにリサがヴィオから離れ、浴室に消えてくのをロアとヴィオは見送っていた。
――――ヴィオは「もっとちゅっちゅしてくれてもいいのににゃ」と内心では思っていたのだけれど。
「ロアおにいちゃん、リサちゃんがかえってきて、あんしんにゃ?」
「そうだな。半日だけでもリサがいないと、こんなに落ち着かなくなるんだって知って自分でも驚いたし、あと色々と学んだよ・・・」
なんだか複雑そうな顔をするロアだったが、ヴィオもなんとなくだけどその気持ちが分かったようだ。
誰かにリサちゃんを取られちゃったらいやだもん、と。
リサがもし帰ってこなかったら・・・と、まぁ要らぬ心配をしていたロアとヴィオであったが、もちろんリサはそんな二人の気持ちを知る由もなかった。
実はその晩餐会でリサはエスタール達に囲い込むように独占され、他の貴族が声をかけるチャンスをことごとく潰されていたのを、ロア達はおろかリサ本人も知らなかったのだが。
そんな二人をそっと見守る陰がまた二人。
ミケネーとゾフィは隣の部屋で寝たふりをしながらも、先ほどのリサ達の会話を、悪いと思いつつもしっかりと聞き耳を立てていたのだった。
なにせお耳のよい二人である。
「これで明日からはいつも通りになるかねぇ」
「そうだと・・・思うよ」
そんな会話が交わされたとか、いないとか。
本日もお読みくださりありがとうございます。
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どうもありがとうございます(*^ⅴ^*)
春先って体調がイマイチだったりしませんか? もう寝ても寝ても眠かったりします_(:3 」∠)_
やっぱり元気が一番ですね。
皆さんも元気にお過ごしくださいね。




