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161.出来る子グレンと天才ゾフィさん

 

「ほぅ、家の庭にオフロとな?」


「はい。ゾフィさんが魔法を駆使して作ってくれるそうなんです」


 昼餐会の席でエスターシャ女王陛下と同じテーブルを囲んだ私は、今朝の出来事をかいつまんでお話しした。

 ちなみにロアはお留守番組で、我が家でヴィーちゃんとグレンを見てもらっている。


「ふむ。あのゾフィであれば造作もなかろう。あれは手先も器用な男だしのぅ。・・・おぉ、そうじゃ、お祖父様たちが自慢のオフロを早くそなたに見せたいと昨日も話しておられたぞ」


 エスタール様とナターシャ様ですね。

 この使節団のお仕事が終わってからお訪ねする予定にはしているけど、それでもかなり延び延びになっちゃってるからなぁ・・・。


「どんなお風呂を作られたのか、私も拝見するのをずっと楽しみにしているんですよ。お手紙にはかなり凝った造りにしたとありましたし・・・」


「ふふ、その通りだ。きっと驚くであろうよ。あれは私も初めての経験だった」



 昼餐会でご馳走をいただいたあと、エスターシャ女王陛下の案内で庭園を散策しながらお話をした。


 気になっていた例のトカカ病の患者さんも、罹患して療養していたほぼすべての人にエリクサーが行き渡ったようで、その皆が回復をしたそうだ。私もそこまではお手紙にも書かれていたので知っていたのだけど、やはり直接ちゃんと聞けたのは嬉しい。

 初耳だったのは、あの完全エリクサーはかなり薄めても効果があったとかで、処方したエルフ族の医師たちが驚いていたとか。あらためてエリクサーってすごいな・・・。


 それと朗報だったのは、エルフ国ではあれから新たな患者さんは見つかっていないそうで、トカカ病のまん延はほぼ終息したとみているそうだ。


 ただ折を見て、また我が家でエリクサーが出来上がったらお譲りしたいとは思っている。ハイエルフ族のエリクサーが出来上がるのには数年かかるようだから、それまでの繋ぎは持っていてもらいたいからね。備えはだいじですから。


 それに私たち人族が掛かりやすいというゴア熱のお薬も、今回エルフの国から主材料であるエメの葉を譲ってもらえる事にもなったし、これでようやくお互いが安心できる状況になってきたのではないだろうか。




「ただいま帰りましたー」


「リサちゃんにゃー! おかえりにゃさーい」


 我が家に戻り裏庭に回ると、足音で分かったのかヴィーちゃんがいの一番に走ってきた。


「ただいま。お留守番ありがとうね」


 走ってきたヴィーちゃんをそのまま受け止めて抱っこする。うーん、いつも思うんだけど猫さんのジャンプ力がすごいね。あと同時にグレンも「ぴゅーっ」と頭上から降ってきた。いやどうして真上から・・・?


「おかえり、リサ。昼餐会はどうだった?」


 そう言いながらロアが頭に張り付いたグレンを引き取ってくれたので、私も「ただいま」と返しながら、ヴィーちゃんを落とさないように両手で抱き直した。

 まぁヴィーちゃんはたとえ落ちても華麗に着地をしてくれるんだけどね。猫さんってジャンプ力もそうだけど、高いところからしなやかに着地したりと、運動能力が本当にすごい。

 あとグレンは私がキャッチしなくても飛べるから別に問題はない。・・・無いんだけど、ここは母として受け止めないとダメなやつ・・・。


「あのね、エスターシャ女王陛下からトカカ病のその後をお聞きしたのだけど、療養していた人達はみんな元気になって、今はもう新たな患者さんもいないんですって」


「そうなんだ。それは何よりだね」


「本当に良かったよー」



 その後もロアに昼餐会でのことを色々と報告していたら、その背後にまさかの造形物が見えて我が目を疑う。


「まさか、あれって露天風呂?! もうできちゃったの?!」


 そこには温泉旅館に引けを取らないような、立派な露天風呂が出来上がっていました。

 あれからまだほんの数時間しか経っていないのに・・・!


「うん、そうなんだ。ついさっき出来たばかりだけど、もうゾフィさんの土魔法がすごかったんだよ・・・!」


 ロアが珍しく興奮して、ゾフィさんの魔法がどうだったかを詳しく報告をしてくれる。うわぁー、私も一緒に魔法で作るところを見たかった!



「リサ嬢、まだ手直し前の段階ですが、こんなかんじでどうでしょうか?」


「素晴らしいです・・・! あまりの再現力に驚きました・・・!」


「それは頑張った甲斐がありましたね。あとは実際に入ってみて不具合などがあったら直しますよ」


 いえいえ、これに手直しなんて必要ないと思います・・・!

 それにしても浴槽に使われている、大きめの石とか煉瓦というかタイルというか・・・こういった材料はどこから・・・?


「あの・・・ここで使われている素材はどうしたんですか? うちにはこんな材料は無かったですよね・・・?」


 我が家にはタイルなんてお洒落なものは無かったはず。あってもお庭で仕切りに使う煉瓦くらいだろう。


「それはですね、庭の土と手持ちの石英を圧縮して固めまして・・・グレン殿が焼き固めてくれたので水に強く、丈夫な素材が出来たのですよ」



 なん・・ですって・・・?

 石英って水晶のことかしら。それを土と混ぜるとタイルのように光る煉瓦が出来ちゃうの?!



「・・・グレンが焼き固めるって・・・あなた、そんなことが出来たの?」


 隣りにいるロアに抱えられたままのグレンに聞くと、得意げに「ぴゅぃぴゅぃ」答えてくれた。

 え・・・? くちから炎が出せる・・・? 初耳なんですけどっ!?


「ぴゅぴゅーぅ、ぴゅぴゅぃ!(おかあさんのまねしたら、できたの!)」


「ぼく、グレンのおくちから火がでたとき、すごくびっくりしたにゃ・・・」


「ぴゅうぅー!(ぼくもびっくりした!)」


 お子ちゃまたちが私とロアに抱かれながら、そんな会話をしています。

 ・・・一方、私は驚いて声も出ないのですが。おくちがあんぐりとはこの事ですよ。


「そういえばグレン、さっきお湯を戻せるとか言ってたよな? それはどうやるんだ?」


 私と同じように、ロアもその点が気になっていたようだ。


「ぴゅーぴゅぴゅーぃ、ぴゅ!」


 え・・・? 流れてきたお湯は別の道を通って元の場所に・・・?

 グレンってば、そんな事もできるのね・・・これも魔法の一種なのかしら。

 何気に出来る子だったグレンさん。ロアに抱えられながらもお胸を張ってエッヘンとしてます。ちょっとフンスフンスと鼻息が荒い。そして鼻息が熱い・・・。


 何よりこの露天風呂の出来よ・・・! ゾフィさんの魔法がまた凄すぎる。

 正直ここまで本格的な露天風呂が出来上がるとは思っていなかった。それこそ、まるで日本にある露天風呂をそのまま持ってきたかのようで・・・雑誌にあった写真を参考にしたとしても、その完成度にはただただ驚いてしまう。

 ゾフィさんてば、天才かも・・・。


 そのゾフィさん作の露天風呂は、周囲がぐるりと一段浅い階段となっており、子供たちが使うのにも良さそうな感じだ。浴槽に入るのに足を入れたらいきなり深いとかちょっと怖いものね。あとお湯から上がる時も深いと大変だし。

 でもその浴槽全体もがそこまで深くはなく、広く・浅くといったかんじかな。ゆったりと寝転がることも出来そうだ。


 そしてその浴槽のサイズだけど、想像していたよりもだいぶ大きかった。我が家にある浴槽の何倍もあるのは間違いない。本当に4人くらいはゆったりと余裕で入れそう。


「あとはこの上に屋根を作ってもいいかもしれません。あ、でもそれだと星空が見えづらくなりますかね・・・?」


 ゾフィさんの言う、その「星空」うんぬんは、「夜空の下、熱燗をお風呂に浮かべて・・・」と話したアレの再現の事でしょうか? 

 ゾフィさんがまだまだやる気に満ち溢れていらっしゃるようですが、もうこれで十分すぎます・・・。



「そろそろお湯が満杯になりそうですね。リサ嬢、まだ日が高いうちではありますが、出来立てのロテンブロに入ってみられては? もちろん私たちは撤収しますから」


 それは是非! と言いたい所だけど、この露天風呂を造ってくれた功労者はゾフィさんだし、私が一番風呂というのはなんだか申し訳ない。

 ・・・あ、そうだ!


「でしたら、皆で足湯をしませんか?」


「・・・アシユ・・・?」


「はい。こう、座ってひざ下だけお湯に浸かるんです。これだったら靴を脱ぐだけで皆が一緒に入れますし、足だけでもけっこう体が温まるんですよ」


「ほう、そんな使い方が・・・。我々が一緒でもリサ嬢が気にされないのでしたら、皆で入ってみましょうか」



 私たちはそれぞれ露天風呂のふちに腰を掛ける。

 ズボンを穿いているゾフィさんとロアは靴を脱いで裾を捲りつつ、ミケネーさんやヴィーちゃんは脱ぐものが無いから、もうそのまま浴槽のふちにちょこんとお座りしている。

 グレンはなぜかお湯の上でパタパタと浮いているけど・・・座らずに足湯をするつもりなの?



 ちゃぽん・・・



「はぁ・・・確かにこれだけでも気持ちが良いですね」

「ほぉ~、ぬっくぬくですな」


 ゾフィさんとミケネーさんは気持ちよさそうに目を瞑っている。


「きもちいいにゃー」

「ぴゅー!」


 ヴィーちゃんとグレンは小さな足を伸ばしてお湯をぱちゃぱちゃと楽しんでいる。・・・かわいい。


「へぇ・・・足だけでもかなり温まるね。すごい、もう体がぽかぽかしてきたよ」


 ロアも足湯を気に入ってくれたようだ。

 はぁー・・・本当にいいお湯だなぁ。温度もちょうど良いし、このままずっと入っていられそう・・・。


「いつものお風呂とは違うけど、こういうお手軽な方法も良いよね。そういえば私の居た世界では、足湯に特化した施設もあったのよ」


 それこそサウナとかスーパー銭湯とか、お風呂関係はかなりバリエーションがあったっけ。日本人は本当にお風呂好きが多いんだなぁ。


「贅沢だろうけど、こういう施設が街にもあれば良いのに。冒険者とか歩いて足がくったくたになるから、アシユがあったら喜ばれそうだけど」


 ロアが言うように、そんな施設がベルナール国にもあったら・・・。いや、そもそもお湯を作るのは薪を大量に使ったりしてどうしてもお金がかかってしまうから、お商売にするのは難しいかな。


 でも、もしグレンがベルナール国でも同じようにお湯を引き寄せる事が出来たら、薪はいらない・・・? 温泉施設も作れちゃう・・・?

 あとでルーカス様にも足湯を試してもらって、そういった設備が出来ないものか聞いてみようかしら。



本日もお読みいただき有難うございます。

誤字や脱字・・・など諸々のご報告にも感謝です<(_ _)>

お手紙も嬉しいです。ありがとうございます!


早くも3月ですね・・・子供の頃は「時が過ぎるのが早い」なんて思った事はなかったのに、最近は日々感じます。このままスピードアップし続けたら、一体どうなることやら・・・(;´∀`)

あ、今日はひな祭りでしたね!(←遅い)


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