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110.人魚と火竜と猫妖精と

 

 その夜は、あーくんの事が気になってなかなか寝付けなかったけど、気を揉んでいても自分に出来る事はないし、あの毒消しポーションが役立つことを願って眠りについた。


 それでも夜中に時々目が覚めてしまい、隣で寝ているヴィーちゃんとロアがいるのに安心しながら、また眠りについた。明日はヴィーちゃんの肉球をもみもみさせてもらおう・・・なんて思いながら、ちょっとだけ隣のロアの肩に頭を寄せた。


 でもまさかそのすぐ翌日に、あの二人に会えるとは思っていなかった。




 翌朝、そろそろチビ竜も外に出たいかもしれないと海岸に連れて行くと、そこには笑顔のあーくんが、シェリーさんと一緒に待っていた。


「あーくん! 良かった、元気になったのね!」


 思わず波打ち際まで駆け寄ると、あーくんと両手でハイタッチをして、年甲斐もなくきゃっきゃとはしゃいでしまった。


「もうすっかり元気だよ。毒消しの薬をありがとう!すっげぇ効いたよ!あれがなきゃ、正直今回はまずかったと自分でも思う」


 そう言って、元気な姿を見せてくれたあーくん。「こことか色が変わって酷かったんだよ」と、その時の状況を話してくれた。

 私たちと別れて仲間を探したけど以前の場所には居なかったから、かなりの沖合いまで泳いでいた時にポイズンジェリーフィッシュの集団に囲まれて逃げ切れなかったのだという。


 でも一か八かで、人魚族の秘術【伝心】という魔法で助けを呼んだら仲間の元にその声が届き、その後すぐにシェリーさんや他の仲間が駆けつけてくれて、ポイズン・・・名前が長いからもう毒クラゲでいいや。その毒クラゲも屈強な仲間たちによって殲滅されたらしい。

 だけど解毒に必要なヨヨギ藻を探したけど見つからなくてシェリーさんが海岸まで探しに来て、そのシェリーさんも別の魔海獣に襲われ・・・と、それ以降の事は私達も知っているお話だった。



「本当に良かった。心配してたんだよ・・・! シェリーさんも、また会えて嬉しいです」

「こちらこそ、昨日はありがとうございました」


 あーくんは毒クラゲの触手にやられたそうで、かなり危ないところだったそう。毒クラゲの触手が体じゅうに巻きついて、まるで鞭で叩かれたような跡が残っていたそうだけど、毒消しポーションを飲んだら毒はおろか触手の痕もキレイに消えたそうだ。


 でも猛毒を持つ毒クラゲに刺されてもどうにか一命を取り留めていたのは、彼があるていどの毒の耐性を持つ人魚族だったからみたい。これが陸上に住む人族や亜人族だったらその場でイチコロだったそう。

 お、恐ろしいな・・・!

 海は毒を持つ生物が多いと聞くし、これを聞いちゃうと海に入るのをためらっちゃうよね。

 どうやらこちらの世界でもカニやタコも猛毒を持っている種類があるみたいだし、遭遇しないように気をつけたい。これはタコ焼きが食べたいとか言っていられないかも。

 やはり安全第一、いのち大事ですよ。



 二人との再会を喜んでいると、私の後ろからチビ竜がひょっこりと顔を出した。


「ぴゅいっ?」


「うっわ! 本当に火竜の子供がいる!!」


 驚き、後ろにのけぞるあーくん。シェリーさんも会うのは二度目だけど、固まっているようだ。

 これはチビ竜を離した方がいいかと捕まえようと手を伸ばしたが、チビ竜が二人に興味を持ったのか更に近づいてきてしまった。


「ぴゅーいー?」


 ちょっと首をかしげながらヨチヨチと歩くチビ竜・・・。さりげなく可愛さを前面に押し出しているが、もしやあざと可愛いさを生まれながらに備えているのか??と思うような仕草だった。


「う・・・ぐ・・・火竜をちょっと可愛いとか思った自分に正気か? と疑いたくなる・・・・」

「私もよ・・・可愛いと思っちゃったわ・・・!」


 そう言って、あーくんもシェリーさんもチビ竜から目が離せないでいた。



 チビ竜は私が抱っこしておこうと手を伸ばしたとたん、捕まるもんかー、とでも言うように「ぴゅーい!」とお空に飛んでいってしまった。うん、将来は間違いなくわんぱく坊主になりそう。


 もしや巣に帰るの? と一瞬思ったけど、私たちの頭上を楽しそうにぐるぐると旋回しているだけで、離れようとはしなかった。


「あー・・・これは巣に帰りそうもないね、チビ竜は」


 ロアのつぶやきに頷くしかなかった私でした。



「シェリーさんも、その後いかがですか? 傷のあった所は大丈夫ですか?」

「おかげ様でもうすっかり。傷も本当にあったのかしら?と疑いたくなるくらい、傷跡ひとつないんです」


 そういうシェリーさんは昨日より顔色が良いみたい。あーくんも毒で動けなかったなんて嘘みたいに元気そうで嬉しい。毒消しポーションが効いたようで何よりだ。


 しばらくあーくんたちと話していたら、チビ竜が構ってもらえないのを拗ねたようで「ぴゅいっぴゅいっ」とまた私の足元に降りてきた。


 そして「わがままは、だめにゃー」と、チビ竜はヴィーちゃんに窘められていた。見たところ、ヴィーちゃんはもう完全に意思疎通が出来ているようだ。

 そのヴィーちゃんにチビ竜は「ぴゅーい、ぴゅう・・・」と何やら訴えているけど、私には何を訴えているのかまでは分からなかった。ヴィーちゃんは「うん、わかるにゃ」と真剣にお返事をしている。可愛すぎた。

 あとで何を話していたのか聞いてみよう。



「そちらの猫獣人さん・・・かしら? 彼はこの火竜の子が何を言っているかわかるのかしら?」


 私と同じ疑問を持ったシェリーさんが、そう聞いてきた。

 あ、そういえば昨日はゆっくり自己紹介もする暇もなかったから、ヴィーちゃんが猫妖精とは知らないんだったね。

 ちなみにシェリーさんは我が家についても詳しくは知らないと思う。我が家に運び込まれたあの時、シェリーさんは気を失っていたし、気がついたら我が家の部屋の中だったという状態だったからね。


「えっと・・・この子はですね・・・」


 私から伝えてしまうのはどうだろうと言いあぐねていたら、ヴィーちゃん(本人)が進んで自己紹介をしてくれた。



 そしてヴィーちゃんが「あの、ぼくは猫妖精にゃんです」と自己紹介をした後に「人魚さん、にゃ、にゃかよくしてくださいにゃのー」なんて言うから・・・!噛み噛みのニャン語で言うから・・・っ!


 可愛すぎる――!!とその場で悶えたのは私だけでは無かった。


 シェリーさんはヴィーちゃんをその素敵なお胸に抱きしめて「かわいいー!」と、なかなか解放してくれなかった。そのお胸の中でヴィーちゃんから「むぎゅぅ」って声というか音がしたので、ちょっとだけ心配だった。


 それにしても、猫妖精さんが竜とお話ができるなんて驚いた。

 私もチビ竜の気持ちは少しだけ何となく分かるような気がしたけど、ヴィーちゃんは私よりも深く理解が出来ていて、会話もちゃんと成立しているようだった。


 しかも相手は竜の赤ちゃんだっていうのにね・・・。そもそも竜も人間と同様に赤ちゃん言葉ってあるのかしら。

 いつもチビ竜は「ぴゅー」とか「ぴゅいっ」とか言ってるけど、母火竜の話し言葉はそれだとイメージに合わないな。「ガオー」とか「グルル」とかの方が似合いそうだ。


 まぁ出来れば大きくなった火竜にはこれからも遭遇したくないので、その違いを知る事はないだろうけど。・・・いやいや、これフラグじゃないですよ?



 本日の総括。

 あらためてヴィーちゃんの可愛さは天使級で、しかも才能豊かという事が分かった一日でした。



昨日の大地震で大変な方もいらっしゃるかと思います。

一日も早く安心して過ごせるようになりますように。


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