1.もしかして異世界転移
はじめての投稿でどきどきです・・・!
よろしくおねがいします。
物心がついた時から両親がいなかった私は、田舎でお祖父ちゃんお祖母ちゃんに育てられた。
唯一の家族だった祖父母は、高齢だったこともあり仲良く続くように天に召されてしまい、兄弟も親戚もいなかった私は、気がつくと天涯孤独の身になっていた。
そして今日、一人で誕生日迎えた、絶賛ぼっち状態の立花里紗です。
おまけに数日前、私の唯一の友というか幼馴染が結婚した。
「妊娠が判ったので入籍してきたの!」そう幸せいっぱいの顔で報告されたのだけど、そのお相手は私が密かに大学時代から憧れていた先輩だった。
仕事が忙しくしばらく会っていなかった事もあり、お付き合いしてたことさえ聞いていなくてショックだったけど・・・正直お似合いの二人だ。素直に祝福をしたいな。
どうか元気な赤ちゃんを産んでね。二人の子供ならどちらに似ても絶対に可愛いから、今から楽しみだね。
自分にはもう家族がいないし、恋人だっていないけど・・・。
さらに言えばこれからも出来る気がしない。今までだってそんな人はいなかったし、自分が人付き合いが得意ではないのはじゅうぶん知っている。
よし、じゃあこれからは仕事を頑張ろう! ・・・と決意した矢先に、勤めていた会社が倒産してしまった。
これでも業界では中堅クラスの会社だったし、そこまで業績不振でもなかったのに何で!? と、ただ唖然としてしまった。
・・・本当に、これから私はどうすればいいのか。
私は祖父母がいたから大学も就職も地元に決めたし、今まで一人暮らしもした事がない。
海外旅行にも憧れはあったけど、高齢の二人が心配でチャンスはあっても行くことはなかった。だから私はこの田舎町しか知らなくて・・・いわゆる世間知らずなんだと自分でも思う。
幸いなことに長年真面目に働いてたから、しばらくは食べていけるだけの貯金はあるし、これを機に海外旅行に行くのも良いかもしれない。
・・・いや、どうせなら海外で暮してみるのもありじゃない? 語学力はいまいち、いや全く自信がないけれど。
「いっそ、どこか新天地で生活を再スタートするのもいいかなぁ。一度くらいはどこか別の場所で暮らしてみたいし・・・スローライフとかしちゃうのもいいよね」
誰もいない部屋でひとりごちた、その時だった。
突然ぐにゃりと目の前の空間が歪んだように見え、ブラックホールのような黒い渦のようなものが現れた。
その渦がだんだんと大きくなるにつれ、自分が、部屋が、家が、あれよあれよとその渦に引き寄せられるように吸い込まれ、ついには私の意識をも奪っていった。
「・・・・・あれ?」
お酒を飲んでそのまま寝落ちしたのか、気がつくと時計の針は、すでに夜中の2時を指していた。
やっぱり強くもないのにお酒に手を出したのがいけなかったかな・・・。
そういえば・・・さっき寝落ち前に何かを見たような気がする。
・・・・・・そうだ、黒い渦!
あの黒い渦は何だったの? まるでブラックホールにでも吸い込まれるような不思議な感覚があったけど・・・あれは夢・・・よね?
「あはは、てっきり異世界に召喚でもされたのかと思っちゃった・・・でも現実にはそんな事ありえないよね」
好きだったファンタジー漫画や小説を思い出し、一瞬でも「もしかしたら?」なんて考えてしまった自分に苦笑いする。きっと飲み慣れないお酒で酔っ払ったのだろう。
気分転換に外の空気を吸おうと、窓のカーテンを開けると・・・
・・・はい。そこは深い深い森の中でした。
もしかして私はまだ酔っぱらってるのかな。
・・・うん、そうに違いない。それか、まだ夢の中かのどちらかだろう。これがあの明晰夢というものかもしれない。
だけど外は真っ暗で月も見えないし、街灯の明かりさえも見えない。うちは確かに田舎だけど、地方都市にもそこそこ近い。畑が多いけど住宅だって周囲に点在していたはず。
でも目の前は、どう見てもうっそうとした樹木ばかり。なぜか道路だってどこにも見当たらない。我が家は間違ってもこんな森の中ではなかった。
呆然としていたその時、突然目の前がまぶしく光った。そのあまりの眩しさに目を開けていられなかったが、私の頭の中で誰か・・・女性の声が響いた。
『我が世界へようこそ』
はい・・・? 我が、世界・・・?
「あの、あなたは誰ですか? 我が世界って・・・」
いやまさかね、とは思ったけど。ここは確認せねばなるまい。
私はまだ夢の中なのだろうか。
『私はこの世界の創生の女神、フローデリアです』
女神様って・・・えぇ?! 本当に!?
・・・待って。落ち着こう。
日本には神様がそれこそ沢山いらっしゃるというから、その中のおひとりかもしれない。
ちょっと西洋風のお名前に聞こえたけど、それだって日本の神様でないとしたらありえる。世界は広いのだ。
「フローデリア様は、地球の神様でしょうか?」
・・・おそるおそると聞いてみる。
そうですよね?
『私は地球の神ではありません。ここはすでに地球とは異なる世界なのですよ。あなたは地球からこの世界に呼ばれた、招かれ人なのですから』
異なる世界って・・・あの異世界ですか?!? 夢じゃなく?!
でも・・・待って。なんで私が??
あ、もしかして・・・!
「私、まさかあの時に死んでしまったんですか!?」
まずい。思っていたよりも早くあの世で祖父母に再会してしまって「早すぎるわ!」とか叱られそうだ・・・。
『いいえ、亡くなった訳ではありません。あなたは元の世界からここまで生きて界を渡ってきた稀有な存在なのです』
カイ・・・? 界を渡るってこと・・・? ? ?
『異なる世界に家ごと引越してきた、と言えば分かり易いでしょうか』
「まさかの引っ越しですか!?」
その後しばらく女神様のお話を聞いて、自分なりに多少は理解が出来たと思う。
要約すると、こんな感じ。
ここは剣と魔法のある世界で、いわゆる王道ファンタジーな世界。
だけど今、この世界の人類は危機的状況を迎えつつあるらしい。なんでも遠くない未来で滅亡するルートに入りつつあるとか。
その大きな原因の一つが魔獣という存在で、ここ数百年の間に魔獣が異常に増え、生命のバランスがおかしくなってしまったそうで・・・。
ここでは文明が生まれては消えるという歴史を何度も繰り返しており、今回もまたその兆しがあるそうだ。
この世界を創った女神様としては、度々の人類滅亡に心を痛めている。だけど女神様が直接手を出す事はいわゆるタブーらしく、そう簡単には手を出せないのだそうで・・・。
やはりこれは人の手で成さねばならないと別の世界から人類を迎える事にしたそうだ。
実はこの方法、昔から地球でもあった方法なのだとか。
過去に偉人とか呼ばれている人達の、そのうちの何人かは異世界人なんだそう。私でも知っているあの歴史上の人物とか・・・彼らが異世界人だったとは驚きしかない。
でも以前この世界でも違う文明を取り入れるため、数百年前にもどこかの異世界から人を招いた事があったそう。ほんの少しの力が意外に大きな結果を生む・・・いわばバタフライエフェクトを期待してのことだったみたいだけど、どうやらその時は時期が悪く、上手くいかなかったようだ。
・・・で、今度こそは、と女神様の肝いりの第二弾が、この私らしい。
それにしても不思議なのは、今回そんな大役を担うのがなぜ私だったのか。
正直、自分はこれといった才能も無い普通の人間で・・・。もっと色々と役立てる、能力が高い人間の方が良かったのではないだろうか。これはあきらかに人選ミスなのでは・・・?
女神様に聞いては見たものの、あいにくその疑問に対する答えはもらえなかった。
・・・というか、聞いてみてもよく分からなかった、というのが正しい。残念な私の理解力よ・・・。
世界の理がどうのこうの、という話だったのでもう理解不能だった。これは神様の間でも何かしらのお約束事や縛りがある、という事で合ってますか?
とにかく別世界の者に界を渡らせるためには様々な条件やタイミングが揃わないとダメで、簡単に出来る事ではないという事だけは理解した・・・つもり。
で、結論として・・・私は一体ここで何をすれば良いのか。
女神様いわく、私はこの世界での使命とかいうのはこれといって無いらしい。ただ普通に暮らしていれば良いという至ってシンプルな事だった。
確かに「世界を救って!」とか言われても困っちゃうよね。それに応える自信はまったくないです。
でも住むだけで良いのなら、とても気が楽になる。
・・・そうだ、ここは最低限の確認をしておかなくては。
「あの・・・この世界で暮らすにあたり、とても大事な事なのですが・・・こちらで言葉は通じますか?」
『あなたの身体はこの世界に合うように、少しだけ変化をさせてあります。言葉などの問題も無いはずですよ』
それは助かる!! 言葉が分かる、通じる事はものすごく重要なことだもの。
この年になってイチから言語の取得は厳しいからね。覚えられる気がしない・・・。読み書きができるのはとても有難いな。
でも何より驚いたのは、ここ我が家はいまだに地球と空間が繋がっているのか、水道の蛇口をひねれば水が出るし、電子レンジだって使えるそうなのだ。
しかも冷蔵庫や棚にある食材などは使っても使っても時間が経てば復活すると言う。
どういう仕組みかさっぱりだけど、素晴らし過ぎる!!
さらに家の周囲には地球の結界があるので、この世界の魔獣や敵意を持つ者は入る事が出来ず、がっつりと阻まれるらしい。すごい!!
他にも招かれ人の特権があって、女神様の【知識】の一部が標準装備されており、この世界のことは一通り調べられるそうだ。
それこそ、一般常識から魔法の使い方まで、とか。
ありがとうございます!
もうこれは万歳したくなるほどのチートです!!
お読みくださり、ありがとうございます。
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