ハーレムヒロインの末路
恋に恋する乙女は盲目的に周りが見えなくなる。その関係がいかに歪であっても、気付くことはない。
実際私がそうだった。幼馴染からの忠告も、姉からのアドバイスも耳に入らなかった。
私は過去に、一人の男性が複数の女性と関係を持つ環境――所謂ハーレムに身を置いていた。
「優奈、蓮司くんと付き合うのは止めた方がいいよ」
後悔している。幼馴染の彼――雅司の話しを聞いておけばよかったと。
今になって分かる。私のことを本当に想ってくれていたのは蓮司くんではなく雅司だったのだと。
「雅司には関係ないでしょ! 私は蓮司くんに愛してもらえるならそれでいいの!」
馬鹿……。
もし、時間を遡れるのなら、この時の私を殴ってやりたい。
「本当に蓮司くんのことが好きなら、私以外の女の子とは別れてって言うべきじゃない?」
「うるさい!」
姉の至極真っ当な意見。それすらも煩わしいと私は思っていた。
私は理解していなかった。自分自身の本当の気持ちを。
好きではなかったのだ。蓮司くんのことなんて。私が好きだったのは、蓮司くんを健気に愛している――と思い込んでいる――私自身。
どうしようもなく自分に酔っていた。それが幸せであると錯覚していた。
「今日は皆でしようぜ」
彼は自分の前に並ぶ無数の裸体を見て、何を感じていたのだろうか。
きっとそこには私への愛情なんか欠片もなくて、ただ欲望が満たされることに満足感を覚えていたに違いない。
「蓮司くん……あのね……」
何も考えず行為に及んでいたある日、ハーレムメンバーの1人が妊娠していることがわかった。
蓮司くん及び、蓮司くんと関係を持っていた女子達は学校に呼び出され、ハーレムのことを洗いざらい話す羽目になった。
そして私も妊娠しているかどうか、検査を受けることになった。
案の定――私のお腹にも赤ちゃんがいた。
それから蓮司くんとは連絡が取れなくなった。彼は転校してしまい、居場所も分からなくなった。
同時に2人の妊娠、学生の蓮司くんには手に負えず、逃げ出したのだ。
子供を堕ろす他なかった。全く罪のない自分の子供の命を奪ってしまうことに、私は泣き叫んだ。
中絶後、私は学校に行けなくなった。部屋に籠る毎日が続き、結局高校も辞めてしまった。
数年が経ち、私の体はブヨブヨだ。昔着ていた服には、文字通り腕が通らない。
両親は私に呆れている。姉は働いて結婚もしているのに、私はずっと無職。アルバイトもしていない。
そんな感じだから今の私は家族とさえほとんど会話がない。唯一話しかけてくれるのは、幼い姪っ子くらい。
姪っ子――雅司と私の姉の子供――はませていて、恋愛話が好きだ。
彼女は教えてくれた。
雅司は私のことが好きだったらしい。でも、私が蓮司くんを好きだったので諦めた。
もしあの時、蓮司くんではなく雅司と付き合っていたらどうなっていたのだろうか。ここ最近そればかりを考えている
姉と雅司、幸せそうな2人を見ていると、嫉妬で気が狂いそうになる。
蓮司くんと付き合わなければ、私にも姉のような人生が送れていた可能性があったのだ。
もう何もかもが遅い。
愛してくれていたはずの蓮司くんには捨てられ、自分の子供を失ってしまった。
この先どうなるか分からない。ただ、決して明るいものではないだろう。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
本作に登場する蓮司視点でのお話を投稿いたしました。
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