【フリー台本】クールで美人で優等生な完璧生徒会長を支えたい
//SE教室のドアが開く音
……誰かな? すまないが、ちょっといま手が離せなくて……なんだ後輩くんか。
なにかあったかな、今日の生徒会活動は終わっただろう。わざわざ二年生の私のクラスまで来て、どうしたんだい?
こんな時間まで一人で何をしているのかって?
あぁ、文化祭で私のクラスが行う企画関連で、ちょっとね。
執事やらメイドやらの格好でカフェをするんだが、その取りまとめを任されたんだ。
衣装の準備なんかはクラスメートがやってくれるんだが、その他の事務処理は私がやるしかなくてね。
//意外そうに
え、手伝ってくれるのかい?
そんな、クラスも学年も違う後輩くんに、手伝わせるわけにはいかないよ。
一体なんだって急にそんなこと――
私を心配してくれてるのかい?
ふむ、それはとてもありがたい。
ただ、大丈夫だよ。こう見えて私は結構タフでね。それに、このぐらいの仕事量こなせないと、生徒会長の名が泣くよ。
生徒会長以前に、先輩は普通の女子でしょう、か。
//茶化すように
きみ、実は女を口説くタイプか?
あはは、そんなに必死で弁解するな。
しかし、後輩くんにそんなに心配されているとは思わなかったな。
なになに? 私が何もせずに休んでいるところをしばらく見ていない?
……うーん、痛いところを突かれたな。
はぁ……正直、少し参っているのは事実だ。
後輩くんも感じていると思うけど、二学期の始まりというのは生徒会も忙しくてね。
通常の生徒会業務に加えて、部活動の下期部費申請やら、委員会の代替わりに関連する登録やら、色々やることが多い。
そのうえで、この模擬店企画だ。
人員振り分けに商流の確認、価格設定に諸会計業務と、やることはこっちも盛り沢山。
……毎日、目が回るほど忙しい。
ふふふ、だが、そんなに疲れているように見えたかな? あまりそういうのは表に出づらい人間だと自負していたんだけど――
……疲れているというより、追い込まれているように、見える?
そう、か……。
//呟くように
いや、驚いた。きみ、意外と鋭いんだね。
//10秒ほどの間(言うか言うまいか逡巡する)
//声のトーンを一段低く(取り繕っていない素の独白)
……ここからは、独り言なんだけど。
人にはそれぞれキャパがあると思うんだ。
できることとできないこと。得意なことと苦手なこと。
数をこなすのが得意な人もいれば、一つのことを高いクオリティで成し遂げる人もいる。
私は多分、普通よりそのキャパが大きい。
自分で言うのはなんだが、勉強も運動も、芸術も人付き合いも優れている自信がある。
人より多くのことを、人より上手にこなすことができる。
でも――
みんなからたくさんのことを求められて、それらをすべてミスなく達成するっていうのはね……。
確かに私にはそれを可能にする能力がある。
油断せず、気を抜かず、隙を見せず、完璧であり続ける。
それは可能だけれど……私にとっても、簡単なことではないんだよ。
でも、難しいことだとしても――
求められる限り、物理的に可能な限り、私は完璧でいなければならない。
//声のトーンが明るくなる
なんてね。ちょっと弱音を吐いてみた。
とはいえ、そこまで心配されるとは、私もまだまだ未熟だね。もっと精進しなければ。
……え? 未熟とか完璧とか関係なく、それだけ大量にやることがある状況がそもそも異常?
//絶句している
…………。
//腹を抱えて大笑いしているようなイメージで。
ふふっ、あははははっ!
そっか、そうだね。
私だろうと他の誰かだろうと関係なく、そもそもおかしいことだよね。
私に力があっても、完璧だったとしても、そうでなくてはいけない状況は間違っている。
//自分で自分の言葉を噛み締めるように。
そっか……そっか、うん。後輩くんの言う通りだ。
(沈黙)
あの、さ。
さっき、きみは私のことを普通の女子だと言った。
その気持ちは変わらない?
――変わらないか。
うん、対等に、平等に接してくれているようで、とても嬉しいよ。
実際私は、なんてことない高校生の小娘だしね。
ただ、それとは別のちょっとした欲が出てきてしまった。
……聞いてくれるかい?
//耳元で囁くように
きみの『特別』になりたい。
ふふふ、顔真っ赤だ。……かわいいね。
どういう意味かって?
駄目だ、いまはこれ以上教えてあげない。
それは自分で考えるんだ。
さて、文化祭のシフト作り、もう一息やるかな。
一人じゃ今日中に終わらないから、二人でやりたい。
後輩くんも手伝ってくれるんだよね?
……ありがとう。
頼りにしてるよ。
これからも、頼りになってね。