これ、信仰集まりますか?〜転生女神の天然エロトラップフォレスト〜
「な、なんだこの触手は!? か、彼女を離せっ!!」
「あっ♡♡やらぁ♡♡見ないでぇ♡♡」
「待ってろ、今助けてや――――アッー♡♡」
……どうしてこんな事になってしまったんでしょう。
ふよふよと中空に漂いながら、身悶えする老若男女を見下ろしました。こっちでは旅の途中のお二人さん、あっちでは山に芝刈に来たお爺さん、そのまた向こうでは迷子の迷子の子猫ちゃん。
それぞれをお相手するのは粘液たっぷりの触手、催淫作用のある茸の胞子、幻覚を見せる毒の沼、エトセトラ。
うん、くんずほぐれつ、実に生命力溢れた光景です。あらゆる体液が迸っています。
この森の起きている全ての事象を、私は把握する事が出来ました。
何故なら、この森の神なので。
……これから起きる、起き得る事象まではわからない辺りが駄目なのです。馬鹿なのです。阿呆なんです。ポンコツなのです。
私とてこんな、こんな――こんな森のそこかしこで毎日毎日アンアン♡らめぇ♡♡とエッチなハプニングがおっぱじまる事なんか想定しておりませんでしたとも!! 本当です、神に誓って!!
どうして、こんな事になってしまったんでしょう……。
私は元々、この森の神ではありませんでした。小さな祠に祀られている、始まりも思い出せないような、力の弱い神でした。
熱心にお世話をして下さるご近所のお婆ちゃんのおかげで、細々と生き長らえておりましたが、つい先日、お婆ちゃんが天寿を全うしたのです。お婆ちゃん、長い間ありがとう。大往生でしたね。
唯一の信者と信仰を失った私は、消滅するはずでした。
しかし、気が付けば私は光の渦の只中にいて、偉大なる存在から祝詞を賜ったのです。
「この世界なんだけどさ、ちょっと神様足りてないからやってくんない?」と。
こうして私は、異なる世界に森の神として転生したのでした。
始めにびっくりしたのは、行動範囲の広さです。担当する森の中ならば、どこにでもすぐ、念じただけで移動が出来ます。秒で。祠から1cmも動けなかった頃とは大違いです。広々!! 広大!! 大自然!!
それから森の動植物は、私と意思疎通が可能です。唯一の信者だったお婆ちゃんと会話すら不可能だった私にとって、何より嬉しい事でした。お喋り!! 日常会話!! ガールズトーク!!
ええ、はしゃぎましたとも。
守護りたい、この生活。
そうと決まればやる事は決まってます、現状維持ではいけません。神と言えど、万能ではないのです。前の私がそうであったように、信仰なき神、忘却されし神は力を失い、消滅します。私がそう思っている限り、そうなのです。神たる私がそうだと認識している、理由はそれだけで十分過ぎるものでした。
レッツ信者集め!
まずは環境を整えて、人々に有用な動植物を創造・配置、鳥や虫たちに頼んで種子などを運んでもらい、存在をアピール。しかし無闇に森が荒らされるのはよろしくないので、適度な畏怖・脅威の要素は必要不可欠、命からがら逃げおおせるレベルを各種準備。迷い込んだ旅人には動物たちを使って道案内、時には直接神託で手助けを。
毎日せっせと働いた結果が、
「んあぁっ♡♡あっ♡あっ♡」
「あーーーーーっ♡♡♡」
これです。
さっきの様子からするに、男女の番でしょうか? なかなか目見麗しいお二人さんは、今、触手責めにあっています。身動ぎする事も出来ず、互いの痴態から目をそらす事も出来ず、顔を真っ赤にして喘いでいました。
にゅるる、にゅるる、と絶え間なく蠢く触手はきれいな黄緑をしていて、人の子の四肢をがっちり固定しています。先端からさらに細い触手を何百本と出し、またそこから分泌する粘液を、体の隅々まで行き渡らせていました。
実はあれ、触診と治療です。
やはり神秘的な森と言えば、どんな怪我や病気も治癒する植物の一つや二つ、あった方がいいと思ったんですよ。一生懸命考えて、創った結果が触手でした。
私としましては、白っぽい小ぶりの一輪の花の蜜がなんかこういい感じに怪我とかに効くといいな〜〜〜、と念じながら創ったのに、全くの別物になってしまいました。
どうしてだかイメージ通りに創れないのです。異なる世界にやって来たせいでしょうか。期待する効能や性質が大きく外れていないのは、不幸中の幸いでした。
もしかしてこの世界ではこれが普通なのかしら、小ぶりの一輪どころか巨大な花を中心に周囲を埋め尽くすほど拡がる触手isスタンダードなのかしらと。
そう思い、他の山村に詳しい栗鼠や土竜に聞いてみたところ、「完全に魔物」「夢に見る」「出会い頭で神に祈りを捧げるレベル」との事でした。
……うん、神に祈りを捧げるのは良いですね。
私にとっては自身の力で創造し、この世に生んだ可愛い我が子です。鮮やかな黄緑の触手とピンクのお花のコントラストが美しいですし、弱っている動植物を匂いでおびき寄せて治療する、とっても素敵で良い子なのですが、人の子には少しばかり刺激が強いようなのです。
ですので、まず逃げようとする足に絡み付いて拘束、暴れてさらに怪我をしないように手も拘束。恐怖が薄れるよう快感を与えながら細い触手で全身をくまなくチェック。その際に怪我を発見すれば粘液で治療、という流れです。
なまじ屈強な人の子ですと抵抗されて衣服が破れてしまうのですが、不可抗力というやつです。
怪我でなければ病気という事になるので、触診は内部にも及びます。全身チェックの際にだいたいどこが悪いか検討がつくらしいので、うちの子は優秀ですね。どうやら雄の人の子、お腹の調子が悪いみたいですね。人の子の構造上たくさん侵入口はありますが、患部に近いところから入るそうで、今回はお尻から入るみたいです。
「お゛ッ!? あ゛ぁ゛ッ♡やめ゛ッああああああ♡♡♡♡」
「……うわ……すっご……」
雌の人の子が呆気に取られています。ビクンビクンと仰け反る番の様子から目が離せないようです。彼女は足を怪我していましたが、すっかり治ってますね。気付いてないみたいですが……。
粘液はどんな怪我や病気にも効くんですけど、どうも伴う快感が桁違いのようでして、治療が終わる頃には誰しも気を失ってしまうんですよね。
ぐったりしつつもすっかり健康になった人の子を、こっそり森の外に運ぶのは私のお役目です。たまに触手も手伝ってくれるんですよ、良い子ですねぇ。
「う……ここは……?」
「わたし達、助かったの……?」
「!?!? お、お前、足が……足が生えて……!? ぐすっ、よかった、よかったなぁ……!! おお、神よ……!!」
「つまりアレは夢じゃなかったってこと?」
「へ」
「――――お尻出して♡」
今日も今日とて善行を積みましたが、これ、信仰集まりますか?
良かれと思って創ったのに、なんか、全部こんな感じなんですよ。
軌道修正したいところなんですが、森から喘ぎ声が途絶えません……。
という夢を見たので記念に書きました。続きはあまり期待しないでください(・8・)