不可視の脅威
光里達が戦闘をしている最中、アザゼルは東京のトップ達と一緒にグリゴリ隊と創造者の戦闘を見ていた。
「さすが、我が子達! 大活躍だねぇ。そうは思いませんか皆さん」
「あれが天使と悪魔の力を持つ存在、天魔ですか。その力は確かのようですが・・・・」
そう言葉を濁らすのは第七防衛都市東京大統領、本田頼則。この東京の大統領にいる政治家だ。
「アザゼル、天魔を作れるのなら、奴らに対抗できる兵器を作れたのではないのか?」
不満を漏らすのは人類軍東京総括、芳野才。東京の人類軍トップであり、一応アザゼル、グリゴリ隊の上官にあたる。
「聞くに天魔を育成するのは時間がかかるそうじゃないか。それに皆、何かしらの問題を抱えているようだし。そんな問題児どもが、今後我らの命令を聞くのかね」
芳野はアザゼルに問いただすように聞く。
それに対しアザゼルは笑顔で答えた。
「いやいや、芳野総括の命令を聞くわけないじゃないですか。あの子らは僕の命令した聞きませんよ」
芳野は机をたたき、声を荒げる。
「ふざけているのか! いつ裏切るかわからない人外をのさばらせておくつもりか!」
「おやおや、人外なんてひどいなぁ。僕のことを言うのならわかるけど、あの子達はまだ人間だよ。こんな時に人種差別なんてナンセンスだよぉ」
「あれのどこが人間なんだ。化け物以外のなんでもないだろう!」
芳野はさらにヒートアップしてアザゼルに迫る。その瞳には天魔達への恐怖心があることをアザゼルは見逃さなかった。
アザゼルはさらに芳野を煽ろうとする前に、本田は芳野をなだめながら口を開いた。
「アザゼルさん、あなたの人智を超えたテクノロジーによって今の私達があります。あなたがいなければ私達人類はとうに滅びていたでしょう。しかし、年端もいかない子供には少々すぎた力ではないでしょうか。それにあのような光景を見た者が、彼女らを人間と言い張るのは難しい。私としてはグリゴリ隊に期待をしていますが、人か否かで彼女らが傷つき、腹いせに都市内で破壊活動を行った場合私達では止めることができません。ゆえにグリゴリ隊の扱いには慎重に検討しなければならないのです。どうかご理解ください」
アザゼルはため息をつき
「さすが政治家、お世辞がお上手なことで。でもね、防衛都市とて絶対ってわけじゃないんだよ。いつかは突破される。その前に創生者を殲滅するのが天魔の役目なんだよ」
「ふん、なら奴らを倒せる兵器を量産し軍に配備すればよいではないか。そうすれば人類は戦える」
芳野は椅子にもたれかかりながら、アザゼルに兵器の作成を要求してくる。
それに対しアザゼルはクスクスと笑いながら
「それでもいいけど、圧倒的に兵士の数が足りないんだよねぇ。都市の住民全員兵士なら話は別だけど、今の軍の規模じゃ、あっという間に壊滅して終わり。兵器は強力でも、君達人間は貧弱なんだからね」
「それに・・・」とアザゼルは言葉を続ける。
「創造者を倒せるほどの兵器を人間が扱えるわけないでしょ。七十口径の銃を撃てるほどの兵士がいるのなら紹介してよ。専用の兵器を作ってあげる」
そのまま立ち上げり退室しようとするアザゼルを芳野が止めようとする。
「おい、アザゼルどこへ行く。まだ、これからのグリゴリ隊の処遇を決まってないぞ」
アザゼル扉の前で止まり、大統領と総督を横目で見ながら
「あなた達は必ず我が子達を必要としますよ。それとあまり時間がないことを心した方がいい。これからが本当の戦争の始まりなんだからね」
アザゼルはそう言い残し部屋から去っていった。