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天使と悪魔は戦場で笑う  作者: 夜城
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虐殺の笑い声

 創造者達がスラムへ襲撃をかける理由は二つある。

 一つは人類殲滅のため。これは当初の目的である。

 二つ目はただの娯楽である。

 アザゼルの防衛都市によって、人類殲滅が著しく滞った創造者達は長期戦を強いられることになった。防衛都市攻略は容易ではなく、創造者達はいら立ちを覚えていた。そんな中、都市に入れなかった人間を弄ぶように殺すことで気晴らしをしているのだ。

 そのため、あえて全滅はさせず逃げまどう姿を見て楽しんでいる。

 そんなスラムは。今まさに創造者の血と悲鳴のテーマパークと化している。


「ひでぇ・・・ひでぇぜ! 苦しませて殺すなんて外道どもが!」


 翔は人々の死に涙し同時に創造者達への怒りがこみ上げる。


「数は大体二十ぐらいか。一人五体ぽっちか。ずいぶん少ないね」


「今の人類にとっては一体でも脅威ですわ。皆さんフォーメンションを組むますわよ。光里は空の天使の殲滅。アニイと翔は地上の悪魔をお願いします。私は援護射撃と索敵をします。数は少ないですので、相手が虚を突かれてる隙に殲滅します」


「恵美・・・もう少し早く指示した方がいいぜ。アニイが飯を食い始めちまったよ」


 翔の指摘で恵美はアニイがいないことに気付く。いなくなったアニイ派と言うと


「おめぇら知ってるか? 人間の内蔵は生で食うのが一番うめぇんだぜ。特に絶望しきった奴は特段にうめぇだ」


「ははは、人間喰うとか偏食すぎだろ。喰うんだったら、生け捕りにした奴らの目の前で喰ってやれよ。きっといい顔するぜ」


「それは初耳。なら悪魔もそうしたらおいしいの?」


「はぁ、何言ってるんだ? 誰が悪魔をく・・・」


 グチャ・・・バリボキボキ。

 楽しいそうに話していた悪魔の上半身が肉と骨をすり潰す音と元に亡くなった。ボトっと下半身だけとなった悪魔が倒れ、その後ろにアニイが満面の笑みで立っていた。


「うん、おいしい。絶望すればもっとおいしくなる?」


 悪魔達はそのありえない状況に思考が追いつかず、ただただアニイを見つめる。そしてすぐに激情しアニイに襲い掛かる。


「てめぇ、何をしたああああああ」


カサカサカサ・・・・ガブリ。


「うるさいよ、ごはんが鳴くな。アニイはごはんは静かに食べる主義なの」


 襲い掛かった悪魔達の体に、黒いムカデが巻き付き動きを封じる。アニイは下半身だけになった悪魔を拾うと影を体にまとわせ悪魔達に言う。


「人間の前で人間を食べると絶望する。なら、悪魔の前で悪魔を食べると君達は絶望するの?」


 異形の姿に変えたアニイは食事を始める。何の力も持たず一方的に殺られるだけの人間が自分達を捕え、あまつさえ食べている。悪魔達が恐怖するには十分だった。



 スラムは絶叫と笑い声に包まれていた。ただ、いつもと違うのは創造者が絶叫し人間が笑っていることだ。


「おらおらおら、イテぇか、イテぇよな悪魔ども!でもよ、テメェら弄ばれて殺された奴はもっといてぇ思いしてんだよ」


 アニイの暴走により、作戦も連携も意味を無くしたことを察し翔と光里も突撃していった。

 翔が激情を表にしスラムを疾走する。その姿は獣、現に犬のような耳と尻尾、鋭い牙と爪が生えている。


「なんだアイツは! 人間なのか」


「あぁん、人間に決まってるだろが! テメエらを殺す人間様だよ」


 人間離れした身体能力、弾丸をも通さない悪魔の皮膚をやすやすと斬り裂き、瞬時に傷を癒す回復力を上回る速度の打撃。他の人間が見ても彼が人間かと言われると首を横に振るだろう。

 しかし、悪魔達が一番驚愕しているのは、知るはずもない悪魔の弱点、存在のコアを的確に破壊していることだ。偶然破壊したのではない、的確にコアを狙って攻撃している。


「なぜ、コアのことを知っている! お前達は我々のことは知らないはずだ!」


「防衛都市に人類を入れたのは誰たと思ってるんだよ、ボケが」


 悪魔達の顔は一瞬にして怒りに染まり怒声を発する。


「アザゼルか、あの裏切り者がああああ」


「もうテメエらのターンは終わったんだよ。これからは俺達のターンだ」


 徹底的にかつスピーディーに、翔は悪魔達を殲滅し勝利の雄たけびをあげる。



「光里、地上の悪魔は殲滅終了よ。こちらも早々に終わらしますよ」


「そんなに焦らずゆっくり思い知らせようよ。こいつらが誰に歯向かったかをさぁ」


 虹色の翼を生やした光里は閃光を放ち、天使達の手足を捥ぐ。

 そして体勢を崩した天使を恵美の射撃でコアを破壊していく。


「この後に救助活動が控えているのです。不用意に長引かせるわけにはいきませんわ。それに奪うなら、一気に奪うのが私の主義ですわ」


 恵美は黒い翼を生やし上昇する。そして、大漁の銃器を作り出し一斉掃射を行う。人類の兵器では天使の障壁に阻まれ傷をつけることはできないが、恵美の攻撃は火力が違う。銃身が壊れるほどのエネルギーで打ち出されるダイヤモンドよりも硬い弾丸は、障壁が破壊し天使をコアを貫く。

 そんな弾丸が雨のように降り注ぐのだ。天使達はたまったもんじゃない。


「独り占めはずるいぞ、恵美。わたしだってやるんだもんね」


 光里は両手に光を集束させ剣を生み出す。その剣を構え、弾丸の雨を回避した天使に突撃していく。

「ひと~つ、ふた~つ、みっつ!」


 すれ違いざまに天使を両断し瞬く間に殲滅していく。


「はい、君が最後!」


 最後の一体の胸に光の剣を突き刺し、光里は笑う。


「ぐふ・・・人間の体に天使の力・・・アザゼルの仕業か」


「はぁぁぁ、天使の力なんかじゃないし、これは私の力だ! よ~く覚えておきなよ、人間は強い。そして私は誰よりも強い。自分達が人間より上位だと勘違いしている羽虫に人類は負けない」


「い・・・異端児どもめ・・・」


 天使はその言葉を最後に消滅していった。


「敵勢力完全消滅、皆さんお疲れ様です。戦闘は終了です。これより負傷者の救助に移ります。能力を制限して住民を怖がらせないでくださいね」


「恵美、私も手伝うよ」


 アザゼル直属の部隊グリゴリの初陣は創造者達の油断があったとはゆえ快勝と言う形で幕を閉じた。

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