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天使と悪魔は戦場で笑う  作者: 夜城
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天魔出撃

 光里達がブリーフィングルームに入ると、そこには壁際に押しのけられた机と椅子。床に広げられたマットに投げ捨てられたお菓子のゴミやペットボトル、その中心に幼い少女が寝転がりながらポテチを貪っていた。


「至福~~。毎日寝転がりならが食べるポテチとコーラは最高~~」


「アニイ、何をしているのですか」


「ごはん」


「あなたは一日何食、食べるのですか!少しは飢えに苦しむ人々に分け与えようとは思わないのですか!」


「無駄金使って無駄な行為をしている恵美には言われたくない。アニイはお金使わない」


「無駄金ではありません。必要としている人に与えているのです」


 アニイはバカを見るかのようにため息つきながら


「それが無駄な行為。都市内じゃお金がなくても負重なく生きていける。お金は労働における達成感を与えるだけの報酬。ただのお飾り」


「紙幣文化の不必要性には同意しますが、必要とされるなら与えるのが軍人としての使命です」


「さっきとおんなじこと言っている。恵美はやっぱりバカ」


「お菓子全て没収しますわよ、クソガキ」


「やれるものならやってみろ、バカ無駄女」


 二人の間に異様な緊張が走る。それは歳不相応な殺気だ。だか、それも一声で霧散する。


「はいはい、そこまで。アニイちゃんは育ち盛りだし、そういう体質なんだからしょうがないよ」


「ところでアニイちゃん、翔はまだ来てないの?」


「来てないけど、なんで」


「アザゼルがここに集合かけたんだけど、聞いてない?」


「アニイずっとここにいたから聞いてない」


「どうせ、戌井のことですからケンカでもしてるのでしょ。まったく野蛮ですわ」


「野蛮で悪かったな。ほれアニイ、街でドーナッツ買ってきたぞ。食うか」


「食べる!翔は恵美と違ってごはんくれるから好き」


「うんうん、全員それってるね。さすが我が子達だ」


 気配もなく突如現れた中年ぐらいの男、アザゼルが上機嫌で現れた。


「さぁ、今日は素晴らしい一日になるぞ。なんて言ったって、ついに愛しき我が子達の初陣なんだからね」


「相変わらずキモ。その我が子とかドン引きするほどキモイから、やめてよアザゼル」


「光里の言う通りですわ。仮にも軍の特別顧問なのですから、威厳ある態度を取ってもらいたいです」


「それよりも今、初陣っていったか。やっと俺の出番ってことだよなぁ。アザゼル!」


「アザゼル、ピザ食べたい」


「うぅ~子供たちが冷たい。これが反抗期ってやつなのか」


 アザゼルはハンカチで流れてもいない涙を拭く。そのしぐさに光里はなおのことと嫌悪感を抱くのであった。


「アザゼル、本題に入りましょう。先ほど初陣と言いましたが、ついに私達が出撃するという意味でとらえていいのですね」


「イエーーース! 軍上層部と政治家がやっと出撃の許可をくれたんだよ」


「フン、上はチキンすぎるんだよ。俺達が唯一創造者達を倒せるって言うのによぉ」


「仕方ないこと。都市にいれば安全なんだから、無駄に創造者を刺激するのは得策じゃない」


 そう、都市内に入れば安全なのだ。現に三十年間一度も都市に創造者の侵入を許したことはない。ゆえに軍こそあれど、人類に戦う意思はすでに無くなっている。ここにいる五人を除いては。


「お偉いさんのことなんてどうでもいいじゃん。重要なのは私達が戦果を上げ、私が最強だって創造者達に知らしめることだよ」


「光里の言う通り。光里が最強がどうかは置いといて、僕が作った我が子達が創造者達を倒すことが重要なんだよ。そのためのブリーフィング行う。何、小手先の戦略なんて今回は必要ないさ。君達は想うがままに力を振るえばいい」


 アザゼルはホログラムを起動させ地図を映し出す。


「今回の目標は、ここから北に二百km上にあるスラム街だ」


「スラム街・・・・」


 光里ぼそりとつぶやき表情が一瞬強張るが、すぐに不適な笑みを浮かべる。恵美もいつもになく真剣な面持ちなる。


「ここに創造者達が二時間前に襲撃を仕掛けたようでね。君達は奴らを殲滅してもらう」


「アザゼル、襲撃された後だよな。それならもういねんじゃね」


「いや、いる。アイツらは簡単に人を殺さない。遊ぶようになぶり殺しにしている」


 光里は確信しているかのように話す。


「スラムの大きさにもよるけど、最低三日はいるよ。アイツらにとって人間はおもちゃなんだよ」


「光里、見たことある?」


「うん、私はスラム出身だからね。何回か襲撃されたことがあるよ。だから、奴らは必ずいる」


 翔は驚いたよう様子で


「よく襲撃られていきてたなぁ」


「あいつらはスラムの人を殲滅したりはしないの。必ず何人かを残して逃げた人たちは追い立てるように殺す。狩りをするようにね」


 光里は怒りの籠った声でしかし、満面の笑みで


「あいつらは人類殲滅を掲げながら都市によってうまくいかなくなったから、スラムの人達で遊んでいるだよ。だからこそ、楽しみだなぁ。狩人が狩られる立場に追いやられる奴らがさぁ」


「光里、少し怖い・・・」


 光里の異様な様子を無視するように、アザゼルは間の抜けた声で


「ま、皆それぞれ戦う理由があると思うけど、気楽にやってもらって構わないから。だから特に作戦もなし! スラムへの被害も考えなくていいよ。上層部は全滅してるだろうって見解だからね。例え生きていても都市には何の影響もない。全力を出して来な」


 アザゼルがパンと手をたたき


「ブリーフィング終了。皆ただちに出撃準備。三十分後に出発だよ」


 四人はすぐさま出撃準備に入る。その中で恵美だけ浮かない顔をしている。光里は心配したように


「恵美、大丈夫? 場所が場所だけに気が乗らないのはわかるけでさぁ。私達がやらないと最終的に全滅するよ」


「わかってますわ。民には施しを、敵には鉄槌を。そこ信念は変わりませんわ。ただ・・・」


 恵美はため息をつき


「今回はあまり戦闘に参加できそうになさそうなのが、申し訳なくて・・・」


「あははは、問題ないよ。最強の私がいるんだから、問題なし! 恵美は、恵美のやりたいことをやればいいんだよ」


 恵美はその言葉を聞いて安心した様子で見せる。


「ええ、頼りにしてますわ」


「おいおい、俺も忘れるんじゃねぇよ。ケンカ番長戌井翔が創造者どもをぼっこぼこにしてやるぜ」


「張り切るのはいいけど、アニイの食事の邪魔だけはしたいで。邪魔したらまとめて喰う」


 光里以外の三人は準備のために部屋を出ていく中、光里だけはホログラムに映るスラム街を見てにやりと笑う。その笑みはすでに狂気とも取れる笑顔だ。


「やっとだ・・・やっと、誰が上なのか思い知らしめる。大地が誰のものなのか、空は誰のものなのか教えてあげられる。私が誰なのか教えてあげられる!」


 そんな様子な光里を見て、アザゼルも笑う。


「いい感じで育っているねぇ。ただ、ちょっとバランスが悪いかな」

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