第一章ー異端児
終末暦三十一年、第七防衛都市東京、人類軍部隊「グリゴリ」本部。
今日も今日とて、隊員達の怒声と悲鳴が響いている。
原因は明乃光里と富岡恵美の厄介コンビである。
「明乃二等兵!そこは大丈夫だから!そこまで手伝わなくていいから、どっか行ってくれ!」
「大丈夫、大丈夫。ここは私にまかせて。納車ぐらいだったら私でもできるからさ」
「大丈夫なわけあるかぁぁぁぁ!それは最新の戦闘機なんだぞ。自動車を納車するのと訳が違うんだぞ」
「ねぇ中佐。なんかゴッゴッって変な音してるんだけど、どうしたらいい?」
ドン
「ああああああああ、最新の戦闘機がぁぁぁぁぁぁ」
「エンジン、イかれちゃったか。もう整備班はなにやってるのよ。これは手伝いに行くしかないかな」
「明乃はおとなしくしてろぉぉぉぉ!」
「富岡恵美二等兵、なにか弁解はあるかね?」
「何に対して弁解すればいいのかわかりません」
「ほう、なら教えてやろう。軍の資金を勝手に持ち出し、市民に配ったことについてだ」
「あぁ、その件ですか。私はただ困っている人々に救いの手を差し伸べたまでです。軍人として市民の安全と幸せを守るのが職務ですから」
「いい心がけだ。だがな、軍人なら規則も守ってもらわなければ困る。軍の備品を無断に持ち出すことは禁止されているはずだぞ」
「ですので、軍の資金を使わせていただきました。お金は備品ではありませんよね」
「その資金で戦いのための備品の購入や兵器のメンテナンス、隊員への給料を払うのだが、貴様が使い込んだおかげで、支障が出ているんだぞ」
「別にお金がなくても手に入るじゃないですか。都市内なら資源は無限に手に入りますのに、紙幣なんて旧世代のシステムを使っているのがおかしいのですよ。
欲しい物を好きなだけ、持っていけるようにすれば貧困で困る人はいなくなるのに」
「お前は終末暦生まれだから知らないだろうが、金は社会を維持するために重要な要素なんだよ。そもそも紙幣文化は歴史が長く・・・・」
「富岡二等兵、明乃二等兵、アザゼル様が至急ブリーフィングルームで集合せよと命令が着てます」
「わかりました。ただちに向かいます。光里、行くわよ」
「了解了解、今日も研究の手伝いかなぁ」
「・・・・・・のことから、紙幣が社会の基盤を作ったのだ」
「古谷大佐、もういませんよ」
「はぁ~、あのガキどもが!」
「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ。いつものことですよ。にしても高校生の歳で軍人なんて世も末ですね」
「笑えないジョーダンだな。今は本当の終末なだんだよ」