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秋葉原ヲタク白書53 神田石鹸ノ国奇譚

作者: ヘンリィ

主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。

相棒はメイドカフェの美しきメイド長。


この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第53話です。


今回は、警視庁の経理オフィスが何者かに襲撃され全滅、唯1人の生き残りが神田の駅前風俗に籠城します。


コンビは、裏に潜む公金横領を暴き、作戦資金を奪われたチーム"JK"と協力し救出に動き出すのですが…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 英雄と呼ばれて


神田川の彼ノ岸には石鹸ノ国があると逝う。

万物が泡に沈む悦楽と快楽の国と人は逝う。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


何の変哲もない数人のオフィス。


地下なので窓はないが、お昼にチャイムが鳴るとゾロゾロと全員がランチに立ち上がる。

少しだけ遅れて立ち上がった太った女性が、何か思い出したのか再び着席しPCを開く。


残業か?あ、でも、お昼だから残業とは逝わナイのカモしれないな。

ん?でも、画面はネットオークションだしバッグからは紙袋を出す。


紙袋の中は手作りサンドウィッチだ。

レタスやトマトがハミ出る雑な作り。


そんな雑なサンドを雑に食べる雑な女。

彼女はソンな雑な人生の報いを受ける。


パシュとくぐもった音と低い唸り声がして、さっき同僚が出て逝ったドアが突然開く。

太った女性が驚き、目を見開いた時には、既に彼女の眉間には小さな穴が開いている。


音もなくオフィスに入って来たのは、メンズニットのネックを折り返さズ着た長身の女。

季節柄、大きなマスクで顔を覆っているものの、瞬時に街中(まちなか)に溶け込んでしまいそうだ。


未だ硝煙の上がるサイレンサーをつけたワルサーP38さえ、右手に持っていなければ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ミユリさん!テリィたん!またまたお願いょ!一肌脱いで!特に今回はミユリさんには徹底的に脱いでもらうカモ!」

「ソレ、声かける順番が逆だから!まぁ、話の中身にもよるんだけど」

「警視庁経理本部の秋葉原オフィスが襲われて全滅したの!おまわりさんの…おまわりさんの御給料が出なくなっちゃう!死人も出たのよっ!」


ココは、僕の推し(ているメイド)ミユリさんがメイド長を務めるアキバの御屋敷(メイドバー)

情報が光速で伝わる限界領域にあるコトから"事象の地平面(イベント・ホライズン)バー"とも呼ばれる。


で、今回、重大なインシデントの発生を伝えに御帰宅して来たのはサリィさんだ。

国益優先の特殊部隊員(デルタ・ストライカー)である彼女とはメイド姿の潜入捜査を手伝って以来の友人。


「襲撃は、プロによる計画的犯行だった。恐らく単独犯で、須田町ストア跡地に秘密裏に設置されてたオフィスを、昼休みの手薄な時間を狙って襲撃、残業中の職員およびセキュリティを殺害し、監視カメラのハードドライブを切断して逃走した」

「ええっ?須田町ストアって、あの東京メトロ神田駅にある日本の地下商店街の先駆けとか逝われてた奴だょね?そー逝えば何か最近取壊し工事とかしてたっけ。ってか、その何ちゃらオフィスって何なの?」

「環太平洋地域の作戦資金の全てを仕切るセクション。特殊作戦や機密プロジェクトも全て資金はソコを通る。どんな機密作戦でも、全貌を知りたければ金の流れを追えばいい。テロリストが何を探してるのかは知らないけれど、サーバーがいくつか盗まれてる。機密作戦のデータが数千件盗まれたと思ってもらっていいわ」


そんなコト、アキバの御屋敷(メイドバー)で大声で話してどーする?と逝う気もスルけど、ココまで一気に話したサリィさんはグッと声を落とす。


「実は、例の"ナースベイダー"が動いてるとの情報があるの」

「ええっ?でも、ベイダーは確か大晦日に神田川へ落ちて…あ、そっか。まだ"現在"にいるのか!時間トンネルは自分で壊しちゃったから1945年に戻れないンだ!あぁヤバい。大晦日は死人続出の大騒ぎだったょね?ねえねえ、僕達は戦闘訓練も受けてない、タダの民間人なンだぜ?」

「襲撃当日、オフィスには9名が出勤してた。ランチで6名が外出、直後に襲撃がありオフィスに残った3名が死亡してる。で、外出した6名なんだけど、5名は身柄を確認してるけど、残り1名が行方不明」


じゃあソイツを探しなょ。

そのための特殊部隊(デルタ・ストライク)だろ?


「ソレが、みんなと別行動の残り1名は、同僚の話によると…」

「テロリストの手先だったンでしょ?ソイツが内部から襲撃を手引きしたに違いない」

「いいえ。いつも昼休みは風俗に通ってたんですって」


ええっ!昼から風俗?

そりゃまた御熱心なw


「で、今も何処かの風俗に身を隠してルンじゃないかと思うの。そこで、神田駅前の風俗と逝えば、この方!そう"駅前英雄(えきまえヒーロー)"の名を欲しいままにした、テリィたんにゼヒお話をお伺いしたいワケなのょ」

「ど、ど、どーしてそうなるかな?!自慢じゃナイけど、あの"昼割"ってのが、今でもイマイチ概念として理解が出来てナイんだ。ソレに、僕は今やメイドカフェ1本槍ナンだゼ。メイドは文化だ、風俗じゃナイ。コレは僕の持論で、譲れない」

「だから!今のテリィたんには用はないわ。新入社員時代のテリィたんにお話があるの。ねえねえ。テリィたんの履歴(キャリア)は、とっくに調べがついてる。神田駅前じゃ結構名の知れた客だったそぅじゃナイ?"駅前英雄(えきまえヒーロー)"さん?」


あちゃあ。


サリィさんが、何処で、誰に、どんな話を聞いたのかは、まぁ、その、手に取るようにわかるンだけどwソレって全てが逆転してる!


あのね…


僕が風俗の客だったのではナイのだ。

あの頃は風俗が僕の客だったんだょ。


第2章 神田川を渡れ!


僕は、第3新東京電力の社員だ。


ライター稼業の傍らではあるけれど、サラリーマンも(真面目に)やっている。

今は本社勤務なんだけど、新入社員時代は営業所で現場経験も積んでいる。


停電時の苦情係で、時の政権から景気浮揚策として配電網の保守工事を"指導"されてた事情もあって、当時はヤタラと停電が頻発w


一方、神田の駅前にはターキッシュな風呂屋(とるこぶろ)が3軒もあって、コレが軒並み手強い。

停電しマスとビラを配るや本社&監督官庁にガンガン電話スルので対策に手を焼く。


しかし、何処に電話されても電気は結局消えるのでwとにかく、コッチは店まで出向き、誠心誠意、頭を下げてお願いするしかナイw


特に厄介なのは、了解の取れた工事停電の雨天順延で、帰宅し入浴中に雨音とか聞くと、神田まで全裸で走り出したくなったモノだ。


きっと僕にはアルキメデスの血が流れてるw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


そんなこんなで、脅かされたり頭を下げたりしてる内に駅前の"店舗型性風俗特殊営業"な方々とはスッカリお友達になってしまう。


ただ、アレからバブルやら何やらあったし、今じゃデリヘル全盛だから、きっと廃業や転業が相次いで昔の絆?は残ってナイのでは?


でも、その細い絆にすがろうとサリィさんは御帰宅して来たようだ。

困ってるヲタクを放ってはおけナイ。ヲタクはヲタクを見捨てない。


ところが…


「止まれ!その場に跪くんだ!両手は頭の後ろだ!」

「あらあら。貴方達はどなた?…ん?知った顔もいるのね」

「わ、わ、私達は"通りすがりの街のゴロツキ"だ。と、とにかく!両手は頭の後ろだ!早く!」


真夜中のふれあい橋を渡り、神田川の神田川じゃなくて神田側に渡るや銃口のお出迎え。

対テロ特殊部隊ご用達の短機関銃MP5を構えた"通りすがりのゴロツキ"風の私服3名。


そのヤタラとキビキビした身の動き。

どー考えても訓練された警官でしょw


「ちょっち先を急ぐの。スマホと銃とイヤホンを置いて逝くわ。ソレでOK?」

「うっ。ソレなら完璧だ。とにかく、ココから先は貴官…じゃなかった、貴女には"民間人"として行動してもらいたい…足のつかない銃を用意した。使うか?」

「あら。気が効くじゃない」


サリィさんは、フランス人みたいに肩をスボめ、ワザとドンと隊長?に肩をぶつける。


「本件捜査は警察が行う。傭兵諸君は現場に入れない。ところで、テロリストはゴム手袋を着用し指紋はおろか、DNAすら一切残さなかった。プロの仕事だ」

「ゴム手袋?そんなバカなモノ使ったのか?アマチュアか?」

「いや。ゴム手袋だ。お陰で痕跡が一切残らない。既にゴム手自体は証拠品として押収しているが…」


ココで"ゴロツキ"の隊長?は、御丁寧にも自分のスマホで画像を見せてくれる。

見慣れない防弾ベストの男達の1人がビニール袋に入ったゴム手袋を示している。


家族旅行の潮干狩りの記念写真みたいだ。

万世橋(まんせいけいさつ)の鑑識でもココまで呑気(のんき)じゃない。


「ゴム手袋なら内側にテロリストの指紋がベッタリ残ってたンじゃナイか?チャンと調べたのか?」

「え?ゴム手の裏側…だと?あ、そうか!よ、よく、そんなコトに気がつくなw」

「昨日、晩ご飯の時に見た"名探偵コナン"でやってた…じゃなくて!特殊部隊(デルタ・ストライク)の教練で教わったンだ」←


そうょそうょと大袈裟に頷くサリィさん。

食事の時はTV消せょと小声で呟く隊長。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「GPS信号、ロスト」

「ほーら。コレでテリィたんは、古巣?の神田駅前で放し飼いょ。どーする、ミユリ?」

「今頃、スパニッシュ系の巨乳ちゃんを御指名してルンルンだったりして?」


御屋敷では、サイバー屋のスピアがPCで僕達の動きをトレースしてたが、サリィさんがスマホをカツアゲ?され現在位置が不明にw


御屋敷の女子常連がカウンターの中のミユリさんを一斉にヒヤかす。

ミユリさんは"巨乳"の一言に一瞬だけ眉をピクリとさせたものの…


落ち着き払い余裕の微笑を浮かべた(コトにしておこうw見てナイけど笑)。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「旦那!巨乳がいますょ巨乳がっ!スケ調整が上手く逝って、今宵はスパニッシュの血を引く情熱娘のマリアさんがスタンバイしてますゼ!」

「ええっ?!スパニッシュな情熱娘?!…じゃなかった、えっと、今から店を貸切にしたい。断れば、外で待機してる愚連隊を突入させる。とにかく、ロザリさんにテリィが来たと伝えてくれ」

「ええっ?愚連隊?何?それに、ロザリはもう客はとってナイんですが、旦那は一体…ってか、コチラのお連れさんは?連れ込み3Pなら、お得なセット料金の御説明を…」


オシボリもドリンクも出さず、チープな待合室で営業かける黒服(フィリピーノ)にロザリを呼ばせる。

怪訝な顔の黒服がバックヤードに消えてからキッチリ90秒で長身フィリピーナが登場。


細身のパンツにゴツめのスノーブーツだ。

長い黒髪を翻し待合室に駆け込んで来る。


「テリィ…たん?」


やぁ、ロザリ。

久しぶりだね。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ロザリは、当時全国を席捲してたフィリピンパブの大ブームに乗って来日。

その後、海の向こうの国の干渉でブームが突然の終焉を迎えてから神田へ。


何だかんだで、多分もうアラフォーだろ←


今ではコチラの支配人だそうで驚く。"嬢"から大変な出世をしたモノだ。

事情を話し行方不明の職員の写真を見せる。するとビンゴ!えっ?来店中?


「6号室。相手してるのは娘のアンジだから、踏み込んでいいょ。テリィたんは神田警察と逝うコトにしとく。でも、後でバックヤードに必ず寄って。話がある。アレから、長い、長い時間が過ぎた。テリィたんには、いっぱい、いっぱい話がある。テリィたん、絶対に寄る。約束?」


ROG(りょうかい)だょ、Mom。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「動くな!神田警察よっ!両手を見えるトコロに出して!」


ロザリから借りたマスターキーで6号室を解錠、サリィさんを先頭に踏み込む!

あ、あれ?サリィさんはヒモ付き警察手帳を見せてるけど…さっきの警官のか?


あぁサリィさん、ダメでしょ。

警官から警察手帳をスッちゃ。


ところが…


「貴方が警視庁経理本部のサシィ?秋葉原オフィスの生き残りの?」

「バブ?」

「あぁ早くオシメを取って!オムツも!えっ?私に代えて欲しい?3つ数えたら撃つわょ!」


経理屋サシィは、恐らくアラフォーの中年男みたいだけど…幼児プレイ中だたw

"特殊浴槽"にオムツ、(ヨダレ)掛け、オシャブリの豪華3点セット装備で湯浴み中←


対するアンジは、何処か母親の面影を宿す(鼻ペチャw)生粋ピーナの美女で大巨乳だ。

(僕好みのw)ミニのメイド服で跪き、母性満開でサービス中w仕事熱心は母譲りかょw


「撃つなら、ママから撃って!私は、このベイビーのママなのよっ!この子は、この子は誰にも渡さない!」

「バブ!」

「どぉして、しょーゆー話になりゅのでちゅか?ああっマズい、私まで幼児言葉になってるわw」


"足のつかない銃"を仕舞いながら頭を掻き毟るサリィさんw


し、しかし、ココは…ソープだょね?

もしかして?イメクラ…だったっけ?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


楽しい間食(メリエンダ)が始まる。


幼児プレイを続けるサシィとアンジと一緒に約束どおりバックヤードに顔を出したら…

狭い部屋の狭いテーブル一杯に、牛テールの煮込み(カレカレ)の大皿をメインに御馳走が並んでるw


フィリピン料理は冷まして食べるので湯気こそ立たないが真夜中の豪華ディナーだw

やや?このトシーノ(甘い?ベーコン)があると逝うコトは…あぁ!おばあちゃんだ!


ロザリは、平成の頃にママンを日本に呼び寄せて以来、ズッと一緒に暮らしてルンだ。

さすがに車椅子となり孫娘?が押してるが僕を見て笑顔爆発、両手両指で手招きする。


おばあちゃんのトシーノは恐ろしく美味い。

コレを食べずに帰れるか!団欒スタートだ。


お誕生席におばあちゃん、右サイドに僕とサリィさん、左サイドにロザリとアンジ(と幼児サシィ)。

さらに一仕事終えた?姉妹だか親戚だかの諸嬢が加わり賑やかな一族の団欒となる。


さっきの黒服が店を閉めたのか末席にいる。

アンジはサシィに食べさせプレイを続行中。


一方、おばあちゃんはタガログ語オンリーなのでロザリを通訳に立てて話しかけてくる。

で、盛んにサリィさんを指差すから慌ててミユリさんじゃないと説明して大爆笑となる。


さらに、東日本震災の夜、パニックに陥った帰宅難民向けに風俗ナシで風呂を提供、危うく神田警察に捕まりかけた話で盛り上がる。


相談を受けた僕は、警視庁の知合いに電話し公衆浴場法に拠る浴場業の条件を満たしてる旨を主張、ロザリは連行寸前に釈放となる。


釈放どころか、翌日、宿敵?神田警察からは署長名の感謝状が届いて神田駅前に凱歌が上がる…だ・か・ら、実はその時からなんだ。


僕が"駅前英雄(えきまえヒーロー)"と呼ばれるようになったのは。

な?意外と思うだろうが最近の話なんだょコレは。


第3章 勇者達の浴場


その時、ビルの屋上で爆発音。

何かが倒れる大きな音と振動。


あ、ロザリの店はJR神田駅前にある6F建て雑居ビルの3〜4Fを借りて営業している。

どうやら、ロザリはおばあちゃんや親戚諸嬢と共に、このビルで暮らしてるようだ。


職住接近って奴で、ある意味羨ましい。諸嬢はデリもやってるから駅前は何かと便利だ。

因みに、1Fのラーメン屋、2Fのコスキャバ共に正午(午前零時)で閉店、5〜6Fはoffice。


黒服が防犯カメラの画像を立ち上げると狭いエレベーターのドアが開き女が降りて来る。

全身黒装束に黒マスク。今時黒いマスクって珍しくもないが、どー見ても悪人だょ多分。


果たして、店のドアをピッキングして侵入。

画像を待合室に切替えると…(ワルサー)を持ってるw


そのまま、バックヤードへ。

僕達は、その場に凍りつく。


「動くな。変なマネをしなきゃ"この時代の人間"は殺さない…サシィってのは、どいつ?」

「そんな人はいないわ。帰って!」

「…いや。いいんだ、アンジ。僕だ。僕がサシィだ」


サシィは、立ち上がって拳銃女(ナースベイダー)と向き合う。

落ち着き払った低い声と何処か品ある動作。


コレで(ヨダレ)掛けとオムツさえしてなければw


「貴方がサシィ?意外にマトモなのね。あんな画像をUPするから、てっきりヲタクかと思ったけど」

「facebookに上げたのが1時間前。twitterならもっと前から呟いてる。来るのが少し遅いんじゃないか?」

「ちょっち待って!どんな画像がUPされてるの?」


ロザリがネット検索でサシィのfacebookを見つけ全員で覗き込むと…

あちゃあ。幼児姿のサシィとプレイ中のアンジ…コレ、自撮りだろw


とにかく!諸悪の根源は、お前だサシィ!

赤ちゃんがfacebookやっちゃダメでしょ←


「だって、お店の宣伝にもなると思って…」

「でも、集まるのはこんな女(拳銃女(ナースベイダー)を指差す)ばかりじゃないのっ!アンジ!貴女も貴女よっ!」

「でもママ!ママは私に、いつも仕事に誇りを持ちなさいと逝ってたわっ!」


場違いな母娘バトルが始まるw


「僕は、組織に脅され警視庁の公金を横領した。でも、組織がサリナを殺したと聞いて恐ろしくなったんだ」

「アレは事故よ。そもそも、あの時、オフィスは無人になると教えたのは貴方自身じゃナイの。だから、昼休みに侵入して横領の証拠となるサーバーを機密情報ごと頂く予定だった。ところが、実際にはセキュリティはいるわ、サーバーはないわ、太った女はいるわ…」

「ちょっち待ってょ。そのサリナって誰?美人?」


アンジの邪魔が入って僕が横から応える。


「(デブ専だったけど)亡くなったそうだょ」

「あら、そう(その意味不明なドヤ顔ヤメろw)」

「貴方達!状況がわかってンのかしら?!この銃が見えないの?!サシィをコッチに渡すのょ!彼には、サーバーと横領した金の在り方を歌ってもらいマス…ゴ〜ン」


解説しよう。


最後の音は、国外逃亡犯の名ではなく、車椅子ゆえノーマークだったおばあちゃんが、拳銃女の後頭部を鉄鍋で思い切り殴った音だ。


拳銃女はグニャリと床に崩れ泡を噴き痙攣、意識を喪失。あ、失禁?もしかしてプレイ?

サリィさんが拳銃を奪って2丁拳銃になると同時に窓ガラスが割れて何か投げ込まれる。


トランシーバーだ。


「…屋上の基地局を破壊したからケータイは使えない。何処からも助けは来ないぞ。大人しくサシィを渡せば、風俗嬢には手を出さない」

「"嬢"じゃない僕はどーなるんだ?ってかソチラはドナタ?」

「サシィに横領を持ち掛けた組織の者だ。よくある詐欺師の国際グループだと思え。オレオレ詐欺が左前になったので、グローバル化を急速に推し進めている」


グローバル化ってそんなモノか?

サシィがトランシーバーに叫ぶ。


「悪いが、アンタらが欲しがってた機密情報は、横領未遂の事実と共にサーバーごと燃やした。ダウンロードも一切していない。あらゆるデータは完全に消滅した」

「そうか。ソレなら後は横領と横領を知る者を全員消すだけだ」

「あのね!コッチはね、アンタんトコの鉄砲玉を捕虜にしてンだょ。ウチのおばあちゃんはね!2番目の旦那を鍋で亡き者にしてンのさ!アタシ達は今、アンタのトコロの鉄砲玉を半殺しにしてるよっ!」


アンジが叫ぶとトランシーバーは一瞬沈黙。

アンジは本心?それともコレもプレイかな?


「鉄砲玉?あの日に帰りたいとかブツブツ呟く女のコトか?人を簡単に殺すから、お前達の情報を教えただけのヨソモンだ。殺すなりナンなり好きにしろ…コレが最後通牒だ。サシィを出せ」

「お生憎様。神田の"嬢"はアキバのヲタクについて行く!最後通告への答えは…くたばりやがれ!」

「始めろ」


窓ガラスが割れる音に続き、たちまち店内には煙が立ち込める!発煙弾?

外階段への裏口が蹴破られ、短機関銃や拳銃片手の男達が乱入してくる!


倒したソファを盾にサリィさんが2丁拳銃で応射するが…こいつら、ホントに詐欺師か?ソレにしちゃ軍隊並みの重装備でしょコレw


「おい、中の奴!6発撃って装填してないょな?弾切れみたいじゃないか。さっさと降伏しろ」

「マズいわ、テリィたん。表のエレベーターも上がって来る。どうやら、ゲームセットみたい。ゴメンね」

「わかった。でも、おーい!みんなも聞いてくれ!コレから、何が起こっても…絶対に死ぬな!僕には、君達の他には友達がいないンだ!」


傍らでは銃身に1発残した拳銃で裏から来た男達を威嚇するサリィさんが微笑む。

表のエレベータードアの両脇ではホウキ、モップ、鍋を構えた諸嬢がサムアップ。


ロザリが叫ぶ。


「みんな、地獄で会いましょう!」


あ、いや。だから、そうじゃナイんだがな。

運命のエレベータードアが開き現れたのは…


あれ?誰も乗ってナイ?


第4章 神田駅前の凱歌


神田駅前には、今時よくぞと思う位の大箱カフェがあるンだが、その片隅にバーがある。

実は昔、ミユリさんがバーマンの修行をしていたバーなンだけど久しぶりに訪れてみる。


翌日の昼下がり。

みんなで、お茶。


「えっへん!結局"ウチの人"であるサシィは無罪放免どころか、警視総監から感謝状が出るコトになったのょ。彼の"大きな銃(ビッグガン)"は威力抜群でしょ!」

「アンジ!何てハシタないコトを逝う娘なの!ソレより、あの時、みんなの心を瞬時に1つにしたテリィたんの言葉。あの蜂蜜みたいに甘い声…」

「ママ!」


結局、ロザリの店を襲った連中は、半島系の偵察総局だったみたいだ。

彼等は、新しく発足した"JKチーム"の情報収集のためサシィに接近。


作戦資金と機密情報の盗み出しに成功するが、最後の最後にサシィがアンジの下へ走る。

彼等は、よく色仕掛け(ハニートラップ)を使うンだけど、今回は神田諸嬢の色仕掛け(ハニートラップ)に作戦を阻まれる。


自分達の作戦資金がカモられたと知った"JK"チームの怒りは凄まじく、半島系のスパイ達は文字通りコテンパン(死語w)な目に遭う。


エレベーターの扉が開いた瞬間は実は無人。

誰もが拍子抜けする、その瞬間の隙をつく。


エレベーター天井のハッチから"JK"チームの精鋭が飛び降りるや、正確な射撃で次々と国際詐欺師のグループ?を撃ち倒して逝く。


鉄砲玉(ナースベイダー)が息を吹き返した時には、彼女の雇い主は全員"JK"チームの捕虜になっている。


「盗んだサーバーのバックアップを取ったら、実は色々と矛盾が出て来た。同じ日付件名の"JK"チームに関する2つの予算書が異なる権限者により決裁されていた。しかも、権限者同士は、お互いの作戦にアクセス権がない。なせなら、ドチラも秘密作戦だから。官僚主義の盲点を突く、実に巧妙な横領が、もう数年も前から行われていた証拠だ」

「今回、自分が横領スルつもりでシステムに入ったサシィは、既に何者かが何年も前から同じ要領で横領してたコトに気づき、結果として犯罪を摘発、再発防止策まで講じた功労により感謝状と逝う騒ぎだ。香港への横領した金の送金まで公金を一時的に保護したと賞賛されてるwしかし、短時間で、よくココまで調べられたね」

「実は、サリナが、君達が逝うトコロの太った女のサリナが、手伝ってくれたンだ。恐らく、横領の分け前に預かりたかったのだろうが。そのせいか、真っ先に消されてしまった。爆乳だったのに」


サシィは唇を噛む。


「あら。彼って、意外にマトモじゃない?危ない人じゃなかったの?」

「だ・か・ら!ごく普通の幼児ヲタクょ」

「じゃ、彼にキメちゃう?」


ロザリとアンジ母娘のヒソヒソ話は、とりあえず、聞こえないフリをしておこうw


「我々"JK"チームが横領疑惑を知ったのは今から36時間前のコトだ。発端は、サシィの香港にあるオフショア口座への3百万ドルの送金だ。振込人は、インドシナ戦争以来の伝説の武器商人グループ。我々"JK"チームの前身が、半世紀にわたって追いかけてた連中だ。今回の彼等の役割は、恐らくマネーロンダリングだったと思われる。いずれにせよ、話を聞かされた時、我々は"1981年"にいたんだ」

「バブルの頃か?!ソレは楽しそうだね」

「任務だょ。JK隊は、与えられた目的(ミッション)を実行するために、あらゆる"時代"に出撃する自由作戦部隊だ。どの時代に時間跳躍すべきかも含めて、俺達は、俺達のコトは自分達で決める。ルールを守るのではない。俺達がルールなんだ。誰の指図も受けない」


ココまで英雄気取りでカッコよかった"JK"隊長だったが急にバツの悪そうな顔になる。

あ、どうやら"JK"って"時間警察"のコトらしい。女子高生を期待してたが空振りだw


「1981年でも、武器商人の傭兵を追ってたんだが、現在に呼び戻されて命令どおり、橋の袂で君達を待ち構えていたら…気がついたら警察手帳がなくなってたw」

「あのね。確かに私達(デルタストライク)は、JK隊を"時計屋"とか呼んで馬鹿にしてる。でも、ホントは時間トンネル(タイムマシン)に平気で飛び込んで逝くクレージーなトンネルラッツ(タイムトラベラーズ)を心の底から尊敬してるの。わかってるでしょ?」

「モチロンわかってナイ。消えた警察手帳の代わりにポケットにメモが入ってた。メモには、たった3行。"ミユリを訪ねろ。彼女が教える店へ行け。大至急"。Ms.ミユリが君達の居場所とおおよその状況をブリーフィングしてくれた」


うーん、ミユリさんには神田駅前の話も全部お見通しだったのか。

やれやれ、ホント、萌え系女子のネットワークって侮れないょなw


侮れないと逝えば幼児のサシィもだw


「今回の隠し金は、香港のオフショア口座の金で全部だろうな?サシィでないと下ろせない不思議な口座とかナイだろうな。神に誓えょ?」

「出来た筋書きだょね?ホント、誰が考えたんだろうなぁ」

「あのなー。じゃ、とりあえず、ソレで話は合わせておくけどさ」


まぁいいや。アンジとの新生活応援資金と割り切って…と思ったら目の前にロザリ。

いつになく真剣な眼差しをぶつけて来る。おいおい!僕にはアキバにミユリさんが…


「私の家族のために戦ってくれた人は、テリィたん、貴方が初めて。貴方は、いつでも遊びに来てOK。スパニッシュクォーターのマリアなら、今からでもいいょ?」

「うわ。まだお昼だぜ。爆乳娘はヘヴィだろ。そんなコトより、おばあちゃんは元気なのか?流れ弾とか当たってナイだろーな。あの絶品トシーノ、また絶対に食べたいンだけど」

「おばあちゃんの連れ合い、私達のおじいちゃんは、レストランをやってた。でも、みかじめ料を払い続けて、結局、店は潰れた。嘘をつかれ、裏切られて死んだ。でも、おばあちゃんは、善き人を愛するコトを止めナイ。テリィたんのような、善き人を愛するコトを止めナイの」


ココで、ロザリは柄にもなく涙ぐみかけたンだけど、直ぐにたくましく商談?再開だ。


「ねえねえ、テリィたん。知ってる?おばあちゃんの舌遣いは神なのょ。何しろ咽頭(ノドチンコ)を使うンだから。アンジはもちろん、私でもかなわない」

「そ、そりゃスゴいなwホントかょ?」

「1度、試してみたら?その間、正面から私が抱いててあげるけど?ねぇ。コレって世界で最高の3Pだって思わない?」


絶対、思わないw


ソレにね、おばあちゃんの超絶技巧を堪能?する素晴らしい手があるンだょ。

この手を使えば、現役(・・)のおばあちゃんからスペシャルサービスが受けられる。


YES!"時間トンネル"を使うのさ!



おしまい

今回は、海外ドラマでもよくある"籠城モノ"で、幼児趣味の内通者、彼を庇う駅前風俗の諸嬢、作戦資金を盗まれた時間警察、時間警察をスパイする外国スパイ機関などが登場しました。


TVで見聞きするNYの都市風景を秋葉原に当てはめて展開する描き方の経験値を上げて逝ます。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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