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アゼルの傲慢 4

そんな生活を続けていたある日、レーヴ様にデートに誘われた。

希望を聞かれて、いつか行きたいと願った綺麗な湖を迷うことなく告げる。快諾してくれたレーヴ様は、当日花束を持って私の前に現れた。



「君を愛してるんだ。結婚してくれないかな」



本当に嬉しくて、思わず頷こうとした私を彼は止めた。



「まずは私の事について知って欲しい。ずっと黙っていたが、私の名はヴィルクリヒカイト・レーヴ・ヴィッテルこのヴィッテル王国の王太子だよ」



ーー頭が真っ白になった。


この国の王太子の名前を知らない訳がない。

国名の入った彼の名前に私は呆然と立ち尽くした。



「私には、幼い頃より決められた婚約者がいる。彼女を正妻にしないと国が荒れる」

「こん……やくしゃ……?」

「ああ、君には残酷な事を言っていると分かっている。それでも愛している君の手を離したくないんだ。でも君が嫌なら、私は君を諦めるよ」



そうだ。

本物の王子様には、本物のお姫様が似つかわしい。



「わ、私……」

「アゼル」



レーヴ様は、静かに私の名前を呼んだ。

子供に言い聞かせるるように、ゆっくりと、穏やかに。



「アゼル。私だって戯れでこんな事をしている訳ではないよ。ちゃんと君を愛しているから、こうやってプロポーズしているんだ」



それは甘い甘い蜜のように、耳に溶け込んでいく。


私、今まで精一杯頑張って来たんだもの。



だって、そうでしょ?

絵本の中でも大変な思いをして困難を乗り越えようとするお姫様は、絶対王子様が助けに来てくれるもの。


それがたまたま靴屋の息子でもなく、果物屋の息子でもなく、本物の王子様だったということだ。


私、今まで頑張って来たから、迎えに来てくれたのよ。

私だけの王子様が。


王子様も私の事を愛してると仰ってくださったし、私も王子様の事を愛しているの。


だから、自分の手でこの恋を引き裂きたくない。この人を離したくない。


そうよ、きっと神様は見ていて下さったんだわ。私が頑張ってたってこと。

だから、私を真のお姫様にしてくれるという事なのね。



黙り込んだ私にレーヴ様は不安そうな顔をして、私の頬に触れる。



「レーヴ様」

「ん?」

「あの……、私なんかでよければお側に上がっても宜しいでしょうか?」

恐る恐る聞いた時、彼は酷く安心したように微笑んだ。

「ああ。ありがとう」



聞けば結婚式がもうすぐあるのだという。彼と婚約者の結婚式が。

幼い頃から決められた婚約者とは仲が良く、家族のように思っているのだと彼は言った。


そして、女性として欲しいのは私だと。


私を愛妾にする為に、レーヴ様はきちんとした手順を踏んでからまた迎えに来ると私に告げた。



私が彼の住む王城へと行けたのは、それから少し経った後。婚約者の少女に紹介をするからと言って、私が引き合わされたのは藍色の猫を思わせるような瞳を持つ、華やかな顔立ちの美少女だった。


沢山のレースで作られた真っ白なドレスに身を包み、この世の幸福を全て詰め込んだかのような生まれついてのお姫様。


本当だったら一生こんな間近で姿なんて見れない、そんな女の子。



「愛し合っている人がいるんだ。君を王妃として大切に扱うし、次の世継ぎも君に産んでもらう。決して君を蔑ろにしたりはしない。ちゃんと君の事も愛してる。だから、彼女を愛妾として後宮に迎え入れてもいいだろうか」



婚約者に会わせる為だって、わざわざ私が着替えさせられたドレスがすごくみすぼらしく思えた。私にとっては一生着れない筈のドレスなのに、彼女の豪華な婚礼のドレスの前では話にならない。


彼女は全く聞かされていなかったのか息を呑んでしばらく固まっていたが、やがて柔らかく微笑んだ。


まるで聖母のように優しく、そして美しく。



「あら、私は賛成ですわ。貴方が異性から好かれるのはよくある事。それだけ素敵な殿方だというのは私がよく知っていますもの。私が願うのは愛する貴方の幸せとこの国の繁栄だけ……。貴方とそちらの方が愛し合っているのならば、私は引き裂いたりしませんわ」



なんて慈悲深いんだろうと思った。

それと同時に、レーヴ様の婚約者は家族のように思っているという言葉が脳裏を過ぎる。



お互いに恋愛感情がないのなら、ここに私は居てもいいのよね……?

だって私とレーヴ様は、愛し合っているんだから。



「ちゃんと私の事も忘れないで下さいませ。でないと寂しくて泣いてしまうわ」

「ああ、勿論だ。君の事も愛してる。忘れる訳がないよ」



ホッとしたように微笑んだレーヴ様に、私も内心安心する。きっと彼女に認められたんだ、って。



「私達には王太子妃と愛妾という身分差があるけれど、仲良くしましょう?私達は同じ夫を持つ妻なのですから」



彼女から差し出された手を握り返す。

ああ、この人は本当にいい人なんだなって、これから仲良くなれそうだなって漠然と私は思った。

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