20-1 決戦準備
着弾地点では、粉体土壌による土煙がもうもうと噴き上がっていた。
しかし大気がほとんど無い月面では、土煙の動きはほぼ直線状であり
こうした着弾で生まれたクレーターの周辺には光条が形成される事になる。
「なんて事をしてくれたのかしら…!
ギギギーーー!!」
着弾地点近くまでやってきたサーミアは、
その場で歯ぎしりをしながら地団駄を踏んだ。
「ルシール特務長、
幸いにして魔法遺跡に対する被害は軽微のようです」
傍にいた副官のラクシャターナが、
現場に急行した緊急調査班からの情報を受け取って報告した。
「現在、ダジャニデフシュルート-7728技法の遷移展開用グランドエナジーファンネルの接続に問題なし、またエレガヴァイプト45共同修練チューブ類の損傷も軽微であり、カランサファイダゲケイリ系統-ラランドアパランシャラクトロレス系統の魔法回路やガーガーダイムトゥ系のハイパートランスマニホールド11-2983魔力錬成機械装置も無事です」
「そう、なら良かったわ」
サーミアはホッと胸を撫で下ろした。
「しかーし!
こんな事をして、タダで済ませる訳にはいかないわね!!
”バイオメカノイド”めぇ!!覚えてらっしゃーい!!」
ひとしきり天に向かって拳を上げ、気を吐いたサーミアは、
それからラクシャターナの方に振り向いた。
「ぃよっし!
一時中断してしまった魔法陣回路の接続儀式を再開させるわよ!
準備はいいかしら!?」
「はい!もちろん準備は万端にてございます!!」
ラクシャターナが自信満々といった表情で笑みを浮かべながら頷いた。
「あーあ、月面をこんな風にしやがってぇ…
ちきしょー環境破壊だぞーお前らぁーーー!!」
サーミア達の居る場所から少し離れた場所では、
キロネが同じようにして天に向かって拳を振り上げていた。
「カロン・キロネ特務長様~、いかが致しましょうか~!?」
傍に控えていた副官のピコルが問いかけた。
「おぅ!もちろん穴を急いで埋め戻してよぉ、
とっとと復旧させちまおぅぜぇ!!」
腕をぐっと胸のところで構えたキロネが、
猟狐耳をぴこぴこ震わせながら言った。
「はい~!!」
「そうしましょうです~!」
「道具は持ってきたです~!!」
ピコルを始め、猫耳やウサギ耳や狸耳を持った童子のような副官達が
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら次々に返事した。
「おっしゃーーー!!
これもガリボリ君アイスのためだぁーーー!!
者ども、行くぜぇーーー!!」
「おおーーー!!」
さらに離れたところでは、シスケウナの乗った小型宇宙艇が
被害を受けたポイントの上空を周回していた。
「ふむ…多分また色々と足りない物資が出てきそう」
シスケウナが、宇宙艇のスクリーン越しに被害状況を確認して
ぶつぶつと呟いた。
「タイカス特務長、
恐らくアダマンタイト系合金の需要が増えるのでは無いでしょうか?」
「そうだね」
副官のセファイサーによる意見にシスケウナが頷く。
「どうせキロネ隊がまたギリギリになって購買申請を出してくるだろうから、
その前に押さえとこう」
「ラクシャターナのほうも同じでしょうね」
「…セファイサーは、いつもラクシャターナの話をするけど
そんなに彼女の事が気になっているのかな」
シスケウナの淡々とした口調ながら、からかうような質問に
セファイサーが顔を真っ赤にした。
「っっ!そ、そんな事はありませんわ!!
彼女がいっつもおかしなドジを踏むものだから、
からかい甲斐があるだけですわ!!」
ぷりぷりと怒り出すセファイサーに、シスケウナが微笑み返した。
「ふふっ、そういう事ならそれでもいいけど。
では、私達も商人組合との折衝を開始しようか」
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「よっし!!これで撃破は3体目だっ!!」
『ゼロ2』に搭乗する竜司は、
明日香と『須佐ノ男』号に教えてもらった戦術を用いて
竜司の担当する”バイオメカノイド”群の”大王烏賊級”を
次々と撃破する事に成功していた。
「このマジックアシッドカプセルとやら、なかなかいーじゃねーか!!」
「はい=あの装甲が厚い”大王烏賊級”に対しては=
最大級の効果を発揮しております=」
『ゼロ2』も同意する。
「それに、やりこぼした奴らは掃討部隊?ってーのが後始末してくれるから
すげーありがたいぜ」
「はい=”ヤマトクニ”天体軍掃討部隊が=三個師団ほど=
この地球近傍宙域に=展開しております=」
この”ヤマトクニ”天体軍掃討部隊は
竜司達の”特殊小隊”が月軌道で作戦行動を取る際に
”ヤマトクニ”軍側でフォローのために残しておいたものである。
あとは”ヤマトクニ”天体軍が、”バイオメカノイド”群に対する魔法陣防衛の為に
月面上に展開している。
いずれも、地球側”機関”には全く感知出来ないよう秘匿行動を取っていた。
「だけどよ、その掃討部隊ってどこに居んだろ?」
「はい=当然地球の”機関”側に見られないよう=秘匿状態としております=
ここからも=特殊な観測機器を通さない限りは=確認出来ないでしょう=」
「でもさ、俺ら”特殊小隊”はそんな秘匿機構とか持ってないけど
そこら辺、大丈夫なんだっけか?」
「はい=私達は=既にグルームレイク上空で=見られていますので=
私達だけなら=現在見られても=問題ありません=
逆に=地上でのアリバイ作りの為にも=あえて姿を見せるべきとの=
オクウミ様からの指示がありました=」
「あっそーか。
確かに、既に色々見られちゃってるからなぁ…ハハハ」
そこへ、東雲から通信が入った。
『赤羽ぇ!俺はすでに6体目を撃破したぜ!!』
「何ぃい!?馬鹿言うんじゃねーぜ!
俺んところは既に”バイオメカノイド”群の9割を撃破してんだ!
それから”大王烏賊級”に取り掛かってんだから単なる順番の違いだぜ!」
『ほほう、言うではないか!!
単に”大王烏賊級”を相手するのが大変だから後回しにしたんだろうが、
そのお陰で”大王烏賊級”にナノマシンを散布されかけたではないかな!?』
「ちっげーよ!
”大王烏賊級”の土手っ腹に開けた穴から少し漏れ出しただけだってーの!
東雲こそ、”直角貝級”をみすみす逃してんじゃねーぞ!
そのお陰で月面に大損害くらってんじゃねーか!!」
『それを言うなら、赤羽だってそちらの群れに居た”直角貝級”の
主砲斉射を見逃していたではないか!俺は確認していたぞぅ!!』
「な、何だって!?見てやがったのかコンちくしょー!!」
『ふっ、我にかかれば、お前のやった事は、全てまるっとお見通しだっ!!』
「お前そのセリフもかなりギリギリだぞ」
『なっ!?』
「…まぁ、俺らがドジった分のフォローを
ねーちゃんが全部してくれてんだけどな」
『…ああ、そうだな。
あとで、明日香さんに謝りに行こう』
「バァカ、ねーちゃんはそんなんを求めたりしねぇよ。
それよりも、この場合は現場で挽回するのが一番なんだよ!」
『…うむ!そうだったな!
戦場で失った名誉は戦場で取り返すべきであるな!!』
「よぉし!!行くぜ!!」
『おぅ!!』
竜司と東雲は、それぞれの愛機を駆って
月に襲来しようとする”バイオメカノイド”群をみるみる間に駆逐していった。
そして”直角貝級”が主砲斉射してから更に30分後、
月からはおよそ50万キロの距離まで迫ってはいたが
何とかギリギリの所で、ほぼ全ての”バイオメカノイド”を撃破する事に成功した。
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竜司達が月に襲来する”バイオメカノイド”群を迎撃し、駆逐しつつある場面は
当然、”機関”の深宇宙防衛警戒ネットワークに逐一捉えられていた。
「な、何なんだあれは…!?
一体、あの宙域で何が発生しているんだ…!?」
北米の某地下基地にある、深宇宙防衛警戒ネットワークの管制センターでは、
その場にいたスタッフ全員が、正面の巨大平面液晶スクリーンに映し出された”バイオメカノイド”群と謎の巨大ロボット達によって繰り広げられている宇宙戦闘を呆然と眺めていた。
何しろ、先刻まで行われていた統合参謀本部の緊急会議でも襲来する”バイオメカノイド”に対する有効な防御作戦を決定する事が出来なかった。
しかしあの巨大ロボットの出現は、検討中の作戦計画全てをまたもゴミ箱行きにしかねない。
「この映像は、現在当該宙域へ接近中の
第5宇宙艦隊任務群によって撮影されているものです。
旗艦マウントハドリーからの連絡では、
現場到着までにあと1時間を要すると言っております」
「うむ…」
レイノルズ宇宙軍大将は副官のエルステッド中佐による説明を聞きつつも、
圧巻の迫力がある映像に、思わず息を呑んだ。
「レイノルズ司令官!
あの巨大ロボット群なのですが、
4月にグルームレイク基地を襲撃した巨大ロボットと
およそ8割以上で形状が一致する事が判明しました!!」
情報分析士官による新たな報告に、レイノルズは眉をぐっと顰めた。
「何だと!?という事は…
やはり例の重要監視対象”T”とは何か関係があるんじゃないのか!?」
腕を組んで少しばかり考え込んだレイノルズは、
エルステッド中佐に命令した。
「シマザキ大佐を呼び出せ」
『はい、国家安全保障局のシマザキです』
「レイノルズだ」
『これはお久しぶりです、レイノルズ大将』
「済まんが、単刀直入に聞くぞ。
今、例の重点監視対象”T”の状況はどうなっている?」
TV電話画面に顔をずいっと近づけながら訊く。
『”T”、ですか…?
先刻もエルステッド中佐から問い合わせがあった件ですね?
ええ、もちろん今の所、何も異常は見られないとの事ですが…』
画面の向こうで、顎に手を当てながらシマザキ大佐が言った。
「もう一度、ちゃんと確認してくれないだろうか?」
『…は』
「たった今、地球近傍宙域で発生している異常現象の中に
くだんの巨大ロボットが目撃されているのだ」
『な、何ですって!?』
今度はシマザキ大佐が画面へ飛びかからんばかりに驚いた。
『申し訳ありませんレイノルズ大将、もし良ければ
画像データなどをこちらに転送してもらえますか』
「ああ、構わん。
とにかく、今一度”T”の状況を詳しく調べてくれ。
例の”クピドー”とやらにもな」
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シマザキ大佐は、レイノルズからの通話を終えた後に
直ちに重点監視対象地点”T”にてスパイ活動を行なっているはずの
特殊工作員”クピドー”への直接通信回線を開いた。
本来は、”機関”の極東支部を介した通信となる所だが
この緊急事態ではそのような手続きが煩わしく、
彼は非常権限で手続きをすっ飛ばす事にした。
「”クピドー”よ、今そちらの様子はどうなっているんだ!?」
『はい、”グランド・ビショップ”。
今の所、特に何も異常は見られません』
「そんな事は無いはずだ。
まず、この通信を画像モードに切り替えてみろ」
『はい、了解しました』
ピッと画面が切り替わり、通信用パッドに”クピドー”の顔が映し出された。
「ふむ、お前はちゃんと”クピドー”である事には間違いないな」
『はい、その通りですが…何かあったのでしょうか?』
”クピドー”は、その可愛らしい顔を傾げてツインテールを揺らしながら訊いた。
「いや、お前の関知する所では無い。
というか、ここでお前の”魅了”能力を行使するんじゃないぞ!
まったく気持ち悪い!」
顔を思い切り顰めたシマザキが言うと、彼女があっさりと頷いた。
『分かりました』
「とにかく、本当に異常はないのか!?
お前の能力で取り込んだ、例の少年達は今どうなっている?」
竜司達の事を指していた。
”クピドー”の”魅了”能力で、現在では全員がその催眠下に置かれていて
彼女によって逐一その行動が監視されている、という事になっている。
『はい、問題ありません。
こちらに本日分の映像がございますが』
と、彼女はファイルを画面上に提示した。
「よし、直ちに送れ」
竜司達が多摩市のあちこちに出歩いたり、
遊んだりしている映像を確認したシマザキは
ううむ、と考え込むようにして呟いた。
「確かに…見る限りでは何の変哲も無いただの少年達なのだが…
先月にはお前の手で、深層意識探査もやっていたんだったな。
その結果も、特段問題は見られないと判断されていたと思うが?」
『その通りです、”グランド・ビショップ”』
彼女が首肯した。
「それに、極東支局が派遣した現地調査班も、あの4月の一件以来は
何ら異常現象を確認出来ていないという報告もあったし…ううむ」
4月の一件というのは、
シアラが多摩市に不時着した事を”機関”が探知し、調査に向かった調査員達が『防衛免疫システム』によって妨害された事件の事を指している。
それ以来、”機関”は明らかに異常な事象がこの多摩市を中心に発生していると捉え、”クピドー”を始めとして多くの特殊部隊や調査員を多摩市に派遣していた。
しかし、彼らによる調査は一向に捗っていなかった。
「やはり、あの”T”でのアンノウンと、この巨大ロボットには
何の関連も無いのではないだろうか…
もしくは、”T”からはもうアンノウンは去ってしまったのか…
そもそも、両方の事象を結びつけるのはあの赤羽明日香しか居ないのだしな。
そして赤羽明日香の消息は今もって不明だ」
深くため息をついたシマザキは、再び画面に向いて”クピドー”に言った。
「ともかく、今後も引き続き調査を継続せよ。いいな」
『了解しました』
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”クピドー”、こと桜木亜美の仮身体は”パレス”との通信を終えた。
その仮身体には『ラライ・システム』の管理者であるラライ5-7-2という人工知性体が仮人格として入り込み、”機関”へ偽の情報を送り込んでいた。
当然、竜司達がこの数日で多摩市内に出歩いているという映像もフェイクである。
そして、その仮身体を経由して
”機関”の動きをオクウミ達が逐一把握していた。
「ふむ、やはり動いたか」
オクウミが、『イヴァゥト-86』にある時空探査局・第一中央市駐在支部の執務室にて、桜木亜美の仮身体に対するモニター情報を監視しながら呟いた。
『はい、こちらは今の所、全て予測通りの動きを示しています』
副官のイゴル・ウェインが応えた。
彼は今、地球日本の多摩市上空にある
『レイウァ計画司令センター』に詰めている。
”バイオメカノイド”襲来が始まった時から、
このセンターでも全地球上からの情報収集を活発化させていた。
「しかし予想外の行動を取られないとも限らないだろう。
特に、”機関”のさらに背後にいると目される
”レプティリアン”連中や”惑星連盟”とやらの全貌を
我々はまだ把握しきれていないのだからな」
『ええ、そうですね』
イゴルは頷き、さらに続けて言った。
『我々はこれから、赤羽夫妻のいる公安調査庁や内閣情報調査室と共同で、”機関”へのカウンターとなる『ミヨイ・タミアラ』作戦を展開する事となります。
これが成功すれば、”機関”の最深部までを全て抉り出す事が出来るでしょう』
「うむ、(火之題)の成否はそれに掛かっているからな、宜しく頼んだぞ」
『はい!お任せ下さい!』
その時、イゴルの方とは別の通信が、オクウミの通信パネルに入ってきた。
「んん…どこからだ。
…おっ、シアラからか!!」
すぐにオクウミは、シアラへの回線を開いた。
『オクウミ支部長、ただいま帰って参りました』
すぐにシアラの声が入ってくる。
「長旅、お疲れ様だったな。
それで、首尾はどうだ?入手は出来たのか?」
『はい、オクウミ支部長!
例のファージ、入手に成功しました!!』
シアラの珍しく上ずったような声が執務室に響いた。
「おっ!でかしたぞ!!
それで、今どこに居るんだ!?」
『はい、今は『イヴァゥト-86』の第一中央市宇宙港です。
ファージを満載した貨物艇数隻も一緒です』
それを聞いたオクウミが、第一宇宙港が見える窓の方まで駆け寄った。
確かに、シアラ達が乗っている高速宇宙船や貨物艇らしき船が着陸しているのが見える。
「よし、それでは直ちに太陽-地球系L3ポイントまで急行し、
宇宙艦隊第278任務部隊と合流するんだ!
シルヴィオス中将にはこちらから連絡を入れておくから、急げ!!」
『了解しました!直ちに急行致します』
通信を切ったオクウミは、執務室のシートへゆっくりと深く腰掛けた。
「…これでようやく舞台も役者も揃い、決戦の準備は出来たな。
あとは本番を待つだけか」
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シアラの乗った高速宇宙船らが太陽-地球系L3ポイント
(地球の”機関”では反地球ポイントと呼称している)へとワープし、
その宙域にて設営された仮設陣営に駐留する
銀河外縁宇宙艦隊第278任務部隊へと合流した。
シアラは、直ちにシルヴィオス提督が詰めている艦隊司令部へと出頭し、
彼女が運んできた”バイオメカニカルプラント”、すなわち”バイオメカノイド”に対抗可能な兵器となる星間植物の果実”ファージ”について、
シルヴィオス提督へと説明した。
シルヴィオス提督は、直ちに第278任務部隊全隊へ指令を発し、
艦隊全艦にこの”ファージ”を標準汎用グレードから交換して航宙魚雷に搭載するよう通達を出した。
優秀な後方支援部隊および艦船要員達の努力、またシアラの親であり
”バイオメカニカルプラント”を栽培して特性を知悉しているサリサの指導で、
”ファージ”への換装はたった半日で完了させる事が出来た。
そして、今や地球から約30AU(天文単位)余りにまで接近しつつある
”バイオメカノイド”群の本隊がいる宙域へ向けて
ついに第278任務部隊を再発進させたのである。
第278任務部隊の旗艦である戦艦ヴァラクダータの艦橋では、
シルヴィオス提督以下艦隊幕僚団と、シアラ達が指定されたシートに座っていた。
「私達、何だか場違いなような気もするのだけれど…」
いつになくそわそわした神崎が、そう呟く。
「えぇー、特等席でこの一大スペクタクルショーを見れるんだから良いじゃん!
役得よ役得⭐︎」
神崎の隣に座っている山科が、うきうきした表情で舌をぺろっと出した。
「うむ、まあ艦隊旗艦であれば特に危険は少ないだろうし
逆に言えば、私達は持ってきたあのファージがちゃんと効果を発揮するのか、
この作戦の提案者として見届ける責任があるな」
シアラが静かにそう言うと、神崎も頷かざるを得ない。
「そうね、確かに…」
「しかし、私は目下のところ、別の事が心配だ」
と、シアラは神崎とは反対側の方をジロッと見た。
「おほーー!!
いやー、軍艦に乗るなんて、千年以上前にやった兵役の時以来だしねー!
しかも旗艦の艦橋に入れるなんて、絶対無かったしさー!」
と、サリサが座っているシートから暴れ出さんばかりの勢いではしゃいでいた。
「あらあら、そんなに動いたら士官の方達にご迷惑でしょう」
隣に座っているミアナも、口では注意しながら大して動こうとしない。
「おおー!あれ見てよーー!
最新鋭の超長距離砲艦じゃなーい!?
すげー!私は生で見るの初めてだよーー!!」
「おおおー、すげーー!!」
山科も、サリサと一緒になってはしゃいでいる。
それを横目で見たシアラと神崎が、はぁっと深くため息をついた。
「これより、ワープを開始します!
目的座標、海王星軌道外縁カイパーベルト、29-51-33宙域!」
航法士官が宣言すると、シルヴィオス提督がうむと頷いた。
「ワープ、開始!!」
士官が叫ぶのと同時に、艦橋の大スクリーン一杯に星虹が出現した。
「今度こそ、リベンジに赴こうではないか!!」
シルヴィオス提督が星虹の中心を見つめながら、厳かにそう宣言した。




