3-2 宇宙人
「......なるほど、つまりこの女性は宇宙人と言いたいのね?」
神崎が腕を組んで少女の顔を眺めた。
「ぱっと見、私達とそんなに違った風には見えないけど」
そう言われて、竜司も改めて少女の顔を観察する。
確かに彼女の顔は、地球人というより日本人とあまり変わりないような顔立ちをしている。
「そもそも、宇宙人というのは宇宙に住む人類の事を指すの。
その定義に厳密に従うなら地球人だって宇宙人の一種ね。
だから、もし地球人以外の宇宙人を指したいのであれば
地球とは異なる星に住む人類、すなわち異星人と呼称するのがより正確でしょう」
唐突に神崎の講義が始まった。
「歴史上の記録で最初にれっきとした人間型の異星人と遭遇した、と主張した人物はポーランド系アメリカ人のジョージ・アダムスキーと言われているわ。彼は1952年にいわゆる空飛ぶ円盤を目撃し、その搭乗員である金星人と、いわゆる第三次接近遭遇を果たしたとして翌1953年に「空飛ぶ円盤同乗記」を出版して有名になったの。彼が遭遇したとされる金星人は、白人によく似た風貌で灰緑の瞳の目を持ち、美形だったとされているわね。しかし彼の証言は、彼が昔に書いていたSF小説の内容とそっくりだった為にただのプロットの焼き増しではないかと批判されたし、また彼が撮影したUFOの写真や証拠にしても捏造の跡がありありと残っていたそうよ。特に有名なアダムスキー型UFOについては、シアーズという米国の会社で当時生産販売されていたランタンをそのまま使って細い糸で吊った物を撮影しただけだった。しかしながら、彼がいわゆるUFOコンタクティとして有名になった後には、似たような自称コンタクティによるUFOや宇宙人の目撃証言が世界中から挙がるようになった訳ね。しかしそのどれもが、証拠不十分だったり捏造や誤認だったりで、本物だと断定出来るコンタクティの目撃事例は、今に至るまでに一つとして存在していないのよ......」
「ほぇー......」
「な、何......?いきなり語りだしたわね......」
東雲も山科も目が点になっている。
何しろ、竜司も含めてオカルト研の部員は実のところ、ちゃんとUFOとかを真面目に調べようとはしていなかったのである。
なのにいきなり、しかもオカルト研とは水と油の関係な筈だった神崎が
オカルトど真ん中のトピックであるUFOと宇宙人について滔々と語りだしたのだ。
これをビックリしないではいられないであろう。
「神崎、お前もしかして本当はオカルトに興味があr」
「ちょっと何を言っているのか分からないわね」
神崎が竜司をキッと睨みつけ、竜司は言いかけた言葉を慌てて呑み込んだ。
「神崎さんって、確か入学したての頃にオカルト研に入りかけてたんだっけ?」
「そーだよ、だけど当時の部長がふざけたせいで神崎が怒って入部を取りやめたんだけどね」
東雲と山科が、神崎に聞こえないようにコソコソと話した。
「でもこの様子だと、今改めてオカルト研とかに入ってもおかしくなさそうじゃん?」
「どーだろ。神崎も頑固だからなぁ、オカルト研を生徒会権限で潰そうとしてたくらいだし」
「それで新しいオカルト研を立ち上げ直すつもりだったりして」
「うぉーーー!!由宇姉ちゃん、博識で凄いのですー!!
「......わくわく」
反対に、春乃と沙結はキラキラと目を輝かせて神崎を尊敬の目で見つめている。
そりゃそうだ、竜司ですらオカルトについては今まで適当な事しか妹達に話した事が無かったのだ。
「由宇姉ちゃん!もっと知りたいのだー!!」
「もっと、宇宙人の事、話して」
春乃と沙結は、神崎の事を昔から由宇姉ちゃんと名前で呼んでいて親しくしている。
神崎もこの二人に対しては普段から優しく接していて、今も二人に向かって微笑んでから講義を再開した。
「ところが70年代後半に入ると、コンタクティとは別の種類のUFOや宇宙人の目撃事例が報告されるようになったの。それがいわゆる「グレイ」タイプの宇宙人で、子供のように小さい種類と大人サイズの種類とに大別されるわ。原因としては、恐らくその当時に公開されたSF映画の「未知との遭遇」に出てくる異星人が「グレイ」にそっくりだったから、映画を見た人達に影響したとも言われているけど、それよりずっと昔の有名な「ロズウェル事件」でも似たような宇宙人の目撃記録があったり、その後も幾つかの著名なUFO目撃事例の中にもそうした宇宙人が居たとされているので、本当の起源についてはよく分かっていないわ。しかしこれについても、およそ殆どの目撃事例については本当だと断定はされていないのね。それ以外にも、実は色々な形態の宇宙人についての目撃例が世界中で報告されているわ。例えば鳥型宇宙人だとか爬虫類型宇宙人、さらにはゴムボールの集合体みたいな知性体やタコやイカみたいな造形の怪物、ロボットかアンドロイドのようなUFO搭乗員の目撃例もあったりするわ。宇宙人との遭遇で有名な事例としては、1955年のポプキンスビル事件が挙げられるでしょう。アメリカのポプキンスビルと言う村で夜にとある一家が遭遇した宇宙人は、尖った大きな耳に大きく爛々と光る目、毛の無いサルのような銀色の身体で飛び跳ねながら一家に襲いかかり、散弾銃で幾ら撃っても効き目は無く、その怪物の襲撃は一晩中続いたというわ。更には、同じくアメリカで1952年にフラットウッズという村で遭遇した宇宙人は、身長が3mもあって身体は緑色、スペードのような形の巨大な透明のヘルメットをした修道女のような格好をしていて、オレンジ色に光る巨大な目で睨みつけて悪臭を放ちながらスカート状の足から火を噴きながら空中を飛び回り、鋭いかぎ爪で人々に襲いかかったそうよ」
「あわわわわわわ.......」
「......」春乃も沙結も、いつの間にか俺の背中に引っ付いてガクガク震えている。
気のせいか、神崎はわざと怖い宇宙人の話をして二人を脅かそうとしているようだ......
「ううぇー......まさにスターウォーズの世界よね」
「ふぅむ、じゃあこの女の子みたいな、日本人というか人間に似た宇宙人については他に目撃例が無いのか?」
竜司が神崎の話を遮って質問する。
「まるっきり無いとも言い切れないわ、先に話した自称コンタクティとされる人達の中にも、
東洋系の異星人と会ったという証言は幾つか存在しているの。
でも大概は、自ら設立した新興宗教や団体に信じ込ませる為の捏造やホラの類だと言われているわね」
「ふーん、じゃあこの子は超々レアケースって事じゃん!だってやっぱり今まで目撃例が無いって事でしょ?」
何か良い事でも思いついたかのように山科が食い気味に訊いてくる。
「おいおい、お前もしかして雑誌ムムーにでも目撃談を売ろうとでもしてんじゃねーだろな」
「あらーバレた?てへぺろ★」
「ちょっと待って。そもそもこの女性が宇宙人もとい異星人であるという決定的な証拠はどこにもないわ。
神崎は少女の身体を慎重に観察しながら言った。
「まぁ、確かに......手も足も2本ずつ、指の数も形も人間と同じだし、顔立ちだって俺らとそう変わりゃしないな」
「髪の毛も綺麗なロングの黒だけど、それこそ日本人の私達と変わらないよねぇ」
「耳がとんがってたりしたなら良かったのになー」
「はむ、足の指の数も同じ」
「そりゃ持ち物や道具の技術レベルは大したもんだが......
例えば、これらは宇宙人からの貰い物です!ってんなら話は別だしな」
東雲もずっと空中に投影されたままのホログラムを見てため息をついた。
「んん、おやおやーー!?」
春乃が何かに気付いたようだ。
「この女の子の髪......光に透かすと不思議な紫?虹色?に輝くみたいだぞー?」
と言いながら、春乃が少女の髪を引っ張って電灯に透かしたり束ねたりしてみる。
「へぇ?マジでか」
と言いながら、皆が一斉に少女の髪をめいめいに引っ張り合った。
「ん、んんぅ......」
と、少女がかすかにうめき声を上げた。
どうやら髪を引っ張る刺激で、目を覚まそうとしているようだ。
「お、おい!!女の子が目を覚ましそうだ!?」
竜司や神崎達が、慌てて髪を触るのを止めて少し引き、遠巻きに彼女が目覚めるのを待った。
「う、う、ううぅん......」
やがて、少女の目がぱちりと開いたが、そのまま少しぼんやりした表情で天井を見つめている。
しかし少女が首を少し持ち上げて周囲を見回し始めると、その表情がみるみる青ざめたようになった。
「|~||==|||-|=|-!!!」
少女はいきなり何かを叫び、まるでパニクったように両手をバタバタし始めた。
「うぉう!!」「へ?何語?」
少女以外の全員が驚く間もなく、少女がその場で急に立ち上がって
ふらつく身体にも関わらず、いつの間にか手にした銃らしき物を振り回した。
「きゃっ!!」
「わっわっ!!っちょ!危ねぇって!!」
「い、家の中で発砲は厳禁なのだー!!家に穴が空くのだー!!」
「す、ストップ!!ストップ!!ど、どんどきるみーぷりーず!!」
「-=||-||=~~|||-|=!!」
しかし神崎は、少女のその行動に一切怯まずに少女の目を直視していた。
「-|||-=、-=||-||=~~|||-|=!!」
少女も負けじと神崎に銃口を向けて睨みつける。
しばらくの間睨みあいを続けていたが、少女の身体がふいにふらついた。
それを見た神崎が、ゆっくりと少女に近づく。
「っく!!-=||-||=~~|||-|=!!」
なおも少女は気合で神崎を睨みつけていたが、やがて神崎がゆっくりと彼女の手と銃の上に自らの手を添えると
気疲れを起こしたのか、少女は神崎に銃を預けたまま、その場にくずおれてしまった。
くぅ、と可愛らしい音が少女の腹から鳴った。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
同じ頃、多摩市内外のあちこちに奇妙な黒塗りの車が続々と乗り込みつつあった。
搭乗しているのは皆、国籍不明の東洋系とおぼしきスーツ姿の男達である。
一見してただのビジネスマンのようにも見えるが
注意深く観察すれば、懐に何か重い物を隠し持っているようだったし
歩く様も立ち振る舞いも、まるでよく訓練された軍人のようにも見えなくもない。
彼らは一様に、通信機器らしき物を手にして互いに連絡を取り合いながら
ほうぼうに散って行った。
また、彼らを追うように昆虫サイズほどのドローンが幾つも低空を飛び始めたが
もうすっかり夜になった住宅街では、誰もその存在に気付く事は無かった。
彼らの動きとは別に、赤羽家の周囲のあちこちで不思議な光が灯り、飛び回りつつあった。
それはさながら、小型のUFOや妖精のようでもあり、さらにその上空には
竜司が見たという空中基地か空中都市と形容すべきものが、その機能を働かせ始めていた。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
「おまたせなのだー!!
春乃特製、ほっかほかのホウレン草と鳥そぼろのおじやなのだー!
といっても、残り物を混ぜて味付けしただけなのでちょっと物足りないかもなー」
と言って、春乃はおじやを入れた土鍋を持ってきた。
その時までには少女も気が落ち着いたようで、部屋の隅っこで体育座りをしている。
しかし、さっきまでは東雲達が散らかした道具類を少女が必死でかき集めながら、涙をぽろぽろ流していたのだった。
それを見て東雲達が必死に謝り、神崎が少女の背に手をやってさすりながらなだめていた。
とりあえず道具類は全てしまわれ、部屋は片付いたようだ。
土鍋を置く為に布団類は部屋の隅にずらし、折りたたみの簡易テーブルを据えた。
「おいでおいで?」
少女は依然として言葉が通じず、竜司達にも何を喋っているのかは分からないままだったが
何とか身振り手振りで少女をテーブルの前に座らせた。
「これはー、こうやってたべるんだぞー?」
と言って春乃がお匙を使って、おじやを食べる真似をする。
そして少女の手にお匙を渡すと、少女は少しためらった後に
くんくんと土鍋の中の匂いを嗅いで、それから恐る恐るおじやを口に入れてみる。
「......!☆!!」
急に目を輝かせたようになった少女は、そのまま黙々とおじやを食べ始めた。
「おおーー!お口に合いましたみたいだなー!!
良かったらもっと作るぞー!!」
「おっ、春乃の作る料理が宇宙一美味いと証明されたな」
「えへへー」
と春乃も少女を見て微笑んだ。
少女はおじやを食べ終わると、満足そうにしばらく目を閉じていたが
やがて、覚悟を決めたような表情で頷いてから
懐から取り出したチョーカーのような銀色の帯を首に装着した。
それから少女は、竜司達の方を見据えて口を開いた。
『ん"、ん、あ、ア==あ=あ......聞ごえる"か』
「うぇえ!?」
「に、日本語喋れたの!?」
「いいえ......これは、翻訳機ね」
全員が驚く中、神崎だけがその機能を正確に言い当てる。
『そ、そ=、そそウだ。ごれは、私の"言葉バを、機械=でげ現地ちの"言語体系ィにほ翻訳してヰる。
い=イまは不安定だが、そのウチに調整されル』
「すげぇ......正にオーバーテクノロジーってヤツだ」
『......!!
いマ、私の-||=-|||-|||=で確認しだ。
この言語は21世紀前半の地球日本語、で間違いなイい"な」
「な、何だって?」
「おい難聴主人公、地球日本語ってのは間違いなく聞こえたろうが」
「っていうか、21世紀前半って言い方が何とも不穏ね......」
「その通りよ。間違いないわ」
神崎が頷いて、少女の顔を見据えた。
『という事は、ココは地球の、に日本で間違いなイな?』
「間違いないわ」
『西暦、と言う"のだったか=は、何年ダ?』
「今は西暦201X年4月14日よ」
『うム......
よ=良かッた、本当に、良かった......ウっ』
と、少女が再び大粒の涙を流して泣き始めた。
「えっ!?だ、大丈夫!?身体のどこかが具合悪いのかしら?」
「ま、まさかさっきのおじやかー!?」
「多分それは無いから安心しろ春乃」
『と=と取り乱してすまない......
いや、嬉しかっタのだ。ついに地球に到着出来だノ"だ......』
「それはつまり、貴方はこの地球の外から来たという事かしら?」
「やっぱり宇宙人だったか」
「取り乱す程って事は、やっぱり地球へは長旅だったのかねぇ」
「ねえねえ、どこの星から来たのだー?」
『あ、あ=あ、その事はいやまダ君達には詳しくは話せないのだ。
それよりモ、今日は助けてくれ"て本当にありがとウ。
食事も、美味しかっタ』
「お口に合って良かったのですー!」
「それは気にしなくても大丈夫よ」
「何で神崎が代弁してんだよ……お前あの時居なかっただろ」
「東雲だって人の事言えないじゃん、周り見てただけだし」
「んだとー!?山科だって赤羽が女の子おんぶしてる後ろにひっついてただけだろーが!」
「違いますぅーちゃんと支えてあげてたんですぅーラッキースケベされないようにねー」
「お前らギャーギャーうるせぇよ......喧嘩なら部屋の外でしてくれ。
そういや何でアンタ、あの古墳の中で寝てたんだ?」
『私の名前はアンタではない。そうだ、自己紹介が遅れた。
私はシアラという』
「シアラ......」
竜司はその名前を反芻する。
「っと!そうだ、俺らも自己紹介するか!!
俺は赤羽竜司、竜司って呼んでくれ!」
竜司に続いて、神崎達も次々と自己紹介し始めた。
「シアラさん、私は神崎由宇。気軽に由宇と呼んでくれて構わないわ」
「俺は東雲順一郎ってんだ、宜しくな」
「はいはーい!私は山科詩緒里でーす!!よろしくね☆」
「わたしは赤羽春乃、このにーちゃんの妹なのだー!よろしくなのだー!」
「赤羽沙結......お兄の妹で春ねえの妹。よろしくです」
『よろしく。皆も私の事はシアラと呼んで欲しイ』
「おう、よろしく。
それで改めて訊くけど、シアラはあの古墳の中で何やってたんだ?」
『先程も言ったが、今ココで詳しく明かす事は出来ナい。
今現在、君達に敵意ば無イと言う事は分かったが
まだ君達ヲ完全イ信頼できルという材料が乏シイ。
だから今はおおよその事しカ話せないが......』
「構わないよ。俺達の事をちゃんと信頼出来ると思えるようになったら
その時に話してくれればいいさ」
『そうか......済まナい。
まあ簡単に言うと......私が自分の船でこの地球にやッてきた時に
地球人の軍隊に、攻撃されたノだ』
「な、何だってー!?」
「やっぱり......有り得ない話ではないわね」
神崎はやはり冷静に今の言葉を受け止めたようだ。
「まぁ、確かにSF映画とかではよくあるネタよね。
宇宙人に対抗する宇宙軍とかさー、インディペンデンスデイみたいな」
山科もうんうんと頷く。
「そうか......で、宇宙船が撃墜でもされたのか?」
『まあ完全に壊れた訳ではなイが......しかし私の船は、地球大気圏内に突入しだ後で
”防衛免疫システム”に救われたようだ』
「ぼうえいめん......何だって?」
『防衛免疫システム、だ』
「ごめんなさい、それはどういう物なのか教えてもらえるかしら?」
『ああ、実は地球年にして何百年か何千年という昔に、私達が一度地球に来ていた時期があったのだ。
その防衛免疫システムというのは、その時に設置しておいたものだ。
具体的に言うと詳細は明かせないが、ちょうどこの日本列島を覆うように各地に配備してある。
幾つかの機能を持っていて、その中には味方と識別した存在を救護するものもある。
今回はそれが、恐らく何百年ぶり位に再起動したのではないかな』
「そんなものがこの日本に……」
「もしかしてそれって!赤羽が見たあの幻覚!?」
「そうだー!お兄ちゃんが普段から見てるって言ってた妄想が現実化したのかー?」
「妄想じゃねーし……
それって空中都市とか基地みたいな格好してるのか?」
赤羽が問うと、シアラはそうだと頷いた。
「やっぱり現実に存在していたのか……ほっとしたぜ」
「良かったね〜ヤク中疑惑が晴れて」
「お前らいつからそんな疑惑を……」
『ほほう、これは面白いな。
このシステムの類は、普段は原住民に見られないように分子の固有振動数を変化させたりして
不可視化を行っているのだが。恐らく不可視化物を見る事の出来る特異体質なのだだろうな。
そうだ、具体的にどういうものかを皆にも少し見せる事が出来るぞ。
ここからシステムに介入して、この空中投影器で表示を……っと、むむ?』
「どうしたの?」
『ふむ、現在新たにシステムに何かが引っ掛かったようだ。
このシステムの主機能は、味方に対して敵意を持った存在を排除する事だ』
「ええっ!?敵って?何者なんだ!?」
『それは分からぬ。この惑星の現在の情勢は全く知らないのでな。
しかし具体的に言えば、システムは今の我々を味方と見なし、我々を害しようと思考し行動する勢力を敵と捉える。
履歴も含めてみると、私の船を攻撃した勢力と繋がりがあるようだ。
それに、お前達が私を連れて古墳を去った直後に同じ連中が古墳に殺到していたようだな』
「もしかしてそれって……あの黒尽くめの軍隊みたいな人達の事かしら。
一応警察に通報しておいたけど、どうなったことやら」
『おっ、システムが動き始めたな』
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
ドローンなど無人機やロボットをも駆使して、さり気なく多摩市内外で活動をし始めたスーツ姿の男達だが
いきなり互いの通信が不能になった。
「おい!どうした!こちらウルヴァリン!サイクロプス応答しろ!!」
「ダメだ、CQとも連絡が途絶した」
すると、飛んでいたドローン類が次々と墜落し、あるいは消息を絶ち始めた。
「空中に何かいるぞ!?
各員、反重力キャンセルブラスター使用を許可する。
アンノウンを撃ち落とせ!!」
隊長と思しき男の周りで何人かのスーツ姿の男達が奇妙な形状の銃らしきものを空中に向かって構える。
「偏光グラスで補足しました!右2時の方向に何か巨大なものが!!」
「よし、構え!撃て!!」
男達がその武器で、人間の目には見えない何かを次々に照射した。
しかし、空の向こう側には何も変化が感じられない。
と、いきなり空中から、何か鞭のようなものが垂れ下がって来たかと思うと
男達の武器を次々ひったくり始めた。
「うわっ!持ってかれたぞ!!」
続いて不思議な音が空中から鳴り響く。
「ぐはぁっっ!!!何だコレは……音が……痺れる……」
男達はバタバタと倒れていく、しかしその近くを通った住民には特段変わった様子は見られない。
「指向性……音波兵器なのか……?」
各地で男達が倒れていくのを見た住民達が救急車や警察を呼んだお陰で
街のあちこちがちょっとした騒ぎになっていった。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
竜司達は、これらの状況をシアラが投影したホログラムで一部始終見ていた。
「ほえー、あのウネウネ?が凄かったのですー!」
「大したものね……」
「なるほど、確かにシアラさんが宇宙人だって事がよく分かったよ」
「しっかし、あの連中って一体何者なのかしらねー?」
「私にも見当がつかないわ。でも武器の技術レベルから言っても
超大国の政府や軍が絡んでいても何ら不思議じゃないわね。
シアラさん、何かご存知かしら?」
『いや……私にもよく分からないが……うむ……』
シアラは、ホログラムを見ながら何かを考えているようだった。




