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18-4  予知の内容

「やー、ここまで来ると

 何となく、帰ってきたぞーっって感じするよねー」




”ヤマトクニ”艦隊が”バイオメカノイド”と会敵した時とほぼ同時刻。


高速宇宙船で星門ゲートまで突っ切り、『イヴァウト-86』の第一中央市郊外にある宇宙港に降り立った竜司達は、その場で天を仰ぎながら思い切り深呼吸した。


「ぷはぁーっ。

 いやぁ、高速宇宙船は早くて良いんだけどさ、

 今までの宇宙船に比べたらちょっと狭かったよな」

首をコキコキ言わせながら、竜司が感想を述べる。


「あら赤羽くん、そんな事を言ってはいけないわ。

 もう地球の飛行機とか電車とかには乗れなくなってしまうわね。

 この船よりも格段に狭いわよ」

神崎が微笑みながら返した。


「確かにそうだよなぁ、俺も鉄オタとして

 電車が狭いだなんて今まで思った事無かったけど

 でも今、日本の電車に乗ったら狭いとか思っちまうんだろうなぁ」

東雲が同意するように言った。

「まぁ鉄オタ的には、それもまたイイ!!」


堂々とサムズアップする東雲に、山科があきれる。

「まったくオタはこれだからさぁ…

 そんで、これからどーすんだっけ?」


山科の質問に、シアラが答えた。

「うむ、まずあっちにある時空探査局の第一中央市駐在支部に向かい、

 現在の状況を支部長からレクチャーされる事になっている」


シアラが指差す方向に、煌びやかな白亜と瑠璃の建物群が見えた。


「はぇー、なんか前にここへ寄った時よりも

 もっと建物が一杯立ってる気がするんだけど」

山科が、手を日よけ代わりにして眉の上に当てながらそちらの方を見やった。


「それだけじゃねーぞ。

 なんかもう見渡す限りあっちこっちの平野が切り開かれて

 東京並みの大都市がそこかしこに作られてるみてーだ」

竜司が『イヴァウト-86』の対蹠点方向を見上げながら言う。




通商結節体ゲートワールドの一種であるこの『イヴァウト-86』は、

例えるならくり抜かれた球体状空洞の内側に人が住める地面があり、

重力は空洞の中心から反対方向に発生している。

なので、ちょうど地球を裏表ひっくりかえしたような感じで

天井側にも土地があり、人々が住む街が存在するのだ。


この『イヴァウト-86』は直径1000kmほどなので、そのスケールは

天井側の土地がまるで宇宙に浮かんでいるように錯覚するほど大きい。


「よくは聞いていないが、確かもうここの人口は1億人を超えてるはずだ。

 当然、全員が地球日本への移住希望らしいが…まあ粗方振り落とされるだろうけどな」

「いちおく!」

「マジかよ…もうそんなに来てるのか」


そう言えば、この宇宙港も差し渡し数十km四方はあるが

様々な宇宙船が数多く駐機していて、既に満杯状態なのだ。

大半が全長数百m位の小型船ばかりなのだが

中には全長数kmほどもありそうな大型輸送船なども停泊している。




「ところで、余はいったんココでお別れじゃ」

と、今まで喋らなかったアルウィオネがそう告げた。


「え!?マジで?」

「何と!」

「えー、別れちゃうんー」

「あら、それは残念ですわ」

と、めいめいが残念そうに言った。


「うむ、済まんな。

 じゃが、恐らく時空探査局辺りに余の追っ手が潜んでいるやも知れぬでな。

 バレぬうちに逃げないといけぬわ」

やれやれとばかりに首をすくめて横に振るアルウィオネ。


「っていうかそれはもういい加減に観念した方がよろしいのでは…」

とシアラがたしなめた。

「ふっ、余にはまだやらぬといかん事があるのでな」


それを聞いた神崎は、ふと行きの貨客船上で、アルウィオネが謎の男性と話していた時の事を思い出した。

あの時、アルウィオネは”例のもの”を探しているという事が神崎に分かった。

しかしその”例のもの”とは一体何なのか?は、今に至るまで全く手がかりさえ掴めないままだったのだ。


それを見い出すまでは、アルウィオネ様に張り付いて観察していた方が良かったのだけれど…と神崎は考えていたのだが、ここでタイムリミットとなりそうだった。




「それでは、アルウィオネ様。お元気で」

「ああ、皆も息災でな。

 というか、案外またすぐに会えるような気がするわい」


かっかっか、とあっけらかんとした表情でアルウィオネが笑うので

竜司達も、案外そうなのかもという気にさせられる。


何しろ、皇族といえば本来は雲よりも遥か上にいるような人物であるはずだが

実際の当人は、全く気負うような所もなく実に気さくで、

一緒にいてとても楽しかったと全員が感じていた。


「やれやれ、そんな悲しそうな顔をするな皆の衆。

 余も離れ難くなるではないか」

「いや、でも俺、本当にアルウィオネ様と居て楽しかったんですよ。

 そりゃ寂しいですよ」

「ええ、私もこんな素晴らしい方とご一緒に旅行出来て、光栄でしたわ」

「全くですな、俺も赤羽と同意見です」

「いやほんとに楽しかったよー」


それぞれに別れの言葉を言い合い、それからアルウィオネは

手近に居た移動用フロート台車型ドロイドに乗った。


「それじゃーのー!!」

アルウィオネは竜司達に向かってブンブンと手を振りながらも、

台車に乗ってたちまち遠くへと走り去って行った。




「いやー、面白い人だったなぁ」

「確かにな、あれでも皇族だと言うのがいまだに信じられんが」

「そうだよねー、あんなに気さくだったし」

「でも、またすぐに会えそうなのがまた不思議な感じね」


「お久しぶりです皆さん」

と、そこに若い男が声を掛けた。


「あ、イゴルさん」

「どうも」

イゴルは、どうやら先程から竜司達の近くにまでやって来ていたようだが

竜司達がアルウィオネと別れの挨拶を済ませるまで、少し離れた所で控えていたようだ。




「早速ですが、皆さんこちらにどうぞ。

 時空探査局の駐在支部へとご案内します」




- - - - - - - - - -




イゴルに案内された先の時空探査局・第一中央市駐在支部は

円筒形のオレンジ色をした建物だった。




「こちらでオクウミ支部長がお待ちです」

竜司達が建物に入り、

何階層か上がったフロアで辿り着いた部屋は会議室のようだ。


中に入ると、高い天井からシンプルな照明で照らされた円卓に、

既に二人の人物が座っていた。

竜司達は、その二人を見て驚く。


「オクウミさん…に

 あれ!?ねーちゃん!?」


円卓の真正面にはオクウミが、

そして彼女のそばには赤羽明日香が座っていたのだ。




「お久しぶり、竜司、由宇ちゃん、東雲くん、山科さん。

 旅行はどうだった?」

努めて明るい声を竜司達に掛ける明日香だったが、

その顔は若干青白いような感じだ。


「あ、うん。楽しかったよ。

 っていうかそれよりねーちゃん、大丈夫かよ!?」


竜司が心配になるのももっともで、明日香は会議室の椅子ではなく

自動式の車イスに座っていたからだ。


「え?あ、あぁ私は大丈夫よ…」

とても大丈夫そうには見えない様子で明日香が言う。


「いや、確かに明日香さんはちょっと大変な事になってたのは事実だが」

と、そこに隣のオクウミが吃驚するような発言をした。


「うぇ!?や、やっぱりかよ!!

 ねーちゃん、今はまだ寝てた方が…」

「だ、大丈夫よ竜司。

 今は体力が少し落ちてしまっているからこんな感じだけれど、

 すぐに回復するわよ。

 それよりも…」

と、慌てる竜司をなだめるようにして明日香が言いながら

オクウミの方を見やった。


「うむ、ではさっそく本題に入ろうか。

 まずは全員、円卓に着席してくれ」




全員が円卓の周りに配された椅子に座ると、

オクウミがンンッと軽く咳払いをしてから話し始めた。


「そもそも明日香さんが予知能力プリコグを有しているというのは

 皆も知っての通りだと思うが」


全員が頷く。

とは言っても、実際に竜司達がその話を聞かされたのはついこの前、

桜木の父親を”機関”の秘密地下都市から救出する直前の事だったのだ。


しかし彼女の予知なくしては桜木の父親の居場所を正確に掴む事は出来なかっただろうし、またその予知のお陰で、救出作成の成功確率が格段に上がったのも確かなのである。


「実は以前より、明日香さんは例の”バイオメカノイド”が地球を急襲するという予知夢を見ていたのだ。

 しかし、実際その急襲が行われる未来の日付が分からなかった」


そう話しながら、オクウミは円卓の中央にある3Dディスプレイを立ち上げる。

ディスプレイには、先般に明日香が見た予知夢の記録映像が映し出され始めた。


「これを見たまえ。

 片側は、明日香さんが直接見た予知映像だ。

 つい今朝がた、彼女が見た夢をそのまま”ドリームモニター”にて抽出してある」


そちらには、地球軌道上からのカットと思しき映像が始まり

しばらく経つと、漆黒の宇宙の彼方から

例のぐちゃぐちゃした灰色の機械の塊のようなものが、

無数に地球へと接近しつつあるのが見て取れた。


次のカットでは、地球上のどこかの街と思しき景色だったが

青い空の彼方から、やはり無数の気持ち悪い姿をした機械群が次々と降下しつつ

蜂が襲い掛かるようにして街を次々と攻撃していく様が映し出されていく。


「うわぁ…」

「何てこと…」

竜司達は映像に絶句するしかない。


「こ、こんなのをねーちゃんはしょっちゅう夢に見てたのかよ…」

「幾ら何でも、平気では居られないのでは…」

神崎も心配そうに尋ねた。

「竜司、由宇ちゃん、もう慣れたから平気よ」


平気そうに見えない顔色で笑うので、

神崎はますます心配そうに明日香を見つめた。




オクウミは、さらにその映像の隣を見るように促した。


「こいつはジャローデク57・マスィトルプト・ツリーというもので

 要は未来のいつの時点の映像なのかを図示する事ができるものだ」


その何とかツリーは一見するとアイスクリーム用コーンのような逆さ円錐状の立体図で、その中に幾つものスピンしかけたラインが何本も入っている。

ラインは隣のラインと有機的に連なり、まるで木の枝のようだ。

しかし、竜司達には一体何を意味する図形や表示なのかはさっぱり分からない。


「これを読み解くのには少々コツがいる。

 なので、初見の君達が分からないのも道理だろう」

オクウミは竜司達に向かって頷いた。


「で、分析結果だけ言うとだ。

 この光景にある出来事は、

 今から約6、7日後に現実のものとなる可能性が高い」


「えっ!?

 って事は、あと一週間後に

 この”バイオメカノイド”が地球を襲うって事かよ!?」

それを聞いた全員に衝撃が走る。


「何と言う事…」

「一週間後って、2学期が始まる直前じゃん」

「学校だけピンポイントで破壊してくれれば十分だが」

「いやいや冗談言ってる場合じゃないでしょー」


「ふむ、まぁ私も一応、野猿高校の教員でもあるからして

 無事に2学期を迎えたいものだからな。

 この件は何としても解決せねばならない」

オクウミは腕組みして頷きながら言った。


そう言えばオクウミが竜司達のクラスに、臨時教員として赴任したのは

1学期も後半に入ってからだった。

それからも色々な事がありすぎて、

竜司にはもう遠い昔のように感じられてしまう。




「で、この襲撃への対応策ってもう打ってあるんですか?」

竜司がオクウミに訊いた。


「ああ、既に”ヤマトクニ”軍の1艦隊と数個師団を地球圏外の太陽系空間へと派遣を開始している。

 まず彼らによって、”バイオメカノイド”の大規模群体を一網打尽にする事が出来るだろう」


オクウミの言葉を聞いて、一同はほうっと安堵の溜息をついた。

しかし、神崎だけは不安そうな面持ちだ。


「果たして、それだけで十分なのでしょうか…?」

「ふむ、それはどういう事かね?神崎さん」


神崎は、オクウミの問いに居住まいを少し正した。

「ええと…つまり、その”バイオメカノイド”がいわゆる宇宙艦隊のように

 整然とした行動を取るのならべつなのですが」

と、神崎は考えを整理するように目をくりくりとあちこちに向け、額に手をやりながら言った。


「ほう、それで?」

「つまりですね…もし”バイオメカノイド”が群れでやって来たとしても、

 それぞれが勝手な動きを取るようにしていたら、どうでしょうか?」

「ふむ、なるほどな」


神崎は、円卓中央の3Dディスプレイに映し出された予知夢の映像を指差した。

「あの映像をよく観察していると、明らかにそれぞれの”バイオメカノイド”は

 自由にあちこちを攻撃して回っているように見えます。

 そして、それを統率するような一定のパターンが見られないように思えます」


「…って事はさ、

 神崎ちゃんが言いたいのは、一部の”バイオメカノイド”が群れを離れて

 バラバラに地球へ襲いかかってくるって事?」

山科が首をひねりながら訊いた。


「そう思うわ。

 とすると、艦隊決戦だけで始末がつくようにはならない、と考えられるわ」




「おいおい、それじゃあ宇宙艦隊の意味ないじゃんか!」

竜司が叫んだ。


そこに、先程まで黙って聞いていたオクウミが竜司を手で制した。

「ふむ、神崎さんの推論は見事だった。

 まさにその通りだと我々も考えている」


「それじゃ…」

「いや、実際のところ、我々もかの”バイオメカノイド”の性質については分かっていない点が多くてな。

 正直、群体は群体で機動的に動き回るものだとも推測している」


「なるほど、その場合は宇宙艦隊による攻撃も有用だと」

東雲が頷いた。

「そういう事だ。

 我々『レーウァ計画司令センター』の(火之題)管轄部による予測では、

 ”バイオメカノイド”群体の大方は宇宙艦隊側の策略に乗って、

 そのまま艦隊決戦に突入するだろうが、

 それとは別に群体のおおよそ10~15%ほどが、

 事前に群体を離れて自由行動に移るのではないかと考えている」


「その自由行動を取る”バイオメカノイド”は、どうやって始末するんですか?」

「ああ、もちろんその場合は宇宙艦隊ではなく、天体軍の地表作戦部隊10個師団が相手する事になるだろう」


「ち、地表作戦部隊!?」

「ふふっ、もちろん地球上を戦場にする訳にはいかないから、

 その前段階、つまり地球近傍空間を最終防衛ラインに設定して更にその手前、

 例えば火星や金星や小惑星帯付近でいわゆる狩猟作戦に出る事になるだろう。

 まぁ下手をすれば、月面でも戦わねばならぬ羽目になるかも知れんがね」


その話を側で聞いていた明日香は、以前に見た予知夢を思い起こしていた。

そこでは、”機関”の月面基地が”バイオメカノイド”に攻撃され、

彼女の元上司や同僚らが無残にもやられてしまう状況だった。

しかし現実には、そうなる前に”ヤマトクニ”軍が戦場を制する事になるだろう。




「とにかく、地球に影響が及ばないのなら、それに越した事は無いのだけれど」

神崎がほうっと溜息をついた。


「でもよ、この話を聞かされちゃあさ、居ても立ってもいられねぇよな。

 何だか俺達も何か出来ねえかなとか思うんだけど」

竜司が考え込むようにして言った。


「そうだな、せっかく俺達もこうして能力を手にしている訳だからな」

東雲も、手のひらから小さな炎を断続的に顕現させつつ同意する。


「はいはーい!!

 私は例の”バイオメカノイド”防御兵器カウンターウェポンの開発で参加出来まーす!」

と、山科が元気よく手を挙げた。


「えぇ…ずっりぃなそれ」

竜司と東雲が羨ましそうに山科を見やった。


「ほうほう、君達も参戦したい…と」

オクウミが、片目を瞑って微笑みながら言った。




「ならば、君達もこちらの提案に一枚噛むかね?」


「もちろん!!」

と男衆二人は、オクウミの方に前のめりになりながら叫んだ。

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