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15-6  帝国内旅行・ステージクリア

「はぁあああああ!!」

「っしゃああああ!!」




シアラが前衛に立ち、次々と華麗な剣捌きで目の前に立ち塞がるホブゴブリンの巨躯を次々に斬り伏せていく。

それにスイッチする形で、今度はアルウィオネが魔力を纏わせたレイピアで吸血コウモリの群れを薙ぎ払った。


「すごい綺麗な連携だなぁ…」

「まるで歴戦をくぐり抜けて完全に息をピッタリと合わせた勇者と戦士のコンビね。見事だわ…」

シアラとアルウィオネのコンビネーションは、あたかも一つの有機体のように一繋がりの動作を生み出していて、側から見ていて惚れ惚れとするほどだった。


「たはは、こりゃー私達の出る幕ないねー」

山科はそう言いながら魔法の杖を頭の後ろに回して伸びをした。

「何よりもあのお姫様がめっちゃ楽しそうだもんなぁ」


何しろ、二人とも最初の方こそ竜司達の後ろで後衛に徹していたのだが

段々と前に出るようになり、ついには前衛の竜司やタンク役の東雲を差し置いてどんどん先に進んで行ってしまうようになったのだ。


「まるで今までの憂さを全部晴らすかのような勢いね…皇宮ではこうした遊びは出来なかったのかしら」

「それにシアラも妙にノリノリだしな、意気投合しまくってる感じあるよ」

「こんな二人の邪魔したら無粋ってもんでしょー」

竜司達は、二人の闘いぶりに苦笑するしかなかった。




そうこうする内に、いつしか洞窟の迷宮ダンジョンも最奥部に差し掛かり、目の前にはあからさまに巨大な合わせ扉が立ち塞がっていた。


「ほう…もうこの第2面も終わり、という事かの」

アルウィオネがレイピアを肩に担ぐようにしながら扉を見上げた。

「まあ、そういう事になるでしょうね。

 つまりこの扉の先にステージボスが控えてると思います」


「うむうむ、腕が鳴るのう」

アルウィオネは、先程までずっと戦っていたにも関わらず疲労を一切感じさせない面持ちで、レイピアをぶんぶんと回しつつ体をストレッチするかのように捻った。


しかし彼女が体を捻った時、後ろで控えている竜司達と目が合った。

「あ、あー…

 ええとだな、決してお主達の事を忘れていた訳ではないぞ…」

ばつが悪そうな顔をしてアルウィオネが弁解した。

「え?あーははは、大丈夫ですよ。

 そんな気にしないで下さい」

手を振って否定する竜司だったが、アルウィオネは申し訳なさそうだ。

「余は年甲斐もなくちょっとはしゃぎ過ぎたかもな…」

「アルウィオネ様、顔をお上げ下さい。

 私達は殿下がゲームを楽しんでおられる様を見るだけで十分ですわ」

「いや…そのな」


「まあ良いではありませんか。

 それでは此度のボス攻略では、皆が力を合わせて戦いに臨まれては如何でしょう」

シアラが提案すると、アルウィオネが大きく頷いた。

「おお、そうじゃな!

 それでは皆も一緒になってボスに挑もうではないか!!やるぞー、おー!!」

大仰な口ぶりになったアルウィオネに、竜司達はまたしても苦笑するしかない。




「しかし、この扉ってどうやって開くんだ?」

竜司が手で押し開けようと試みるも、扉はビクともしない。

「では拙者が!!」

東雲が、その超合金ロボのボディを勢いよくぶつけてみたが、結果は同じだった。


「少なくとも人力じゃ無理っぽくない?」

「そうね…」

山科の言葉に、神崎が顎に手を当てて思案する。

「ふむぅ、こういう場合は力押し以外で手段を考えねばならぬのう」

アルウィオネも同じ事を考えているようだ。


「うーん…ん?」

と、俯きながら頭をひねっていた山科が、何かに気づいた。

「何でこんな所に足拭きマットなんてあるんだろ…

 あ!!私、分かったかも」


「え?もしかして開く方法が分かったのか!?」

と竜司が訊いたが、山科は返事もせずにしゃがみ込んだ。

そしてその洞窟の床に敷かれたマットを思い切りよくひっくり返す。


「うへぇ!!ごほっごほっ。

 …やっぱりあった。みーっけ!」

山科はマットをひっくり返した時の土煙に閉口しながら、それでもマットの下に隠されていたあるものを拾い上げた。


「きらーん!」

「鍵か」

「確かに盲点だったわね」


「何でまた鍵がそんな所にあるなんて分かったんだ?」

「全くじゃ、余にはさっぱり分からんかったぞ」

シアラとアルウィオネが同時に首をひねったので、山科はおかしくなってクスッと笑いつつ

「あー、それは文化の違いってヤツっすかねー。

 地球の日本とかじゃ、家の鍵をこういう所に隠したりするのが割とあったりするんですよー」

「確かに、ウチじゃ玄関横の植木鉢の底に置いたりしてるな」

竜司も同意する。

「まあ最近では、防犯上の問題もあってどこの家でもあまりやらなくなっていると思うけど」


「ふむ、勉強になるな。

 というか、我々にとってはあまり常識的な事では無いからこそ、このゲームのデザイナーはこういう仕掛けをしたのだろうな」

「まあこの”帝国”とかじゃ、そもそも家の鍵とか防犯とかあまり考えそうに無いですもんね」




山科が見つけた鍵を、合わせ扉の真ん中に差し込むと

カチっと音がして、次いでギギギギギッと重々しい音を立てつつゆっくりと左右に開いた。


「おおっ…開いたぜ」

竜司は逸る気持ちを抑えながら、扉の陰から慎重に部屋の中に入った。

そのすぐ後ろを、シアラとアルウィオネが付いて来る。

さらにその後ろから東雲と神崎・山科が恐る恐る入っていった。


「典型的な神殿って感じだな…天井高ぇし」

竜司は真上を見上げる。

「ふむ…奥行きもなかなか広そうだ」

シアラは、長剣を中段に構えて警戒しながら部屋の真ん中に向かって進んでいく。

「して、ボスキャラはどこにおるのじゃ?」

アルウィオネも、照明の少ない薄暗がりの神殿内で紅い目を光らせながら周囲を慎重に見回していった。


「ううむ…分からんのう。

 もしかして、空振りやも知れんの?」

アルウィオネがやや気が抜けたようにして構えていたレイピアをだらんと下げた瞬間、


「いや、真上だ!!」

竜司の声に、二人とも瞬時に跳ねるようにして上を向きつつ剣を構え直した。




「…!?」

天井付近は照明も無く、真っ暗闇だったが

その奥の方に何やら巨大なものが蠢く気配がする。


「あれは…何だ!?」

何かが神殿の石柱と石柱の間を動き回っていた。

「触手、いや足だ!!」

その何本もある足が、硬質な音を立てながら石柱にしがみついている。


そして、ギョロッとした8つの光る眼がこちらを向いた。

「分かった!!あいつは大蜘蛛だ!!

 みんな、部屋の隅に散れ!!」


竜司が言うが早いか、その大蜘蛛が一気に真下に向かってゴウっと音を立てて落ちてきた。

そのサイズは全長10mはありそうだ。

「こいつがステージボスか!!

 みんな、蜘蛛の糸に触るんじゃないぞ!!」

しかし大蜘蛛は落ちながら、ほうぼうに向かって白い糸を何本も吹き付けてくる。


「きゃあっ!!」「うわっちょっ!!」

神崎と山科が慌てて部屋の隅に逃げたが、大蜘蛛は二人にターゲットを絞ったらしく次々と二人に向けて白い糸を放ってきた。

「やばいじゃんタゲられてるよ!!」

「こんな柱しかない所では逃げ場所がないわ!!」


大蜘蛛は器用に石柱を掴みながら、林立する石柱の間を掻い潜って正確に二人を狙って来る。

しかも、大蜘蛛の尻からも出ている糸が石柱に絡みつく事によって神殿の中がどんどん迷路のようになっていく。


「これ、ちょっとまずくない!?」

「そうね…徐々に蜘蛛の巣の中に取り込まれていくような感じだわね」

「くそっ、俺達は奴の庭にまんまと誘い込まれちまったってわけか」

「うむ、このままでは逃げ場が無くなるだろうな」


何とか竜司と東雲が二人のそばについて守る格好となっているが、いかんせん剣では糸を切る事ができず、逆に粘つく糸によって剣が絡み取られそうになるほどだ。

シアラとアルウィオネは完全に竜司達の所から遠ざかって見当たらなくなってしまっている。


「そうだ、物理攻撃がダメなら魔法はどうなんだよ!?」

「あっ、そーかそーだね!」

と、今にしてようやく気づいた山科が、魔法の杖を振り上げて呪文を唱えた。


「燃え盛れ!!=-||-===|||-||=|、||=-|-- =||-|=!!」

勢いよく前に振り下ろされた杖の先から、ボウッ!!と火炎の塊が吹き出して、柱と柱の間に張り巡らされた糸がたちまち燃え上がった。


「よっしゃ!!」

「やるわね、山科さん」

「だしょー!?」


それを見ていた神崎も、何かを思いついたのか

自身の武器である長弓の矢の先端に布切れを巻きつけた。

そして近くで糸を燃やしている火に先端をつけ、そうして出来た火矢をあちこちに向かって放つ。


火矢が当たった箇所の糸が、瞬く間に赤く燃え上がった。


「案の定ね…やっぱり糸は燃えやすいわ」

ほうぼうで火矢がつけた火が、その周囲の糸を燃やしていく。


こうして二人が魔法や火矢を飛ばしてあちこちの糸をどんどん燃やし始めると、大蜘蛛がギャアアアアアと金切り声で叫びながら、再び二人の方に向かって突進してきた。


「こうなると形勢逆転かしらね!?」

「かかってこいやぁー!」

先ほどまで逃げる一方だった二人だったが、今度は怖じける事もなく向かって来る大蜘蛛に向かって魔法と火矢で迎撃を始めた。


「グギャアアアアア!?」

流石にひるんだか、大蜘蛛は突進をやめて天井の方に駆け上がっていく。


「ありゃ、逃げてってる?」

二人がいったん攻撃の手を止めて、天井の方を見上げた瞬間。


「グッシャアアアアアアア!!」

真上からまたも物凄い勢いで大蜘蛛が落下して二人に迫ってきた。


「きゃあああ!?」

「うぁわあああ!?」

とっさの事で、迎撃体制を取る事ができずに思わず身をすくめる二人。


「とうっ!!」

とその時、誰かが二人に覆い被さるようにジャンプしてきた。




「へ!?」

いつまで経っても大蜘蛛が襲いかかって来ないので、二人が真上を恐る恐る見上げると

「うぇえええ!?東雲ちゃん!?」

東雲がその超合金ロボの外殻?ごと、バキバキと大蜘蛛の顎門に胴体を噛まれていた。


「だ、大丈夫…この体はマンハイムエレクトロニクス社特製のバンダリウム超合金だから!!」

大蜘蛛に真っ二つにされんばかりに噛まれつつも、二人にウインクしてサムズアップを返す東雲に、二人とも盛大にため息をつく。


「ふーん、良かったねー」

「…心配して損したわ」


それから二人は武器を収めながらくるっと踵を返した。

「もーしゃーないし、この面は捨てだねー」

「そうね、戦略的撤退は必要な事だわ」


「あっ、ねえお二人とも、ちょっと、助けてもらえませんかねぇ…そろそろ飲み込まれそうなんですけど…」

大蜘蛛に齧られるどころか、どんどん足の方から口の中に吸い込まれていく東雲が青ざめる。

「えっと…俺、自力じゃ出られないんですけどぉ…」


「そのバンダィだかゼガだか知らないけど超合金製なんでしょ?知らないけど大丈夫じゃない?知らないけどさ」

「いやその、ガワだけ残して胃の中で溶かされちゃうと思うんですけどぉお…」


「…はぁ、まあ一応助けてもらったわけでもあるし、お返しをしないわけにもいかないわね」

「しゃーない、いっちょやりますか」

やれやれといった感じで大蜘蛛に向き直した二人は、それぞれ武器を構えた。


「じゃっ、同時に行こっか」

「ええ、いつでも良いわよ」

山科と神崎が息を合わせてそれぞれ攻撃を放とうとした瞬間、


「グゥエエエエエ!!」

大蜘蛛が突然、もんどりを打って身悶えしながら口から東雲ごと体液を大量に吐き出した。

そのままガクガクと震えて倒れ、あっという間に動かなくなる。




「は!?どういう事ー!?」

「何が起こったのかしら?」

よく見ると、大蜘蛛の背中に竜司が張り付き

剣を突き立てていた。


「みんな、大丈夫か?」

「約一名のぞいてだいじょーぶ」

床には緑色の粘つく体液まみれになった東雲が転がっている。


「それより、赤羽くんは今までどこに行ってたのかしら?」

「ああ、俺もこの大蜘蛛とおんなじ事が出来ねーかなと思ってさ、陰になる所から石柱を登ってたんだ。

 そこから飛び降りて剣を突き立てれば、硬い外殻の大蜘蛛でも上手い事刺さるんじゃねーかってね。

 まー何とかなって良かったぜ」

竜司は登っていた石柱を指差す。

「なるほど…そのお陰で助かったわ」

「何だよー私達の必殺殲滅攻撃が文字通り火を吹く所だったのにーもー残念ー」

山科は、少し頬を膨らませて竜司に向かって杖を振り回した。


「おいおい危ねーからあんま振り回すなよ…ってあれ?

 そういえばボスキャラ倒したのに、何も動きねーな」

竜司は辺りをキョロキョロと見回した。


「それもそうね…普通なら、何か表示が出たり音が鳴ったりしてもよさそうなものだけれど」

神崎も首を傾げる。

「んーー?ひょっとしたらそういうイベント攻略サインとか出ない仕様なのかも…

 ってあれ!?」


山科が言いかけたその時、神殿の真上がまばゆく輝き始め、そして鐘が鳴る音とともに竜司達には読めない文字の文章が空中に3D表示された。

しかし、その雰囲気からして竜司達が求めていたものと分かる。


「おおー、多分これがこの迷宮ダンジョンクリアのファンファーレだぜ」

「それにしても、ちょっと遅れたわね」

「ひょっとしたら判定とかに時間を掛けてたとかかな?」


色とりどりの紙吹雪のようなものが舞い散る中でそう話していると、

神殿のさらに奥の方からシアラとアルウィオネがやってきた。




「あれ!?シアラに、アルウィオネ…さん。

 今までどこに行ってたんだよ」

「何を言っているのだ赤羽。

 我々は、神殿の奥に居座っていたボスを倒しに行っていたのだ。

 そして今さっき、ようやく倒してきた所でな」


「…え?えええええ!?」

「ちょっと待って頂戴、この大蜘蛛がボスキャラではなくて?」

「いいや、これは中ボスかボスの配下みたいなもんだろう」

「うぇえ!?こんなんで中ボスレベルだったの!?」

「多分そうじゃろうな。

 まぁ余とシアラは、こやつをお主らに任せても支障は無いと思ったので

 お主らを置いておいて、二人だけで向こうのボスと試合うておったのじゃ」


「それで、ボスってどんな奴でしたか?」

「おう、両腕に巨大なハサミを持つ大百足じゃった。

 そやつの周りにこいつのような大蜘蛛や毒虫や大蝿なんぞがわんさとおったのじゃが、余とシアラはそんな連中なんぞ、一振りで屠れるからの」


「たった一振りで…!?」

「まぁ気にするでない。余やシアラは兵役を経ている事もあるし、普段からの鍛錬度合いが違うからの」


「なるほど、それでファンファーレが鳴るのが遅れていたわけですね。

 そもそも私達はボスを倒してすらいなかったわけだから…」

合点がいったとばかりに頷く神崎。




「それで、この床に転がっている粘液まみれのきったない物体は何じゃ?」


アルウィオネがレイピアの先端でちょんちょんと小突くと、

超合金甲冑の中まで粘液でびちょびちょにした東雲が「んばぁ~」と呻き声を上げた。

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