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15-4  帝国内旅行・ゲームステージ

「でいっ!」

「はぁあーー!!」

「ちぇすとぉ!」

「ふっ!...こんなものかしら」




竜司達は、次にやってきた草原のようなステージで

次々に向かってくる敵に対して手にした武器を使って倒していく。

流石に前のステージでゲットしていた武器は持ち込めないので、

神崎や東雲もしぶしぶ武器を捨てていた。


「あ、意外にストレス解消とかになるかもこれ!」

最初はぶーぶー言っていた山科も、気が乗って来たようだ。

「確かにそうね、いい運動になるわ」

「あれ?そう言えば俺らの服って、実際は元の服のままだよな。

 汗とかあまりかかねーけど、どうなってんだ?」

「ああ、それはこのステージ全体がナノマシンで構成されてもいるからな。

 拡張現実体も実際はナノマシンが体や服に取り付いて、

 感触を生み出す力場フィールドを生み出すと共に

 汗やゴミを自動的に排除するようになっている」

「へぇー、よく考えられてるなぁ。じゃあいくら暴れても平気って事か」


しばらく戦っていると、山科が草むらに巻物スクロールのようなものが

落ちているのを発見した。

「おおっ!?武器っぽくはないけど、これってもしかして?」

目を光らせた山科に、シアラが頷く。

「ああ、多分山科さんの思っている通りのものだ。魔法アイテムだよ」

「ぃやっったーー!!」


意気揚々と山科が巻物を手にすると、いきなりその巻物がまばゆく光り始めた。

そしてあっという間に山科の手の中で巻物が小さな杖に化け、

その上に小さなウィンドウが開いた。

「おおおっ!?」

見ると、使用できる魔法のステータスボードが表示されているようだ。

魔法発動を行う際の呪文も、日本語で記されている。


「よっし、さっそく試してみよ!!

 えーと、燃え盛れ、=-||-===|||-||=|、||=-|-- =||-|=!!」

発音すると日本語に聞こえにくい呪文を唱えながら

その小さな杖をスライムもどきに向ける。


ブヴォオッォオオォオオオ!!と予想外に大きな炎が杖の先から出て、

哀れなスライムはあっという間に黒焦げになって消滅し、

それどころか目の前の百メートル近い範囲が焦土になった。

「うはっ、すげー!!」

「マップ兵器!?」

「いやいや、オーバーキル過ぎんだろ…」




「さて…ここまでが第1面だが、

 目の前にある洞窟が迷宮ダンジョンになっていて第2面となっている。

 どうする?行くか?」

シアラが剣で指す方向に、いかにもな丘の横にぽっかり開けられた横穴が見える。


「そうね、だいぶん慣れて来たし、私は異存はないわ」

「俺も。山科は?」

「ま、いいんじゃない?こっちも良いもん手に入れたしー!!」

「うぉっちょっ待てその杖をこっちに向けるんじゃねぇえ!!」

山科はわざと東雲のメガネに杖でちょんちょんと小突いている。

「ははは…じゃ、行くか」


「おおっ!いかにもなダンジョンじゃね!?」

洞窟の中は、床や壁や天井に張り付く発光キノコや水晶などが

散りばめられている。

「拡張現実の空間とはいえ、めちゃくちゃリアルだしファンタジックだよなぁ」

「こういうのっていつも思うんだけど、もぎ取って持ち帰ったらダメかなぁ?」

「いや山科さん、現実に存在するものではないのだし…」

「ははっ、確か船内のお土産コーナーにこのゲームステージ関係のグッズがあるはずだぞ」

シアラが笑って言った。


「お土産コーナー?お土産を売るキオスクみたいなもんか?」

「いや、売っているわけではない。

 そもそもこの”帝国”は大体のものがタダで貰ったり使えたり出来る。

 お土産もその一つだ」

「へぇ、でも例えば誰か一人がそのお土産を全部持ってっちゃったら困らない?」

「確かにそうだな。でも物自体はレプリケーター等で幾らでも増やせるし、

 そもそもそういう考えを持つ人間はいない。

 大体、そんなに多く貰ったって持ち運ぶのにも一苦労だろう?」

「うーん、でも悪戯とかでそういう事をする人は居ないのかな?」

「ふむ、我々の世界では基本的にそういった事をしでかすような

 偏執的な性格の人間はそもそも居ない。

 もし居ても、すぐに精神を精査させられて再教育プログラムに取り込まれるだろうな。

 21世紀地球ではそういう事をする人間は多いのか?」

「まぁ居ない事もないよね。いつだって頭のおかしい人は居るわけだしねー。

 日本でも悪戯だけじゃなくて猟奇犯罪とかも割と多いしさ」


「話変わるけど、このゲームって割と”帝国”内で流行ってるのか?

 グッズがお土産にあるくらいだし」

「まあ流行っていると言うか、定番という感じだな。

 ただ当然のことながら、面白いゲームほど末長くプレイされるし、

 そうしたゲームをデザインしたデザイナーは尊敬される。

 そしてお土産グッズの捌かれ具合でも評価が決まっていくものだ。

 面白いと思ったなら、そのお土産グッズをどんどん貰っていくと良い。

 もちろん一人一個でカウントされてるから

 一人で幾つ持って行っても意味はないのだが、

 それでもデザイナーの励みになるからオススメだ」


「なるほどねぇ…

 尊敬とか信頼とか評判とかが貨幣の代わりになる世界だからか…

 なかなか想像出来ねーけど凄えな」

「でも、とても素晴らしいことだと思うわ。

 そもそも、地球で戦争が起こる一因に経済や資源の問題があるわけだし。

 一体、地球で”帝国”のような価値観の社会が生まれるのはいつのことになるかしらね」

神崎が首を振ってため息をする。


「そうだな、そのために我々は君達の地球日本世界へ干渉しているわけだから、

 その実現には思ったよりも時間は掛からないかもしれないな」




竜司達は、そんな会話をしながらも

洞窟の道中で出くわしたゴブリンやオークやバシリスク、サラマンダーといった

敵キャラを次々と撃破していった。


「はっ!!たぁっ!!

 そう言えばっ、”帝国”の氏族の中に、ゴブリンみたいな、見た目の人達とかっ、

 居ないのかな?はあっ!!」

「もし居たら、同士討ちとかしてしまいそうね」

剣を振り回す竜司に、神崎が弓矢をつがえて撃ち放ちながら言った。


「ああ、居るぞ」

「えっマジで!?」

「それに同士討ちもよくあるそうだ。

 だから大概こういうゲームステージでは、

 別々のパーティーが参加する時にはマーカーを装着するのが一般的なんだが…」

「どうしたんシアラちゃん、言い淀んちゃってさ」

山科が魔法の杖を光らせて周囲を警戒しながら首を傾げた。


「いや、そういえばこのゲームステージ、

 パーティー同士のPvPも許容されてた事を思い出して…」

「おいおいおいマジかよ!?」

「それって、どういう事なのかしら?」

「つまりだな、このゲームは各面でボスキャラを倒せばクリアとなるが

 まず雑魚キャラを倒してアイテムや経験値を獲得して、

 ボスキャラを倒すレベルに自身を高めるのが一般的だ。

 しかし、パーティー対戦モードを選択すれば、

 勝った場合相手のアイテムや経験値を何割か奪う事が出来る」


「何だよそれ…この”帝国”では尊敬や評判が

 モノを言う世界じゃなかったんかよ?」

「ふん、ゲーム内では無礼講の何でもありって事だ。

 もちろんゲーム外ではノーサイドの精神だがな」

「確かに、私達の世界でもそういうゲームは幾らでもあるわね」


「ってかさ、今ここに私達の他にもパーティーいるの!?」

「いや分からん…でも警戒を怠るわけにはいかんだろうg」


ドゴォッ!!

と、シアラがその言葉を言い終わらないうちに

洞窟の横の壁が爆発したかのように勢いよく崩れた。




「うわっ!?」

「うげっ!?」

前衛にいた竜司と東雲が土砂と土煙に呑まれ、たちまち見えなくなる。


「あ、赤羽っ!?東雲っ!?どこだっ!!」

シアラが土煙の中に突っ込んで行くと、

その靄の中に2つの紅く光る点が見えた。


「!!」

殺気を感じたシアラが瞬時に後ろへジャンプし、

神崎と山科を守るようにして剣を構え直す。


「何て事…言ったそばからもうこんな展開になるなんて」

「ちょ、ちょっと待って心の準備が!!」

「君達もすぐに防御体勢を取ってくれ!来るぞ!!」


次の瞬間、その靄の中から1つの影が

その紅い両目を光らせつつ猛スピードでシアラに突っ込んできた。


「ぐっ!!」

ガギン!!と重い音を立てて剣と剣がぶつかり、

シアラは思わず体勢が崩れそうになるが何とか立て直しつつ

自身の剣を使って敵を押し返した。

敵も後ずさってシアラと間合いを取る。


「はあっ!!」

シアラは今一度剣を構え直すと、

すぐさま突進して刺突、斬り上げ、斬り下げ、横からの薙ぎ払いと

次々に連撃技を繰り出した。

敵はシアラの攻撃を滑らかな動きで防いでいくが、次第に押されていく。

何しろ一撃一撃がシアラの小柄な体躯から繰り出されるにしては意外に重く、

敵も剣戟を捌くので精一杯なようだ。


「すっごぉ…」

「さすがシアラさんね…」

神崎と山科は、その芸術的とも言えるシアラの連撃技に見惚れてしまう。


「とおっっ!!」

そして大上段から振り下ろされた一撃によって、

敵の剣が真ん中からバッキリと割れた。

「くっ!!」

敵はその場で尻餅をついた格好になる。


シアラは、一度少しだけ下がってから、

敵にトドメを刺すべくもう一度上段に構えた。

そして、再び敵に突進し始める。

「はあああああっ!!」




「待った!!降参じゃ!!」

「!?」

と、敵が折れた剣を捨てて両手を上げたため、

シアラは敵の目前で止まった。

しかし剣は構えたままだ。


敵はゆっくり立ち上がり、そして頭を半分ほど覆っていたターバンを取る。

その顔を見たシアラは、目を大きく見開いて驚愕した。


「久しいの、シアラ。

 余と剣戟訓練をしていた頃よりも腕を上げたのではないかのう?」




「で…殿下!?」

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