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14-1  表敬訪問

「『テーチ』ライブ成功おめでとう!!」


「な、何でみんな、こんなところに!?」




久しぶりにアラマキ-7115市に戻ってきた『テーチ』の一行は、以前行った広場ではなくてライブ専用ホールでの100万人動員ライブを終えた後、会場の控え室で急に現れた竜司達オカルト研の面々による表敬訪問に驚いていた。

竜司達とは、およそ一ヶ月ぶりの再会だった。


「ちょうど夏休みに入ったから来れたんだよー。

 それに実はさっきまでライブ見に行ってたけど、凄かったねー」

「今まで、こっちに挨拶に来れなくてごめんなさいね。

 でも、『テーチ』のパフォーマンスは本当に素晴らしかったわ」

「いやー、元気で楽しく演奏してるのが皮膚に直接ビンビン来てて気持ちよかったぜ!」

「キモい表現やめー。それに東雲くん、ライブ中もサイリウム一杯持って来てブン回してて若干メーワクだったし」

「何だよお前らだってサイリウム振ってたじゃねーかよ」

そう言えば、ライブ会場の一角にどこか馴染みのあるサイリウムの一団が居た事を思い出し、亜美は思わずクスッと笑ってしまった。


「あ、あの…こんなんで申し訳ないけど、良ければ受け取ってくれるかな」


「あ…ありがとう」

花束を差し出した竜司に、亜美が耳まで真っ赤にしながらも、ようやく言葉を返した。


「ほら亜美、何をいじいじしてるんだい、早く受け取らんか」

父親の浩太郎氏に促され、亜美ははにかみながら花束を受け取る。

浩太郎氏のほうは、神崎から花束を受け取った。




「ありがとう…みんなありがとうね」

花束を抱えた亜美は、竜司達に感謝の言葉を述べながら涙を浮かべた。


「本当に…ここまでよく頑張ったわね。

 誰でも簡単に成し得る事じゃない…胸を張って良い事だと思うわ」

神崎も微笑みながら頷いた。


「いやー、言い出しっぺの私が言うのも何だけどさー。

 実際ここまでやるとは思わなかったよーははは」

山科があっけらかんとした顔で笑う。


「っつか、山科はマジでもうちっと責任を感じた方が良いと思うんだが…」

東雲がメガネを掛け直しながら嘆息した。

「えぇー!?

 私これでも一応、桜木ちゃんに責任感じてるつもりだけどなー。

 何だったら、私も助っ人に加わるつもりだったし!」

そう言いながら山科はエアギターを弾く真似をする。


「それからしてもう軽く考えているような気がするのだけれど…」

神崎もため息を吐きつつ、腕を組み直した。

「でも、確かに山科さんのアイデアが無ければここまで状況が進むことなんて無かったのだから、何とも言えないわね…」

「えー何だよー神崎ちゃんまでー」


頬を膨らませる山科をよそに、イゴルが嬉しそうな顔で現状の報告をし始めた。

「神崎さんの言う通りです!

 既に目標の募集定員である1千万人をはるかに超えて、100億人以上の応募が集まって今も続々と増えてるんですよ!

 しかも仮身体アバターじゃなくて実体オリジナルで参加したいと言う人も沢山います!!」




イゴルが述べた通り、くだんの告白カミングアウトとその直後の時空探査局による公式な募集開始からたった一週間で目標を軽々と超えてしまったのだ。

そのお陰で、時空探査局の人事選考部門では一次選考の書類処理だけでてんてこ舞いとなっているようだ。


また、地球日本側の通商結節体ゲートワールドである『イヴァゥト-86』では建設済みの第一中央市を更に拡張し、また周辺地域の複数箇所にて新たな同規模の大都市の建設事業が急ピッチで進められている。

この為、アラマキ-7115市からイヴァゥト-86への接続は第七星門だけでなく、6箇所の星門ゲートが新たに開通された。

今や当該の星門ゲートとイヴァゥト-86の空は、環境工作船や輸送船や商船や警備艦などが無数に飛び交っていて大渋滞が続いている。

更にここ数日は一部観光船まで受け入れてしまっている為に、第一中央市の交通管制局も手を焼く混乱ぶりらしい。

 

「今度、イヴァゥト-86の方でも新たに出来たドームでライブをやるんですよ。

 研修中だった定住要員の第1期生がついに履修を完了するんで、その卒業式がてらに『テーチ』の演奏を研修生の皆さんにお聞かせしようと思ってるんです」


「あー、あのでっかいドームでやるんだ」

「ってか東京ドームよりでかくない?あれ」

「つーかだな、あの第一中央市自体が東京より規模が大きくなってるよな」

「あんな設備の整った街で暮らしてしまっては、実際の日本や東京に行ったらガッカリしなければ良いのだけれど」


「はい、その点については心配いりません。

 研修内容は当然、21世紀地球日本での生活を実際にありのまま体験し、学んで慣れてもらうのが目的ですから」

イゴルは手元から研修カリキュラムについて簡単にまとめた資料を3D表示させた。


「ふぅん、まあそういやあの街でも普通にレストランのチェーン店とか牛丼屋とか、あと本屋や美容室とかもあったよな」

「そう言えばそうね。それも現実に日本にある企業のチェーン店だったような気がしたけれども、あれは実際にもうその企業が進出しているはずは無いわよね」

「ええ、もちろん現時点ではフェイクです。

 ただ今後は実際に21世紀地球日本の企業に、イヴァゥト-86まで進出してもらえれば良いと思ってますけどね」


「そう言えば、シアラからちょろっと聞いたけど、日本政府の要人だったかをこっちまで案内したんですか?」

竜司が訊いた。

「そうなんですよ、今もこちらに滞在されているはずですよ。

 案内はオクウミ支部長が行っていると思いますが」




「日本…そういえば」

と、亜美が懐かしそうな目つきになった。

「学校、もう夏休みなんだね…

 あんな事になっちゃったから、もうあの野猿高校に行けなくなっちゃったな…」

亜美は少し寂しそうな顔をする。


「いや、そんな事ないぜ?」

と竜司が言う。

「え?何で?」


「ああ、実は桜木がイヴァゥト-86の病院に入院してた時に、オクウミさん達が仮身体アバターを作っててさ。

 今はソイツが本物の桜木の代わりに、学校に通ったり”機関”と定期連絡を取ってたりしてるんだ」

「えぇえ!?」


何でも、その仮身体アバターには『ラライ・システム』の管理者であるラライ5-7-2が仮人格として入り込み、まるでロボットのように桜木の生活行動をトレースしつつ”機関”当局の目を欺いて偽情報を送り、反対に”機関”から情報を継続的に入手するようにしているそうだ。

今のところ問題もなく順調で、彼女(の仮身体)の報告に対して”機関”側の反応が鈍い状態が続いている。

恐らくは、”機関”側としても例のレーニア山の地下都市で発生した動乱で桜木浩太郎氏が行方不明になった負いもあるだろうし、

またその動乱の影響が予想以上に大きい事から桜木や竜司達に構っている状況では無くなったというのもあるだろう。


「ははは、なんか私の分身が私の代わりに活動してるとか、ちょっと複雑だなぁ…」

頬を掻いて苦笑する亜美に、竜司が頭を下げた。

「ごめんな桜木、黙ってこういう事しちまってさ。

 でも、そう言う訳だからいつでもまた戻ってこれるぜ!

 ラライの奴も、いつでも本人と取って代われるようにして準備してあるって言ってるし」


「ええっ!?そんな、私の方こそ謝らなきゃいけないのに!

 …でもありがとうね。私、嬉しい」

そして再び懐かしそうな目を浮かべてつぶやいた。

「ほんのちょっとの間だったけど、もう何だかあの学校が懐かしくなっちゃった。

 また皆んなと一緒に学校に行けるならいいな」




しばらく回想に耽っていた亜美は、ふいにキョロキョロと周りを見回した。


「どしたん?」

「そういえば、シアラさんは?」

「あぁー、シアラちゃんねー」

と山科がわざとらしく溜息を吐いた。


「何かあったの?」

「シアラさんね…

 例によって、『フィムカ』号のメンテナンスに不備があったとかで、今もこの宇宙港にある時空探査局整備部に缶詰状態になっているみたいだわ」

神崎がシアラの状況について説明した。


「お陰でさー、本当なら私達と一緒に桜木ちゃん達を出迎えてるとこだったのに…

 って、おおー、噂をすれば」


山科が指差す先に、ちょうどロビーの出入り口からシアラが駆け込んでくる所が見えた。




「はあ、はぁ…遅れてしまってすまん!!」

いかにも日本人の末裔らしく、手を合わせて頭を下げるシアラに亜美が苦笑した。

「いえいえ、わざわざ来てくれて本当に嬉しいですから!」


「シアラちゃーん、『フィムカ』号は大丈夫なん?修理が必要になったとか?」

首を傾げる山科にシアラが頭を掻く。

「ああ…まぁそれはまぁ大丈夫なんだが。

 みんな、申し訳ないんだけど今回『フィムカ』号は使えなくなった。

 管理部から、私用で探査局の宇宙船を使うなと通達が来てしまったのだ」


「あぁ…まぁそうだよなとしか言えねえ」

確かに、言うなれば営業で使う社用車を家族旅行に使おうとするようなものだから、会社側にダメだと言われるのは当然と言えるだろう。


「みんな、どこか行くの?」

怪訝そうな顔の亜美に対して、シアラが答えた。


「ああ、みんなが私の故郷に興味津々でな…

 仕方ないので今回の帰郷の際に連れて行く事にしたのだ…」

ため息をつくシアラは、これから直面するであろう面倒事のあれこれを想像して既に疲れ切っているようだ。


「シアラさんの実家ってどこにあるの?」

「ああ、”ヤマトクニ”にあるケストラジウム星域のリャート63-9星系第4惑星エレストラだ。

 両親が住んでる実家がそこにあるんだが…」


そう言うと、シアラは竜司達をちらっと横目で見た。

「ここからは割と遠いんだよな…

 民間旅客線を幾つか乗り継いで行かなきゃいけないんだが、こいつらが大人しく付いて来れるかが心配でな…」


「あーっ!シアラちゃん、さては私達を信頼して無いなー?」

「そうそう、俺達ぁもう立派な大人だっての」

「おおぅ!既にこっちに来てから興奮しっぱなしなのは内緒だけどな!!」

東雲は余ったサイリウムを振り回した。

東雲に限らず全員のハイテンション振りがあからさまなので、亜美は思わず吹き出してしまう。


「はぁ、桜木さんに笑われるのも仕方ないわね…

 これから引率の苦労が思いやられるわ…」

神崎がもっともらしく頭に手をやって嘆息するが、すかさず山科が神崎の手を取った。

「ありゃー?この手の内にあるデジカメは何でしょー?」

「あっこ、これは何というかあれこれと記録を取っていかなきゃいけないと思ってそれで」

「いやー、さっき宇宙港の大広場を通り過ぎた時に、写真をバチバチ撮りまくってて一人だけ遅れ気味になってたのは誰だったかなー?」

「うっ、そ、それは…」


「ははははは!みんなこっちで楽しんでるみたいで何よりだよ」

屈託無い笑顔を見せる亜美に、神崎達も安心して微笑み返した。


「まー、しょうがないよ。

 だって桜木ちゃん達と違って、私達はこれがこっちへの初旅行なんだからさー」

「ま、まあそうね。

 そういう点では、お二人ともこちらでは先輩という事になるわね」

「ええっ!?いや、そんな事ないよ」

「でも、こっちの偉い人とかにも会ったんでしょ!?

 やっぱ凄いよねー!」

「え、偉い人??」


今まで一歩引いて見守っていた浩太郎氏が口を開いた。

「ああ、それは先日に会ったホーフホーヒ卿の事だろう。

 何でも、”帝国”ではなく”実体星間監察事業団”とやらの外交特使らしいが」

 

「んー?”実体星間…”なんだっけ」

「”実体星間監察事業団”ね。先日こちらの銀河文明について詳細なレクチャーを受けたでしょう。

 確か”日系人類銀河帝国”よりも更に一回り大きい規模の子政体だと記憶しているわ。

 でも、その外交特使の方までもが『テーチ』の演奏を?」


神崎の問いに、イゴルが答えた。

「ええ、その通りなんです。

 ホーフホーヒ卿は『テーチ』の音楽をいたくお気に召されたようでして、我々に対して強力な支持と協賛を保証して下さったんですよ」


「いやすげえじゃん!『テーチ』の名声がいよいよ銀河全体に響き渡ってるって事だろ!?」

「えぇと…そうなのかな」

ぐいっと迫った竜司の顔に、またしても亜美が顔を真っ赤にしながら首を傾げた。

「赤羽くん、近いわ」「ぐぇ」

神崎が竜司の首根っこをぐいっと後ろに引っ張ったので、竜司は思わず白目を剥く。


「ゴホン…つまり、それもあって応募する人が増えたのかしらね」

「まぁ正直、様々な政府や機関のバックアップがあれば尚の事、活動しやすくなるのは道理ですからね」

イゴルが頭を掻きながら頷いた。


「それは地球日本側についても同じ事なんでしょうね。

 なので、オクウミ支部長は今回日本政府の皆さんをこっちに連れて来て、色々な会議や会談をセッティングしてる訳です」




ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー




「うはぁ…こりゃスゲェ…」




新條衆議院議員は、アラマキ-7115市の中央ターミナル広場にある巨大ウィンドウに文字通りへばり付いて、宇宙港から発着する無数の宇宙船を眺めていた。


「こんな光景は…確かに地球では決して見られませんね…」

傍にいる菅原秘書官も呆然としながら新條に同意した。

他にも数人の日本人が宙に浮きながら、この光景に息を呑んでいた。


今回、日本政府の実質的な非公式代表団として”帝国”領内への訪問を行なっているのは新條と菅原だけでなく、他にも数名の政府高官及び政治家、それに新條と個人的な繋がりのある防衛省高官もいる。

いずれも、新條自身による調査のみならずオクウミ側の調査でも”機関”との関係がシロである事が判明している人物ばかりだ。

また、竜司の父親である赤羽正樹が公安調査庁の対外特別調査員という肩書で彼らに付き添っている。




「こちらの宇宙都市には、だいたい何万人位が活動してるんでしょうか?」

支倉という総務省の男が振り向いて訊いた。


オクウミは、隣にいるニノンダル執政官にちらっと目配せをすると、彼が口を開いた。

彼はこのアラマキ-7115市の管理局トップでもある男で、赤と黄色のマーブルになった髪をオールバックにしたカリスマ性の高い風貌を標準形態としてセッティングしている。


「はい、この市には凡そ1億5千万人程が実体空間上で活性化し、活動しています。

 その内訳として実体オリジナルが約2000万人、残りの1億3000万人が仮身体アバターです。またそれ以外にも”帝国”内外からの訪問者が1日当たり2000万人ほどいらっしゃいます」

「はぁ、実体だの仮身体だの仮想体だのと、事前に勉強してはいましたが、現実にそういう話が出てきますと流石に面食らいますね…ははは」

支倉は禿げかけた頭を掻きながら苦笑した。




「私からも質問です。一体、ここだけでどの位の商取引が行われているのでしょうか?」

次に訊いて来たのは、南野という経済産業省の男だ。通商政策局の人間らしく貿易面の情報が気になるらしい。


ニノンダルが答えた。

「そうですね、21世紀地球的意味における商取引というのは貨幣を基準としているので、我々の商取引概念とは一致しない部分もあるのですが、情報の齟齬を覚悟で変換するとしたら、このアラマキ-7115市での取引高は大体1日あたり5000〜6000兆円ほどでしょうか。

 もちろんこれは、21世紀地球日本の貨幣価値に照らして現代銀河世界の諸事物をゲータラム=ジャダイコス法などに基づいて変換して換算しているので、±10%ほどの誤差があると考えられますが」

「へ?げ、ゲータ…?」

「まああくまで参考値という事で」

「いやすげえよ、それでも地球全体の年間名目貿易高を何倍も上回ってるわけだからよ」


「えーと、この国ではこのような宇宙貿易港は他に幾つくらいあるんでしょうか?」

「だいたいこのクラスであれば、”帝国”領内だけでおおよそ20億箇所くらいですかね」

「に、にじゅうおく??」

「もちろん定義によりますが球殻星系やその他の星間構造体、人工次元世界などは含まれませんし、更に”宇宙日本人類文明体”全体まで含めれば、幾つあるかという質問自体が意味を成さないでしょう」




「軍事面について、お訊きしても?」と背広を固く着こなした男が言った。

「茅嶋さん、どうぞ」オクウミが言った。


「このアラマキ市…でしたか。ここにも軍事基地が存在するのですか?

 先ほど軍艦のようなものが見えましたが」

茅嶋という男は防衛省の高級官僚であり、元々は海自関連の役職についていた事もあり軍艦には目敏い。


「もちろんアラマキ-7115市にも軍事基地は配されています。

 ただその役割としては、主に宇宙港や星系内の警備が中心ですが」

オクウミも窓を通して宇宙港を眺めながら答えた。


「そう言えば、事前のブリーフィングで”ヤマトクニ”が”帝国”の軍事を専担していると仰ってましたけど、

 実際、通常時の兵力はどの程度なのでしょうか?いや、答え難いようであれば結構ですが」

茅嶋は一応オクウミに気遣って言った。


「いえ、お構いなく。

 我が”ヤマトクニ”宇宙軍の組織は、大きく分けて宙域軍・天体軍・後方軍・直衛軍の四軍に分かれております。

 その内、宙域軍は軍用艦艇を有人無人含めて18兆隻ほど保有し、正規艦隊は550万個隊が組織されています。また天体軍については基地が全銀河に約12億7000万箇所、師団数は約4300万師団程度ですね。いずれも、実体宇宙世界と人工次元世界を網羅統括して”宇宙日本人類文明体”防衛が可能な規模と戦力となっております。

 それ以外については、後方軍は兵站や補給や後方勤務を主とし、直衛軍は”帝国”領内を警邏する軍部門になりますね」


「いやはや…改めてそう聞かされると圧倒的すぎてよく分かんねぇな」

新條が腕をあげて嘆息した。

「そういえば”帝国”には外敵が存在しないと伺いましたが、それでもその程度の兵力というか軍事力を保持する必要があるのでしょうか?」


「そうですね、我々は50万年以上前に全銀河の多種族と和平条約を結び、”星間種族連合”を結成しました。

 それまでは以前もお話しした通り、銀河大戦が長きに渡って続き戦乱が銀河諸世界を荒廃させてしまったのですが、”星間種族連合”の結成以後は、幸いにも我々に拮抗しうる”外敵”は出現しておりません」


と、一度言葉を切った後にオクウミは、予めまとめておいた資料を手のひらから3D投影させた。

「ですが、いついかなる場合でも、我々と同規模の外敵が出現した場合に対する備えというものは必要です。特に銀河間宇宙では他銀河からの敵対勢力が来寇する可能性もあるので、重点的な監視が成されています。

 それ以外では、異次元方面において他の異次元勢力との不慮の接触に対応する必要もあります。

 また銀河内でも、同規模ではなくても小さな星間紛争は割とあちこちで起こっているものです。それは大体において”帝国”が直接関わっておらず、眷属下の後裔種族が引き起こしているのですが、そうした紛争の調停に出動する事があります。丁度あなた方の世界での国連平和維持軍のようなものですね」


「なるほど…改めてお聞きすると凄まじいスケールではありますが、納得出来ますね…」

茅嶋は眼鏡越しに鋭い目を宇宙港に向けて走らせ続けていた。




議員達がオクウミ達に色々な説明を受けている間、正樹は少し離れた所でタバコもどき(以前シスケウナから”帝国”内で流行している健康的な嗜好品だと勧められた)を吸っていた。

すると、広場の反対側あたりに竜司達らしき一行が跳びながら移動しているのが見えた。


「お、ありゃあひょっとして、シアラ君の実家にみんなで行くってヤツかな?」

昨日だかに竜司から聞かされていた予定を思い出す。

「おーい、って、まぁこんなに離れて混雑もしてりゃ気付くわけもねえか」


手を振りかけて止めた正樹は、腕時計をちらっと見やった。

それからおもむろに、宙を蹴って議員達の所に近づきながら、彼らに話しかけた。




「さて、皆さん。そろそろ時間なんで。

 ここらで一旦、通商結節体ゲートワールドのイヴァゥト-86まで引き返して、そこで諸々について打ち合わせしましょうや。

 何たってココは慌ただしいし落ち着かなくていけねぇんで」




※文中の表現


1)”●●”と表記している名詞・単語について(慣用句や言い回し表現以外)

  は、その語彙を用いる種族・民族集団が多様で

  それぞれ異なる発音・表現を行う為、暫定的な表記法として使用しています


2)『●●』と表記している名詞・単語について(会話文での括弧表現以外)

  は、その語彙を使用する種族が決まっており

  発音・表現が統一されている為、確定的な表記法として使用しています

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