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11-1 とある副官の悩み

『ディランバーゼス=ヴェータ29。こちらアラマキ-7115市統合管制局。

 貴艇の識別信号を受信した。これより牽引ビームにてルートを誘導するので、自動操縦モードにされたし』

「了解」




イゴルはコックピットにて、管制局の指示に従って宇宙艇の手動操縦マニュアルモードを切り替え、それからフロントウィンドウを通じて、前方に広がる宇宙都市の港を、やや物憂げな表情で見やった。

この港内に接続されている星門ゲートから、通商結節体を通じて21世紀地球日本へ戻るというのが、最近のイゴルが使用している航行ルートである。

このアラマキ-7115市は、”ヤマトクニ”に於ける中核的な交易流通拠点の一つとなっていて、ここから”ヤマトクニ”全域に向かう主要な航宙交易路と接続しており、利便性が良い。


「はぁ…」とイゴルはやや大きめなため息をついた。

「またオクウミ支部長から小言を言われちまうなぁ」


彼が憂鬱なのは、単に上司であるオクウミに叱られるという事ではなく、そもそも彼へ任じられた21世紀地球日本への定住者募集が上手くいっていないからである。




オクウミ支部長をサポートする副官任務の一つとして、イゴル・ウェインが彼女から指示されたのは、この21世紀地球日本で秘密裏に活動できる帝国側の工作員を多数確保する事だった。


工作員といっても、何か特殊な活動(例えば諜報や軍事工作など)を行うわけではない。

むしろ変な事をせずに、この21世紀地球日本に定住して普通に現地で働き、更には地球日本人と結婚して多くの子供を産み育ててもらいたいと考えている。


その理由として、第一にこの21世紀地球日本での少子高齢化対策が挙げられる。

何しろこの時代での地球日本は、もはや自力での人口再増加が不可能な程に少子高齢化が進みつつあり、このままでは少なくとも2050年頃には人口が1億人を割り、更に2065年には2.5人に1人は65歳以上という超高齢化社会が到来して、財政を含むありとあらゆる社会制度が破綻すると予測されているのだ。

仮に財政が何とかなったとしても、慢性的な人手不足と消費の減少が社会の崩壊を助長させるのは間違いない。


もちろん更に時代が進めば、若年者と高齢者の人口比が再び均衡して安定する可能性もあるだろうが、それ以前に社会が崩壊してしまえば何の意味も無いのだ。

日本政府内などでは、外国人労働者を移民として受け入れる方策について議論がされているが、先んじてその政策を採っているEUなどでは深刻な治安悪化や格差社会の助長、地域文化の崩壊といったデメリットが顕在化しつつあり、その反動でEU諸国内では極右政党が台頭しつつあるほどである。


しかし、現日本人と遺伝的にも文化的にも繋がりのある”帝国”の人々が移民するのであれば、少子高齢化に伴うありとあらゆる問題が、氷が解けるように解決するであろう。

もちろん、何万年もの世代差は文化的にも隔絶しているとも言えるが、”帝国”人の成熟した安定的で寛容(かつ適度にいい加減な)精神体系が、それらをも許容する事も見越している。


員数としては、生殖可能層が約1千万人も居れば、最も補うべき世代である30〜50代の21世紀地球日本人独身層をサポートするには十分だと思われた。

もちろん、実身体オリジナルではなく仮身体アバターでも生殖機能は普通にあるので問題ない。むしろ仮身体アバターの方が、応募側としての心理的ハードルは少ないので好ましいだろう。

当然だが移住にあたっては、地球日本の医療機関でもヒューマノイドとしての仮身体である事がバレないよう検疫と生物学的調整を行ってもらう予定だ。




問題なのは、宣伝手段だった。

何しろオクウミ支部長というか時空探査局からは、出来るだけ「密かに」人員を集めよとのお達しがなされている。

なぜかというと、実は”帝国”政府内では時空探査局の活動そのものに疑問の声が上がりつつあるからである。


そもそも、この時空探査局は数十標準年前に幾人かの皇族及び政府高官の肝煎りで設立されたものだった。

だが当時から既に、これは”日系人類銀河帝国憲章”の中の”原始文明干渉規約”及びその原典である”星間種族連合”内で締結された”マーハガルハイト=エヴェッサ条約”に違反するのでは無いかとの疑惑が挙がっていた。

ただ設立者が皇族であるが故の威光、あるいは信頼と支持によって今までは特段騒ぎになる程では無かった。


しかし最近になってから、設立者の一人である昴之宮公アルウィオネ殿下による派手な活動、またはスタンドプレーが目立つようになってから、帝国多重議会内の天体院議員や星間院議員、さらには次元院議員の中からも俄かに表立って批判を口にする政治家が出始めたのだ。

更には、この問題を奇貨として”宇宙日系人類文明体”内の他の有力な子政体から政治干渉を受ける可能性すらあった。

既に、”実体星間監察事業団”外交部から非公式の問い合わせが来ているらしい。”青紫-琥珀同盟”、”六一七協約体”、”宙生態環族”などの駐在外交工作員による”帝国”内での動きも活発化しているようだ。


特に「17=5-47-664-95=7.81世界地球戦争」を行った際に、アルウィオネが自ら戦場に出るなどのかなり無茶な行動を取ったお陰で、批判が時空探査局のみならず”ヤマトクニ”次元間派遣軍や皇宮にまで向けられるようになった。

今のところ、大して失策があったわけでは無いので表立って処分が為されたわけではないのだが、もし更に何らかの問題行動ないし不祥事でもあれば、確実にアルウィオネへの何らかの処分、そして時空管理局の大幅な活動制限或いは廃局措置が下されるのは間違いないだろう。


とにかく、そうなると表立って派手な活動をするのは批判の為の言質を取られる事にもなりかねないので控えたいところだが、1千万人というある程度まとまった人数の動員というのは当然それに該当するような事項になる。

という事で一般からの募集は非常に難しく、時空探査局関連の組織や団体から刈り集めるしかない。

そうは言っても、時空探査局自体が行政府直轄の管理組織なので、繋がりのある組織や団体などはごく限られてしまうのだ。

例えば17=5-47-664-33-8.69-4世界の地球日本でも、同じように1千万人を動員した事があるのだが、あの時は数十年単位の時間をかけて徐々に動員を掛けて行ったので、”帝国”側ではほぼ問題視される事は無かった。

だがそのお陰で、既に目ぼしい組織や団体からの募集人員は取り尽くしてしまった。


結局のところ、イゴルは募集を開始してから1ヶ月でまだ百万人も集められていない。

まだ1ヶ月とはいえど、イゴルが使えそうなツテはもう使い果たしているので、完全に行き詰まりとなってしまっている。

今回の”帝国”領内への出張も、そうした行き詰まりを打開しようと様々な組織団体と掛け合う為のものだった。

しかし結果は全くはかばかしくなかった。


「こうなると、もはや打つ手としてはもう、ある程度オープンに応募を掛けるしかないのかもなぁ…」

確かにその方が効率的に集められるだろうが、同時に上記の理由で目立つリスクが大きいのは明白だ。

イゴルは頭を抱え、その整った顔を苦悩の表情で歪めた。




『ディランバーゼス=ヴェータ29、アラマキ-7115市統合管制局。

 港内への牽引タスクが完了した。貴艇の目的地は17=5-47-664-78=211方面第七星門で宜しいか?』

「アラマキ-7115市統合管制局、こちらディランバーゼス=ヴェータ29。

 それで問題ない。誘導願う」


直径1000km以上もある巨大な小惑星の内部をくり抜いた空洞の中に構築された宇宙港には、”帝国”のあちこちからやって来た様々な形態の商船や輸送船、旅客船、観光船などで溢れ返っていた。

その中には液体金属で出来た流線型の高速保安艇や、まるで日本の某国民的アニメに出てくる大樹と空中都市が一体化したような巨大な次元間探査艦、派手なネオンをびっしり付けたシャンデリアの塊のような豪華客船、またはクラゲのようなプラズマ生命体の内部にキャビンを設えた個人艇クルーザーや、鯨に似た形態をした”宙泳族”の胎内を間借りした貨客船など様々なデザインの宇宙船が停泊し、或いは移動している。

港内の内壁には、船を停泊させる為のドッキングベイや、他の異次元へと接続する星門ゲートが無数に設えられていた。その隙間を縫うような形で宇宙都市のビル群や各種産業プラントや港内交通機関のチューブ等でびっしりと覆い尽くされている。

それらは遠目から見ると、まるで星雲か銀河を間近で見ているかのように煌びやかで荘厳だった。


そして、イゴルの宇宙艇が向かおうとしている第七星門ゲートには、既に”アラヤシマノクニ”や”トヨアシハラクニ”から来航した複数の経済事業体による環境工作船や”ミズホクニ”の商人組合ギルドの商船、または”ヤマトクニ”宙域軍の航宙警備艦などが幾隻も進入しようとしている。

どうやら、一足先に地球日本側にある通商結節体内部の再開発が始まろうとしているらしい。

イゴルはそれらの船を見ながら、またも深くため息をついた。




「あまり大げさにならず、批判の為の言質を取られないような手段で集めるにはどうしたら良いものか…」

イゴルは深く考え込みながらも、統合管制局の案内で第七星門ゲートに進入していった。




ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー




「何をチラチラと後ろを向いているのかしら?」

「いや、なんか気になってさ…」




竜司は、神崎と一緒に学校へ向かう通学路を歩いていた。

梅雨の季節という事もあり、通学には傘が欠かせない。

この時も朝からしとしとと霧雨が降っていて、竜司達は傘をさしながら歩いていた。


しかし、竜司は傘越しに、あからさまとも言える程の視線を感じていた。

こんな雨で視界が遮られていて、かつ傘を通しても感じるのだから余程のものだと思う。


「竜司様=確かに後方50m程の位置に=竜司様達の後ろをつける人物がいます=」

「やっぱりな、っていうかまたかよ...」


竜司のカバンから、ロボットの『ゼロ』が顔を少し覗かせて言った。

ちなみにこの”眷属”である『ゼロ』は最近、竜司の事を「赤羽様」ではなく「竜司様」と言うようになった。

というのは赤羽邸で竜司の家族とも会話するようになって、竜司とそれ以外を区別するために下の名前で呼ぶようになったのだ。

ちなみに春乃や沙結からも可愛がられているが、同時に同じような”眷属”をねだってきたので、後にラライ5-7-2が彼女達にも同様の”眷属”を作ってやっている。


「ふふっ、遂に赤羽くんにもモテ期が来たって事ね。ハーレムを築くのも時間の問題といったところかしら?」

「いや、ふざけないでくれよマジで…

 どうせ例の桜木とかいう奴だろ、それに俺だけが目当てなワケねぇだろうし」

「でも、明らかに貴方の後をつけているように思うのだけど。私一人の時には全然そうした気配は無かったし、後で東雲くんや山科さんに訊いたら分かるでしょう」

「いやいや、マジあり得ねえって…それにやってる事は明らかにストーカーじゃねえかよ。どんな目的か知らねーけど気持ち悪いったらありゃしねぇよ」

「そうかしら?ストーカーとは言っても貴方を慕っての事だと思うから、そんなに邪険にせず一度デートでもしてみたらどうかしらね」


「…神崎、もしかしてなんか怒ってらっしゃる?」

「今日は1時限目から体育だからそろそろ急ぎましょうか」

「俺は神崎とクラスが別なんだけど…」


急に足を早めて歩き出した神崎に竜司は慌ててついて行ったが、そのせいでズボンの裾が雨の跳ね返りでビチョビチョになってしまった。




二人の後ろをピッタリと等距離をおいて歩く桜木亜美は、先日言い渡された”パレス”からの指令を頭の中で反芻していた。


(”ハニートラップ”…私にとっては初めての本格的な能力の行使だけど

 今度こそ、上手くいく方法を編み出して実行しないと…

 恥ずかしいとか、嫌悪感とかそんな事を思っちゃいけない。

 これは任務、これは任務…)


正直なところ、桜木は別に竜司の事を好きでも何でもない。

そもそも、このような任務を望んで”機関”で働く事を決めたわけではない。

だが彼女が”機関”にスカウトされた時、徹底した洗脳措置が取られた。

その結果、少なくとも表層意識レベルにおいては完全な”洗脳”効果を発揮し、彼女は”機関”に従順な工作員へと変貌したのだ。

しかし、彼女が生まれつき持ち合わせた能力である「精神操作(魅了)」の異能は、潜在意識奥深くまでの洗脳を弾くほどのレベルだった。

従って彼女は、”機関”による定期的な”メンテナンス”や”セラピー”を必要とし、また普段からの自己加重意識誘導セルフマインドコントロールを命じられている。


今日も彼女は、心の中で同じ言葉を繰り返し唱えながら”機関”によって”調教”された精神をもって淡々と任務行動を行っている。


しかし、この多摩市に来てからはその成果がさっぱり出ていない。

”ハニートラップ”にしても、その実際の行使をする機会に恵まれずにいた。


何しろこの1ヶ月の間、メインターゲットである赤羽竜司の隙が全く掴めないのだ。

自宅を出て、通学路を学校に向けて歩き始める所までは良い。

しかしすぐに副生徒会長でもある神崎と待ち合わせており、それ以降の登校中は二人ピッタリと寄り添っていて彼1人になるタイミングは無かった。

また校内でも、東雲や山科、または志安良というオカルト研の部員達といつも一緒にいる。

そして放課後は部員達と共にオカルト研にいるか、またはいつの間にか下校したのか見当たらなくなっている。


従って彼女は、命令された任務”ハニートラップ”をこの1ヶ月間に一度も実行する事が出来なかった。

指定された任務完了予定の期日は迫って来ており、このままでは間に合わなくなる。


リスクは高いが強引に彼を拉致してでも行為に及ぶべきかどうか、その判断に迫られつつあった。




ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー




「シアラちゃんお疲れー、って

 あれ?赤羽くんは一緒じゃなかったっけー?」

「赤羽なら、さっきの美術授業に使った道具を返しに美術準備室に行った」


昼休み、廊下でばったり出くわした山科の質問に対してシアラが答えた。

ちなみに相変わらずシアラは男子に対しては敬称を使わない。


「そういや二人して美術専攻してたんだっけ?

 何だってそんな面倒臭い奴選んじゃったんだか。

 書道は良いよー、適当に手を抜けるし」

都立野猿高校では、二年次では芸術教科に関して美術か音楽か書道かのいずれかを選べる。

竜司とシアラは美術を、山科と東雲は書道、神崎は音楽を選択していた。


「うむ、絵を描くのは造作もない」

「そういや、シアラちゃんの絵って私まだ見た事ないんだよねー。

 今日はどこで描いてたの?」

「今日の授業は、校内のどこでも自由に移動して、自身の好きな構図で風景を描くという課題だった」

「それで出来たの??見せて見せて!!」

「まだ完成ではない。この1ヶ月の間に、水彩絵の具を用いて描き切るように指示されている」

「あー、じゃあもちっと待つしかないかー。

 でも完成したら絶対見せてね!!」

「分かった。努力する」

「それで、赤羽ちゃんも同じ場所で描いてたの?」

「いや、赤羽は私より左後方30度の方角で15m離れて描いていた」

「んーその固い言い方どうにかならないの?」

「コホン…これでも元軍人なもので、なかなかその時に訓練された軍隊口調が抜けないんだ、すまない」

「あーははは、イヤイヤ良いよそこまで気にしなくても。じきに直っていくっしょ」


そして山科は廊下のシアラがやって来た方向をみやり、それからシアラの背中を叩いた。

「まー赤羽ちゃんを待ってても仕方ないし、部室行って昼ご飯食べよー!

 ってか昼ご飯買った?先に購買に行こーか?」

「いや、朝に赤羽から、お弁当を持たされた」

と言って、シアラは可愛らしいパステルカラーの手提げ袋を見せた。

「おおっ!もしかして春乃ちゃんご謹製って奴?」

「ああ、相変わらず助かる」

「じゃ、東雲くんや神崎ちゃんも待ってるだろうし部室にレッツゴー!」




竜司は、授業で使ったイーゼルを返しに、美術教室へと向かっていた。


「あー腹へった、柄にもなく熱中するもんじゃねーな」

竜司はクラスの中でも割と絵が上手い方で、それなりに自身の技量を自負していたのだが、先ほどの授業でも冒頭に美術教師に褒められた事もあって、妙に張り切ってしまったのだ。

そのお陰で、授業終了のチャイムが鳴っても風景のデッサンに夢中になっていて気付くのが遅かったのだ。


「まぁ、沙結に比べたら雲泥の差ではあるんだけど…」

そう独り言を言って、昨日の夜の事を思い出した。

その時も沙結が12時を周っても部屋でペンタブに向かって絵を描く事に熱中していたので、トイレに起きた竜司が部屋から漏れる光に気づき、それで沙結を叱ったところだった。

沙結は竜司に怒られてしゅんとしていたが、多分また今夜も同じ事をするんだろうなとは思う。


何しろ、沙結はネット上では神絵師と呼ばれているらしく、投稿サイトに自作イラストをUPする度に、閲覧PV数が瞬時に数十万単位になるとの事で、最近では同人誌の作画も依頼されているらしい。

今描いているのは、どうやら夏に何度か行われるローカルのコミックマーケット用だそうだ。

それに比べれば、竜司の技量は沙結の足元にも及ばない。


「ま、いずれにしても沙結が寝不足になったり体調を崩したりしなきゃ良いんだけどな」

竜司は沙結に対しては今の所、兄らしい事を何もしてやれていないと感じている。

その点、沙結に夜食を作ってやってる春乃の方がよっぽど姉らしい。

その代わり心配くらいはしてやりたいとは思うのだ。




そんな事をあれこれと思いながら美術準備室に道具を返し、それから廊下に出てオカルト研部室の方に向かって歩き始めた。


不思議な音楽が聞こえ始めたのは、その時だった。


「あれ?音楽教室に誰かいるのかな…?」


音楽教室は、美術教室の隣にある教室だ。

というかこのフロアは、それ以外にも視聴覚室や家庭科室などの特別教科の教室が揃っている。当然部活動に使われる事も多い。

だが、昼休みが始まったタイミングの時間では、部員などの生徒はまだ来ていないはずだった。


「先生かな…にしてはあまり聞かない類の楽器というか…

 やたら和風な感じの…三味線だっけ?」

とするとますます不思議だ。

確か竜司の記憶では、三味線などの和楽器を扱う授業は無いはずだし、部活動といってもせいぜいが吹奏楽部か合唱部か軽音楽部くらいしかなく、もちろん洋楽器がメインだ。


「でも、上手いな…それに綺麗な声もする」

琉球音階、いや奄美音階の方だろうか。

あまり聞き慣れないが、それでも十分に耳を傾けたくなる歌声が、優れた三味線の演奏に乗って聞こえてくる。

「これって弾き語りって奴なのかな?

 誰が弾いてるんだろう…」


そして、バレないようにこっそりと戸の隙間から教室の中を覗き込んだ竜司は、演奏をしている人物が誰かが分かった瞬間、目を大きく見開いた。




「さ、桜木…!?」

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