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9-1 フードコートでの密談

遅れてしまい、申し訳ありません。


次回投稿は、なるべく早めに行います。

「シアラさん、これなんかどーかな?」

「えっ、いや、それは…」

「そうね、これなんかも良さそうね」

「あっ、えっと、ちょ、ちょっと待って…」




翌日の放課後、シアラと神崎や山科達は、聖蹟桜ヶ丘駅前にある複合ビル「オーパ」に来ていた。


そこはアウトレットモール程ではないが流行のファッションブティックやショップが軒を連ねていて、また本屋やスポーツ用品店や家電量販店まであり、また1・2階は喫茶店やフードコートになっているので地元の若者がよく遊びに行くスポットの一つとなっている。

だが最近では京央線沿線にある府中や調布の再開発が進み、そこでの新しい駅ビルが充実しているので、どうしても客足がそちらの方に流れて行ってしまうのが悩みのようだ。


「あ、あの…山科さん、ちょっとこれは恥ずかしい気が…」

シアラが試着室のカーテンから、赤くなった顔を少しだけ出して言った。

「大丈夫大丈夫!そんくらいの服なんて皆着てるって。

 っていうか見せてよーちょっとだけでいーからさー」

と言いながらも山科がバッっとカーテンを横に開けた。


「おおっ!!いーじゃないいーじゃない!」

シアラは恥ずかしそうにしているが、水色の花柄ワンピースがとてもよく似合っているようだ。

「…あら、素敵じゃない

 やっぱりシアラさんの髪色やスタイルなら、そういうのが似合っていると思うわ」

最初は山科の強引な行動に頭を抱えていた神崎も、シアラの格好を見て考えをやや改めた。

「なら、こちらはどうかしら?

 シアラさん、ちょっとこれも試着して見ましょう」

「うぇ!?ちょ、ちょっと…」


シアラはワンピース以外にも、シックなブラウスとスキニーの組み合わせや緩めのシャツ&ボトム、ジャケットとスカートの甘辛コーデなど次々と着させられていた。

まるで着せ替え人形みたいである。


「それで、シアラさんどれ買う?みんな買っちゃう??

 どーせこっちでの私服持ってなかったんだし、一気に買っちゃおうよ!!」

「まあ、これから街中での任務とかも増えるのだと思うし、買っても損では無いのではないかしら」


山科と神崎が結構強く勧めてくるので、悩んでいたシアラもうーんと唸りながら、

「…まあ、これも任務のためだし」とボソッと言って、手に取った服をレジに持っていった。


「おおっ全部持って行くかー、太っ腹だねー!

 何か私も購買意欲を刺激されたよー!私もいっちょなんか買うかー!?

 っていうか神崎さんも何か買おーよ!」

「えっ?わ、私は…」

「いやいや、神崎さんこそ服をそんなに持ってないでしょー。

 私知ってるんだからねー神崎さんの私服パターンが3、4種類しかないっての」


「んっっ!いや、私はそんなに」

「いやいや、神崎さんみたいな美貌とスタイルの良い人は他に見た事ありませんって!!

 なのに一張羅の着たきり雀なのはすんごい勿体無いし!!」

「や、山科さんこそ」

「まーまーまー」




結局、神崎も山科も自分の服をアレコレと選び始め、買い終わったシアラも再び混ざってどったんばったん大騒ぎな状況になっていた。


そしてそれを、ブティックフロアのエスカレーター横にあるベンチに座る竜司と東雲が、思いっきり疲れた表情で眺めていた。


「…なあ、東雲さんや」

「…なんだい赤羽さん」

「女子って、どーしてあんな服ごときで騒げるんだろうね」

「かーちゃんのお仕着せばっかり着させられている俺に訊く事か?それ」

「そーいやそーだね。っつーか俺もだよ」

「お前んとこは春乃ちゃんと沙結ちゃんがいるじゃねーか」

「いやいや、アイツらは人の服に文句をつけるだけだから」


「…まあ一つ言える事は、あの買った服も俺達が手で持って運ばなきゃいけねーって事だ」

既に二人の両脇には、買い込んだ食器やら調理具やら日用品やらで膨らんだ手提げ袋が積まれている。

ひとしきりそんな会話を交わしながら、二人はどっと深いため息をついた。


「一つ=ご提案があるのですが=」

竜司のジャケットにあるポケットから首だけ覗かせた『ゼロ』が竜司に言った。

東雲の『トラン』も、同じくポケットから首を出して周りをキョロキョロさせている。


「あっおい、あまり顔を出すなよ。バレるじゃねーか」

「申し訳ありません=赤羽様=」

と再びモゾモゾとポケットの中に潜り込んだ『ゼロ』だったが

「提案というのは=私達の『ラライ・システム』で=そちらのお荷物を全部自動的に=ここからシアラ様のご自宅まで輸送が可能という事なのです」

「えっ!?マジで?」

「はい=一度荷物をこの建物のトイレかどこか=他者の目に触れにくい場所に持って行って頂ければ=そちらへ『ラライ・システム』のチューブを這わせて=吸い上げる仕組みとなります」

「よっしゃ、ありがてえ!じゃあ後でお願いしていいかな?」

「もちろんです=赤羽様=東雲様=」


すると、ホクホク顔で買い物袋を両手に抱えた山科が、同じく神崎とシアラを引き連れながら戻ってきた。

「やぁやぁ、諸君お待たせー」

「おー、ようやく終わったか」


「ん?まだまだこれからなんだけど。

 じゃー今度はランジェリーショップにGOだよ!!」

「え?えええ!?」

「ちょ、ちょっと待ちなさい」

「マジかよぉ!?」

「Oh…」

山科以外の全員が顔を真っ赤にした。




ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー




「そーいや、今日は転校生さんは静かだったよね」

山科が、そう言いながらフードコートで買ったフィッシュバーガーセットのフレンチポテトをつまんだ。


シアラ達が買い物を終え、その荷物を竜司達が一度トイレに持って行ってから『ラライ・システム』のチューブに吸わせて搬送してもらい、それでようやくひと段落ついたので1階にあるフードコートで休憩する事になった。

しかし、これから違うビルにある家具専門店に赴き、家具を注文する作業が残っている。


「そうね…水面下で何らかのアクションを取っている事は間違いないのでしょうけど」

サラダだけ買って食べている神崎が、セロリを口にしてやや顔をしかめながら言う。

「とりあえず、学校出る時に撒いておいたはずだしな」

竜司も、学校を出て駅前行きのバスに乗るまでの事を思い出しつつコーラを啜った。




今日は平日でもあるせいか、フードコートに来ている人達もまばらだった。

そもそも、聖蹟桜ヶ丘のような街であってもじわじわと過疎化が進んでいるのかも知れない。


山科は、少し周りをキョロキョロと見回す。

「大丈夫です=現在は私達を監視している不審な人物は見当たりません=」

と、山科の髪留めに擬態している『フェイ』が、羽をわずかにはためかせながら言った。

「また=皆さんの会話は=音波撹乱をこの周辺に施してますので=周囲には漏れていません=」

「ん、じゃあ大丈夫だね」とはいえ、やや声のトーンを落として話した。


「っていうかさ、そもそも”機関”って結局何なんだろ?わざわざ私達みたいな何の変哲も無いような学生にまで監視員を送り込んだりさ。

 よっぽど暇なのかな?」

「そんな訳はないでしょう...」と神崎が頭を抱えながら、

「客観的に見て、私達は既にその”機関”の活動を十分に妨害していると言っていいわ。象徴的なのは、例の”エリア51”上空での戦いで明日香さんを奪還した事。それが私達がマークされてしまっている直接の原因かしら」

「でも、どうして私達の存在がわかっちゃったのかな?

 確か『フィムカ』号には視覚ジャミングとかが付いてるはずじゃなかったっけ?シアラさん」

「ああ、そうだ。あの時は、外部からは我々の誰一人として顔の判別がついていないはずだ」


「とすると、あとは例の稲荷塚古墳での一件かしら。

 シアラさんを救い出したあの時、直後に特殊部隊がやってきていたから、何らかの手段でシアラさんがあの遺跡内にやって来たのを察知されたと考えるのが自然ね」

「む…そう言われると、確かに当時は『フィムカ』号も、隠匿用システムを含めた機能の一部が麻痺していたからな。

 …君達を巻き込んでしまって、改めて申し訳ないと思っている」


頭を下げるシアラに、竜司達が慌てて手を振った。

「おいおい!そんなの気にすんなよ!

 まぁ確かに、エリア51上空の時とかシアラにきつく当たった事もあったけどさ、でも事情が分かってからは、少なくとも俺はシアラにむしろ感謝してるんだぜ?」

「…本当か?」

「ああ、だってねーちゃんを救い出す事が出来たんだからさ!

 もしあの時、シアラと出会わなかったら、ねーちゃんは今頃…」

「ええ、私も感謝しているわ。私にとっても明日香さんはとても大事な人だから」

「赤羽、神崎さん…」


「しかし、山科の言う事も一理あるな。

 ”機関”とはそもそも何なのか、いまいち掴みきれん」

東雲がメガネをかけ直しながら言った。


「だしょー?」

「まあな。それに”機関”だけがこの地球でオーバーテクノロジーを独占的に利用しているのも気に食わん」

「確かにそうだよな。

 あの宇宙戦闘の一件で初めて知ったんだけどさ、アメリカやロシアがあんな宇宙艦隊を持ってたなんてびっくりだよな。月面基地とかもだけど」

「もしあんな宇宙船を作る技術が一般にまで普及していたならば、今頃は私達も普通に月や火星に旅行したり移民したり出来ていたかも知れないわね」

「だよね!ジャルとかNTBとかが宇宙旅行パックとか組んじゃってさ、そこのショップで新婚カップルとかにチケット売ったりして」

山科が、フレンチポテトの先をフードコート隣にあるNTBの支店に向けた。


「まあ、今でも既にそう言う宇宙旅行らしきものは予約が始まっているみたいだけど」

「マジで!?」

「ええ、でも大抵は飛行機に毛が生えた程度の宇宙船で一瞬だけ無重力を味わう弾道飛行がメインだし、それですら、その宇宙船は開発途上で実用化の目処は実質的に立っていないのよ」


「例の、エレン・マクセルが立ち上げたスターリーX社はどうなのだろうか」東雲が訊いた。

「あれも、まだまだ無人宇宙船をようやく安定的に運行できるかどうかと言った状況だし、ましてや有人宇宙船の開発には手こずっていると聞いた事があるわ。

 と言うか、そもそもそう言った欧米の宇宙産業はことごとく”機関”の息が掛かってるでしょうから、表立って宇宙旅行どころか有人宇宙船の開発ですら今後もまともに公表する事は無いかも知れないわね」

「確かにな。アメリカの宇宙開発は、表立っては2011年にスペースシャトルが引退してからは有人宇宙飛行は実施されていないと言う事になっている。

 ロシアですら、最近のソユーズ宇宙船は失敗続きというしな」東雲も嘆息した。

「つまりだ、少なくとも例の”機関”の支配が続く限りは、宇宙開発だとか科学技術の進歩は無いって事か」

「少なくとも、表立っては無理でしょうね」


「…そして、そう言う状況が異星人種による地球侵略を招く事になったからな」

シアラの発言に、全員がハッとなった。

「そうだよな。だからシアラ達は…」竜司は腕を組み直した。


「そもそも、”機関”の発祥は例のフリーメーソンやイルミナティのような秘密結社から、だったかしら」

「ああ、我々の調査結果で確定している」

シアラはそう言って頷き、コーラの残りを啜った。

「一体いつ頃からその”機関”があったのかな?えーと、第二次大戦だったっけ、その後からかな?」

歴史に関してはやや疎い山科が、頭を捻って何とか単語を思い出しながら訊いた。


「いや、起源を辿ればもっと前からだろう。

 地球世界史における西暦18世紀頃からと考えられている」

「やはり、イルミナティやパヴァリア結社、もしくは薔薇十字団辺りが大元と考えて良さそうね」

「と言う事は、その時点で少なからぬ数の”レプティリアン”等が組織に入り込んでいた…?」

「そうだろうな。我々の調査によると、そもそも”レプティリアン”と言っても氏族が何種類かあって、昔から地球に住んでいる一派は、いわゆる先行移民団のようなものだ。

 ただ、母星に住んでいる連中とは仲があまり良くなかったらしい。とは言っても、共に地球人を食い物にしようと言う連中であるのは間違いないのだが。

 起源世界線では、そうした母星の”レプティリアン”達は地球側との対立上、しばらくは放置するつもりだったのだが、”ラージノーズ”連中に地球侵攻で出し抜かれるのを恐れて慌てて同盟を組み、共同で地球に襲来する事となったのだ」


「ふーん、異星人側にも色々あるんだねぇー」

「全く呆れる話ね。でも、そこに私たちが付け入る隙がありそうな気もするわ」




「皆様=ちょっと宜しいでしょうか=」

と、会話を遮るかたちで『フェイ』が言った。

 

「ん?どしたん『フェイ』ちゃん?」

「たった今、この建物内に例の転校生が入って来ました。

 明らかに誰かを探している様子です」


「あら、いけないわね…

 それじゃ、一旦ここはお開きにして、外に出ましょうか」

「家具とか買うのどーしよか?」

「ああ、それなら明日でも構わないぞ」

「そうか、じゃあまた次の機会にするか。

 …と言ってもアイツにまた後をつけられても面倒だな」

「それならば=『ラライ・システム』のチューブを介して=皆様をご自宅まで送り届けることも出来ます=」

「マジで?じゃあ、お願いしようかな」




竜司達は、フードコートから各人がバラバラの方向に立ち去った。

そしてトイレの個室に入り、そこから『ラライ・システム』のチューブに吸い上げられた。

チューブそのものは不可視であり、当然中を通過する竜司達も不可視となった。

チューブは建物の中を縦横無尽に這い回り、竜司達を吸い込んでから静かに建物の外へと戻っていった。


一瞬遅れてフードコートにやって来た桜木亜美は辺りをすっと見回したが、竜司達がいた痕跡すら発見する事が出来なかった。


「ちっ…行動パターン解析から、今日は間違いなくここにやって来ると踏んだのに…」


彼女は、またしても自らの追跡が失敗した事を悟った。




ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー




週末の土曜日、竜司達は再びオクウミ達が住んでいるアパートに集結した。

ちなみに、そのアパートの名前が書き換えられて今では「ヤマト荘」となっている。



「お邪魔しまーす」

「おう、とりあえずみんな上がってくれ」


オクウミの部屋に入った竜司達は、一旦居間のソファに座って待機した。

何でも、少し準備する時間が必要らしい。

「そういや、神崎が来てねーな」

「神崎ちゃんなら先に来て一緒に準備してるってさー」

オクウミがあらかじめ淹れてくれた紅茶を飲みながら山科が言った。


それからしばらく待つと、隣の部屋に行っていたオクウミが戻ってきた。

「準備が出来たそうだ。それじゃあ行くか」

「何の準備ですか?」

「まあ、それは下に行ってからのお楽しみだ」




竜司達は、チューブのエレベーターで地下の小部屋に降り、

さらに大広間を経由して分岐する洞窟のような回廊を、オクウミの案内に従って5分ほど歩くと

下に降りる階段が始まり、一同はそこをしばらく下っていった。

すると、その先に大きな空間が広がっていた。

そこはさっきまで歩いて来た回廊と直交するような広いトンネルとなっている。

まるで、古代に作られた地下鉄の駅のようだ。


すると、トンネルの向こう側から神崎を伴って現れたサーミアが、いつものように恭しく竜司達に挨拶する。

「やあやあ、皆様。

ではではこちらに来て頂けますか?」

サーミアが指し示す方角を見ると、何とそこに鉄道のような細長い乗り物らしき機械が止まっていた。




「”紀元前二十世紀鉄道エンシャント トレイン”へようこそ」

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