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8-5 アパート下の地下遺跡

申し訳ありません、パソコンが完全にダメになってしまったので

投稿が2週間分遅れてしまいました。

今回は別の端末で何とか投稿を試みています。

パソコンは恐らくもう買い換えるしかないでしょうね...

「まあ、お茶はこのくらいにして、今度は下に降りようか」




オクウミの提案で、一同はエレベータールームに入った。

ただシスケウナは「作業があるから」と上に残る事になった。

ついでにティーセットの片付けもシスケウナにお願いしておく。


「おぉっ、この感覚は…」

竜司が足元を見ながら声を上げた。

チューブの中に入った途端、まるで地に足がついていないような感覚になったのだ。

以前、竜司達が『ラライ・システム』にある空中の司令センターへ行くのにこんなチューブに乗って行ったのだが、それと全く同じだ。

「ああ、『ラライ・システム』がこの中にまで入り込んでるからな」

どうやらチューブの中は力場が働いているので、中の物は全て浮遊するように出来ているらしい。


全員が乗り込んだのを確認してから、オクウミが空中に表示されたパネルを操作すると、スゥッとゆっくりエレベーターで下降するような感覚があった。




「着いたぞ」

オクウミがまずチューブの外に出ると、竜司達がそれに続く。


「おあっ、これは…」

そこは石のブロックで造られた小部屋になっていた。

以前に竜司達が入ったことのある、稲荷塚古墳の地下と同じような作りをしている。

しかし以前と異なるのは、まるで石全体がぼうっと白く光っているので、部屋全体がうっすら明るく見通せるのだ。


「こっちだ。付いて来い」

オクウミが指し示す方向には、廊下が続いていた。




「一体、この遺跡は何なんですか?」


まっすぐ続く廊下を歩きながら、神崎がオクウミに訊いた。

「確か稲荷塚古墳は紀元7世紀頃の遺跡だったはずですが、その当時にこんな地下遺跡を建造する技術があったとは思えません。

 当時のオクウミさん達、もとい”帝国”の人達は、ここで何をやっていたのですか?」


「ふむ、そうだな…どう説明したら良いか…

 まずそもそも、我々がこの並行世界の地球日本に干渉する目的の一つが日本を救うためである、というのは話したと思うが」

神崎が頷くのを見て、オクウミが続ける。

「ある一定の期間をおいて、我々時空探査局はこうした並行世界の地球日本に断続的な干渉を行っていた。

 その干渉の時に築き上げたものの一つが、この遺跡なのだ」

オクウミは、壁に手を触れて天井を見上げた。


「断続的?なぜ、現代まで継続できなかったのでしょうか」

「継続的ではないのは、ある種の時空構造の影響で一定期間以上の干渉が難しいという点が挙げられる。

 そして一旦、時空同士のリンクが途切れると、その並行世界の座標情報が散逸してしまうのだ」


「ふむ?どう言う事?」いまいち理解できず、竜司が頭を傾げた。

「…つまり、言い換えるとネット上のサイトにアクセスする為のアドレス情報を紛失してしまうと、もう一度アクセスする事が出来なくなってしまう様なものかしら」

「ふむ、21世紀地球での情報ネットワークのシステムで例えると…まあそうなんだろうな」

オクウミは首肯する。

「そして、座標情報の再発見にはとても手間が掛かる…だからこそ、我々はシアラ達に時空探査を命じているのだがね。

 話を戻すと、我々が過去に地球日本へ干渉していた時期は、今からおよそ5千年前から2千年ほど前までの約3千年間の事だった。

 そして同じ頃、例の地球侵略を企む異星人達が最初の大規模な干渉を仕掛けてきていた」


「ほぅ、オカルト雑誌の「ムムー」に出てくる超古代文明の話と通じるものがありますね」

東雲がメガネを支え直しながら言った。

「その超古代文明だが、我々の調査では過去の地球において、全地球レベルでの興亡が数回あった事が判明している」


「ナ、ナンダッテー!!

 …は冗談として、やっぱりでしたか」東雲がメガネを光らせた。

「ふふ、面白い奴だな東雲君は。

 まぁ話せば長くなるが、直近で言えば約1万2000年前の最終氷期終焉時と、約4000年前においてそれぞれ現在の地球に匹敵する文明が滅んでいる」

「その1万2000年前って、やっぱりムーとかアトランチスとか?」

山科が訊いた。

「その伝説は知っている。実際には大規模な大陸が沈没した記録はないが、最終氷期の終焉と共にいわゆる海退期に増えていた陸地が全て沈んで現在の海岸線まで下がった訳で、その沈んだ海岸付近の陸地部分にあった文明が根こそぎ滅んだのだ」

「その時の遺跡って、まだ残ってるんでしょうか?」

「当然残ってるだろうな。ただし例によって”機関”が証拠を隠蔽し、更に古代文明の遺物を収集してその技術を復元しようとしているだろうがね」


「まるで、どこかのマンガに出てきたような話だな。マッスルスーツ欲しいぜ」

竜司が力こぶを作りながら嘆息した。

「あら、赤羽くんはもう”能力”を持ってるじゃないの。

 使い方次第では、あの主人公以上のパワーとスキルが引き出せると思うわね」

神崎が頭を振りながら竜司を諭した。




「で、その”能力”の出番なのだが。

 神崎君、ちょっとこちらに来て欲しい」


オクウミの言葉に、神崎が怪訝な顔をして前に出た。

神崎達は既に廊下の先にある、ちょっとした広間のような部屋に到着していた。

その一方の壁に凹んだ部分があり、まるで何かの祠か祭壇があったように思える。


「ここの中に向かって、小さなゲートを開けて欲しい。

 ゲートの先は、この壁のだいたい50cmほど向こう側にある小さな空間だ」

オクウミの指示に従って神崎が右手を掲げて念じると、ちょうど手がくぐり抜けられる位の光る輪が目の前に出現した。


全員がおおっと感嘆の声を上げる中、オクウミは躊躇する事なくそのゲートの中に手を突っ込む。


「あった、これだ」

と、オクウミが手をゲートから取り出すと手の中には、小さな鍵のようなものがあった。

表面は銀白色で、だいたい150mm位の長さがある。

材質が金属なのかプラスチックなのかいまいち分からないが、よく見ると表面に文字か文様のようなものがびっしりと彫り込まれている。


「これは…何ですか?」

「ああ、これはこの地下遺跡を本格的に起動させる為の鍵だ」

そう言ってオクウミは、鍵を全員に見せた。

「起動、と言うと?」

「実を言うとな、『ラライ・システム』だけでは地下遺跡の全ての機能を起動させる事は出来ないのだ。

 地下遺跡そのものは、『土地基盤システム』という、『ラライ・システム』の元となった『防衛免疫システム』とはまた異なる機構によって管理調整されているのだ。

 しかし現在では、その機能は殆どが封印されている。そこでこの鍵を使って、起動させる必要があるのだが…」

オクウミはそこで一旦言葉を区切った。


「ふむ…そうだな。

 神崎君、ちょっといいかね?指を差し出して欲しいのだが」

神崎がまたも怪訝な顔をして、何気無く右手の指を差し出すと

オクウミがいきなり、どこからか取り出した針をその人差し指に刺した。

「っ痛!?」

「おっと、いきなり済まない。

 ただ、ほんの少しだけ君の血が欲しかったのだ」


「まさかオクウミさん、吸血鬼だったの?」山科が驚く。

「オクウミさん私の血でしたら幾らでも差し出しますのでどうぞ!!」

なぜか東雲が興奮しながら襟元を開いて自らの首をオクウミに見せた。

「ははは…何をやっているのだ君は」


オクウミは、血を滴らせた神崎の指を、その鍵と接触させた。

「??」神崎が目を凝らすと、何といきなり鍵の表面が光り始めた。

「オクウミさん、これは…?」

なおも鍵を神崎の指に接触させ続けるオクウミに、冷静さを保ちながら神崎が訊いた。

「大丈夫だ、すぐ済む」


そして、数分が経過して鍵の光が脈動しながら落ち着いたかに見えた瞬間、

フッ!!と一瞬にして鍵が神崎の右手に吸い込まれるようにして消失した。


「よし、完了だ。

 おめでとう。これで君はこの『土地基盤システム』の管理者となった」




「えっ?えええ??」

珍しく動揺した神崎が、オクウミの顔と自らの右手とを交互に見た。

オクウミは、静かに頷くのみだ。


「おっ、成功したのですね!?素晴らしい事です!」

竜司達が、声が聞こえて来た方向を見ると、廊下の向こう側からサーミアが歩いて来ていた。


「神崎さん!!貴方はこの『土地基盤システム』の管理者として元々適合する資格をその貴方の遺伝子及び情報伝達子の中に有していたのです、それを私のカリカキュリエ=75ストールマークベン方式の解析及びアルカイドレバイドレ95738型診断によって明らかにされた時より私は貴方の事を密かに注目しておりましたのですし、更にケケウゲン結晶型事業体17−39局のプレパラント情報海との特別干渉によってその情報伝達子の245次元量子情報マトリクスから47万8千通りの組み換え情報と照らし合わせt」

「あー分かった分かった!もーいーから。

 とにかくサーミアが言いたいのは、神崎君は特別だったと言う事だ」

喋りたい放題に喋ろうとするサーミアの口を塞ぎながら、オクウミが要約する。


「…どう言う事かいまいち解りかねますが、ともかくそれは一旦置いておいて、それで私は一体どうすれば…?」

神崎はもう完全に訳のわからないといった表情になっている。


「こほん、えーとですね。

 まあ神崎さんは、とりあえず気にせずに居てもらえたら良いかと」

居ずまいを正したサーミアが、神崎を諭した。

「は、はぁ…」

「まぁ、実際の『土地基盤システム』の制御は我々の方でやれるからな。神崎君は、認証だけしてもらえればありがたい。

 システムに介入するには、その都度で認証が必要だからな。面倒だが」


「それで、この『土地基盤システム』を使って何をするのですか?」

「うん、それはもっともな質問だね。

 実際我々は、この地球日本を防衛する為には『ラライ・システム』だけでは不十分だと思っていた。それだけでは無い。今後の我々”日系人類銀河帝国”とこの地球日本との交易をする為の基盤も必要だ。

 そこでこのシステムの機能を最大限活用すれば、それらを同時に解決させる事が可能だ」


「防衛と、交易ですか?

 それがこの地下遺跡を使えば可能と言う事ですか」

「ああ、そうだな…一つ訂正しておこうか。

 実は、この地下遺跡は地下にあるようで実は地下には無いのだ」


「?どう言う事でしょうか?」

「君達、以前に稲荷塚古墳の地下に入って、シアラを助けたと言ったね?

 その時どう思った?その遺跡の広さについて」

「あー…そう言えば、なんか地上の古墳に比べて、妙に広いなって思いましたね。

 あと廊下とか、ここみたいに長くって…」

「…その、もしかして」神崎が何かに気づいた。東雲と山科も目を見合わせる。


「その通りだ。この地下は、既に異次元と繋がっている」




「マジっすか!?」竜司が慌てて周りを見回した。

「言われるような異次元っぽくは無いですけど…」

「ふふっ、まあそうだな。異次元に半分足を突っ込んだ状態と言えば良いだろうか」


「つまり、どう言う事ですか?」

「ここは異次元と通常空間との境界線に位置していると言う事だ。

 まあ分かりにくいだろうな。これを理解するには、高度な位相時空論の知識が必要だからな」

「そうですね、こちらの21世紀地球日本でも既に位相空間論はかなり高度なレベルに達しているはずですし更には量子時空理論の体系化に手をつけ始めた段階でこれに位相的場の理論や位相的弦理論を組み合わせて量子トポロジー論や場の量子論に発展させる為の数理的契機を模索している段階でありますので、そこに対称性の破れに関する基礎理論や宇宙大規模構造の観測解が得られれば更なる発展をt」

「まあ、それは置いておいてだ」またもオクウミがサーミアの口を塞ぎつつ

「これで何が可能かと言うとだ、まずはこの『土地基盤システム』を日本列島全体に拡張する事が可能だ。そうすると、例えば日本のある地点から、遠くの別の地点まで一瞬で移動する事も出来るようになる」


「うーん、それって高速道路みたいなもんかな?」山科が言う。

「まあそうだな。

 あと、この地下遺跡の時空構造を一時的に地表へ投射する事も可能だ」

「?」

「つまりだな…例えば地図が全く使えなくなるくらいに地上の人間を迷わせる事ができる。

 言わば、時空の迷宮ラビリンスだな。

 既にこの多摩付近の地表は、一部そう言う構造になっている」

「あっ、もしかして以前に”機関”のエージェントを撃退したのって」

「そうだ。こいつのお陰だ」

オクウミは遺跡の石壁をペチペチと叩いた。


「それで、交易というのもそのワープみたいな機能を使うのでしょうか」

神崎が訊いた。

「いや、単にそれだけでは無い。

 君達も、かつて私の『ディアマ=スィナ』号で見ただろう。

 ”日系人類銀河帝国”では、通常空間だけでなく人工次元世界も利用していると」

「それってもしかして…」

「そうだ。例の通商結節体ゲートワールドだ。

 こいつを、地球日本の地下とダイレクトに接続する事ができる。

 というか既に、一つだけ通商結節体が接続済みなのだ。

 あとは、神崎君の認証によってそれを起動させるだけだ」




「ええっマジで!?あんな凄いのが!?」

「あれって一つの宇宙みたいなものですよね。

 そんなものがこの地球と連結しているなんて…」神崎も頭を抱えた。

球状になった異次元空間の内側に人が住めるように調整された、超未来のスペースコロニーと言っても良い代物だ。

しかし、正に別の宇宙がこの地球と隣り合わせになっているようなものなので、何だか色々と心配になってしまう。


「ああ、問題ない。

 なぜなら、ああいった異次元空間はどこの天体にでも自然と”湧いて出る”ものだからだ。その内の一部が人工だからと言ってなんの問題がある?」


「し、自然に!?」

「そうだ。

 例えば君達なら、バミューダトライアングル等は聞いた事があるだろう?

 あれは地球に出来た天然の、異次元への出入口ポータルだ」

「な、なるほど…」

そう言われてみれば確かに、この地球上ではバミューダ以外にも多くの地域で突然に人間や物体が姿を消したり、その逆に忽然と現れたりといった事例に事欠かない。

その多くは誤認や錯覚、または他の自然現象や捏造だったりするのだろうが、オカルト雑誌のネタでしかないと思っていたのに、まさか本物も存在するとは俄かに信じ難かった。


「その、自然に湧いてるとかいう異次元空間ってどうなってるんですか?

 どっか別の星とかに繋がってるとか?」

「ああ、大概は時空を超えて別の時代の地球に繋がってたりするだろう」

「つまりそこから恐竜とか首長竜とかが出入りしてるのかな?」

「まあそうだな。ごく稀に、未来の地球に繋がったりもするようだが」

「なんかスゲえな…」

「もちろん、そうした連結はタイムパラドックスを引き起こすので、その場合は初めから並行世界に繋がっていると考えた方が良い場合もある」


「ふーん、でもそんなワンダーランドになってるとか他の地球人とか知ってるのかな?ほら、例の”機関”とか」

山科が石室の天井を仰いだ。

「恐らく、この21世紀地球での各国政府もその事に気付いているだろうが利用云々以前に、そもそも制御する事が出来るのかといった基本的な事はまだ理解できていないだろうな」

「なるほど…でも地球人以外の異星人とかはどうなんでしょうか」神崎が訊いた。

「うむ、”ラージノーズ”…”グレイ”とも呼んでいる連中や”レプティリアン”なんかは大体が種族の秘伝として伝えていて、利用はワープがせいぜいといったレベルだろう。

 つまりは、それ程にこの時空構造の究明というのは難しいものなのだ」


「でも、オクウミさん達みたいな”帝国”の人達はそれを難なくやってのけてると」

「まあそうだな。我々”帝国”いや”宇宙日系人類文明体”や”星間種族連合”にとってはごく一般的な、銀河文明を支える基盤インフラの一つだ」

「ほぇー」


「それで、その通商…ええと」

「通商結節体だ」

「それは今、どこにあるんですか?あとどうやって使うんですか?」

「その事については、また後日に詳しく話すとしよう。

 さて、そろそろ地上に戻ろうか。もう夕方だしな」

オクウミが腕時計をちらっと見た。

どうやら地球製の腕時計らしく、竜司達から見てもやや古めかしいデザインのアナログ型だ。


「神崎君、今後は度々こちらにきてもらうかも知れない。

 大丈夫かな?」

「もう認証されてしまってからでは、否やとは言えないでしょうね。

 分かりましたわ」




ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー

 



先ほど通ったエレベータチューブから地上の1階に戻ると、

オクウミはエレベータールームの隣に通じる扉を叩いた。

「おい、そろそろいいか?」

「え?あ、ちょ、ちょっと待って下さい」


ガタガタッと物を激しく動かす音がして、しばらくするとその扉がそっと開いた。

「…えっと、ど、どうぞ…」

扉の向こう側でシアラが、渋々といったていで呟いた。




「えっと、お邪魔…しまーす…」

「本当に入っていいのかしら?」

「ええ、本当ならもう一日欲しい所でしたが」

シアラが、若干ムッとしたように答えてからオクウミを睨んだ。


「おいおい、この地球日本で暮らすのに必要なものが知りたいから教えてくれと言っていたのはお前の方だろう。だが私ではこの地球日本の高校生がどういう暮らしをしているか分からん。

 だから、見た目年齢が同じの彼らを連れてきたのだが?」

「…うむぅ」


シアラの部屋は普通に社会人1年生とかが住んでいそうな1DKの間取りで、ただ白く綺麗な壁紙やペンキ塗りたての扉など、いかにもリフォームしたてな感じだ。

しかし床はまだ荷物用の箱だらけで雑然としている。


「さて君達。同じ高校生として年相応の生活をするのに何が居るか、君達分かるかね?」

部屋をざっと見回して、神崎が簡潔に答えた。

「箱に入っているのは私物として、とすると什器がまず足りないようですが。あと、炊事洗濯掃除その他の家電器具一式もですね」


「まあ言われてみればそうだな。

 シアラ、手配してるのか?」

「あー…いいえ、まだです…」

「全く、基本中の基本だぞそれは。高校生云々以前の問題だぞ。私の部屋も見てるんだからそれくらい分かるだろうが。

 とにかく買え、今すぐにだ」

オクウミに叱られてシアラはしゅんとする。


「いえ、今日はもう遅い事ですし、それは明日にしては如何でしょう」

「夜飯と風呂くらいだったらまた俺ん家で賄ってやるよ」

シアラが可哀想になったので神崎と竜司がフォローに入る。

「えっ、いいのか?」

「大丈夫大丈夫、母さんも春乃もシアラが最近ウチに来なくなって、それでちゃんと栄養取れてるかって心配してたしさ」

「そうか、それではお言葉に甘えさせてもらおう。ありがとう」


「古代人に栄養状態を心配される未来人ってどーなの」

山科が思わず苦笑した。




ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー




「…以上、報告終わる」

「了解」




聖蹟桜ヶ丘の駅近くにある廃屋寸前のオンボロビルの一室にて、夕闇の中で机の上にあるノートパソコンの液晶表示だけがぼうっと灯る状態で、定期報告を小さな声で伝えた桜木亜美だったが、

極東支局からの返事は相変わらず素っ気ないものだった。

しかし支局長の次の発言に、彼女は一瞬緊張した。


「では次の任務を伝える。

 明日から1段階上に進んでもらう」

「…はい」




「具体的には、君の”能力”を用いて…」

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