『国際UFO研究機構・定期報告 二』
(3)「F基地事件」概要
・1957年10月某日夜、 アメリカ合衆国の某州にある砂漠地帯付近に、未確認飛行物体が不時着したらしいとの報告がCONAD(中央防衛航空軍基地/NORADの前身)の方から発され、当時のNACA(航空諮問委員会/NASAの前身)の調査部と空軍技術開発局の特派員からなる合同部隊が墜落推定地点に派遣された
・目標のUFOはすぐに発見され、それが胴体着陸のように暫く地面を滑走して停止した状態である事が確認された
・UFOの頂上部には操縦席らしき部位が露出し、席に座った状態で気を失っているらしい搭乗員1体も発見された
搭乗員は明らかに女性型のヒューマノイドで、顔立ちからも地球人に非常に近い印象であった
・UFO及び搭乗員は直ちに隣の州にある、極秘調査の設備が整った「F基地」まで輸送され、「F基地」内部ではUFO機体の調査班と搭乗員の調査班が編成され、早速詳細な調査研究が行われる事となった
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・UFO機体調査班は、機体をハンガー26という地下ハンガーに運び入れて調査を開始
・機体は全長14.5m全幅16m、重量6.7tの飛行機形態
全体として当時開発中のA-12戦略偵察機に近いブレンデッドウィングボディである
・全体が淡いエメラルドグリーンの金属で覆われていて、所々虹色やブルーに見える箇所もある
またコクピット周辺以外接合線らしき箇所は見当たらなかった
・主翼以外に機体前部にカナード翼、尾部に可変らしき尾翼が付いていて、コクピットは機体中央の上部にある
・コクピットは恐らくキャノピーがあったと思しき接合線に囲まれ、コクピット内部は前後2m程と広めである
・内部のパネルは機体外部と異なり、純白の樹脂のような素材をベースにメッキのような銀色のパーツやヘアラインの入ったシルバーパーツが洗練されたデザインで組み合わせられている
しかし操縦系統はシートの前方に操縦桿らしきグリップが1対あるだけで、メーターやボタンの類は殆ど見当たらなかった
・輸送した兵士の報告によると、機体回収寸前までコクピット内部の空中に光る文字や図式からなる表示が閃いていて、それが全て赤い表示で埋まった直後に全て消失したという点から、当時研究が始まったばかりのホログラムによる表示システムではないかと推測された
・コクピット中央にはシートがあり、やはり純白とシルバーのパーツで構成されているがシート自体は柔らかい素材である
・内部の幾つかの箇所に、文字か標識らしき記号の集まりが記されているのが確認された
この記号は、後述の搭乗員衣服にも同じものがある事から明らかに文字であると思われる
しかしその表示情報及び文法には不明な点が多過ぎて、解読には時間が掛かるものと予想されたが、過去にGHQで日本に派遣された士官の意見では、一見して日本の文字体系に似ているとの事である
・機体及びコクピットのいかなる部品にも、どのような手を尽くしても分解どころか傷一つ付ける事が出来なかった
アセチレントーチや銃弾、ダイヤモンドカッター、当時極秘開発中だったレーザーを照射しても不可能だった
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・搭乗員調査班は、搭乗員(以後便宜的に「彼女」と呼称)を解剖検査室に運んで調査を開始
・彼女は身長157.4cm、体重43.5kgで、体型は華奢ながら明確な女性的特徴を有す
・手や足、それぞれの指の数及び長さや向きなど生物学的にも地球人類と全く同等で、欠損または付加部位は無い
・顔立ちは幼げながらもよく整っていて、骨相学的特徴から北東アジア系民族に近似である
・年齢10代後半~20代前半と思われる(北東アジア系民族は童顔が多いので注意が必要)
・毛髪は肩甲骨辺りまでの長さがありストレート、色は黒だが艶があり、光に透過させると虹彩を放ち紫色に輝く
・肌の色は黄みがかった薄いピンク、マンセルスケールで1.8YR-7.0/4.5、これも北東アジア系民族に近似である
・彼女は全身がピッタリとした黒と紫のウェットスーツのようなボディウェアを身に纏い、その上からゆるやかな同色系統のフライトジャケットらしき服を羽織っている
手には同様にピッタリとしたグローブ、足にはブーツを装着している
・グローブやブーツは、裾の付近にあるボタン状の部品を押す事で簡単に脱がす事が出来た
フライトジャケットについては言うまでもなく容易に脱がせる事が出来た
しかし、ボディウェアについては皮膚と完全に接着したようになっていて、刃物などを使っても脱着させる事は出来なかったし、ボディウェア自体にも傷を付ける事は不可能だった
・また、彼女自身の身体にも傷一つ付ける事が出来なかった
外科用メスやハサミ、注射針などを使ってもいかなる侵襲的検査を受け付けず、それどころか髪の毛一本、爪先1ミリとも採取する事が出来なかった
執刀外科医の報告によると、刃を皮膚に突きつけるとすぐに反発力が生まれて刃が弾かれてしまうという
また、鼻や耳の穴に器具を通そうとしても同様に弾かれており、口を開かせる事も不可能だった
・呼吸マスクを使って彼女の呼気を採取する事に成功、成分は殆ど地球人の吐く息と同じく窒素とCO2が主成分
しかし笑気ガス及び他の生化学的侵襲性気体にも一切反応は無し
・外す事の出来たグローブやブーツ、ジャケットについては部品研究班に回す事にして、それ以上の調査は、彼女が自然に目覚めるまで待たねばならなかった
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・UFO機体及び彼女の収容から27時間後の午前8時頃、解剖検査室の医療機器に備え付けられた警報が作動
直ちに解剖検査室に医学スタッフ数名が急行すると、彼女が目を覚まし上体を起き上がらせていた状態で発見された
・すぐにスタッフが彼女の側に駆け寄って身体を押さえようとしたが、彼女が何かを叫びながらスタッフ達に対し手をかざすと、スタッフ全員の身体が急に硬直して身動きが取れなくなった
・後から来たスタッフが必死に身振り手振りで彼女に危害を加えないという事を伝えようと試みると、しばらくして彼女は心を落ち着かせたかのように手を下ろし、直後にスタッフ達の硬直が解けた
・その後、スタッフは意思を疎通させようとジェスチャーの他に絵を描くなどの様々な試みを採った
彼女も、恐らく必死になって未知の言葉で手振りも交えて何かを伝えようとしていたようだった
しかし後から来た調査員の一名(GHQで日本に派遣された士官)が、彼女の言葉が日本語かそれに類する言語だと直感し、他基地から日本語を解するスタッフか兵士を呼ぶよう将校に意見具申した
・早速昼前には隣接する空軍基地から日系人の看護婦が連れてこられ、臨時で通訳の任を与える事になった
すると、すぐに彼女の言語について、訛りがあるものの日本語そのものである事が判明する
・調査員や臨時通訳からの意見により、コミュニケーションが図られやすい環境を整えるため、彼女の身柄を解剖検査室から隔離可能な病棟の一室に移し、そこで撮影や録音など記録機器を備え付けた
・移動後、落ち着いた状態になった彼女は、まず空腹を訴えて何か食べるものが欲しいと要求
NACAの指示により、最初に捕虜用に特別調合された自白誘導剤や麻薬が入ったオートミールと水を与えてみると、彼女は匂いを嗅ぐ仕草をした後に、これは何か薬が入っているから食べられないと言って拒否
その反応から薬物による肉体的ないし精神的操作は現時点では困難だと判断され、次には士官食堂で一般的に供されているシロップとクリームが添えられたパンケーキとミックスジュースを与えると、喜んだような表情にて、味わうように食べる様子が確認出来た
・これ以降、ようやく彼女と本格的なコミュニケーションが図れるようになった
また、この時に彼女の目と口内を観察する事が可能になる 瞼はぱっちりとした二重で瞳の色は黒だが、虹彩は髪の毛と同じく光を当てると紫色に透過して見える
また光の加減によっては更に虹色に変化する(いわゆる構造色と推測)
口の中は地球人と同じ歯や舌を備え、歯式も地球人と同じく上下顎とも2-1-2-3と確認
・その後、通訳が彼女に対して他に何が食べたいかを訊くと、牛肉のステーキかフライドチキンが食べたいと要望
地球の食事に付いての情報源を訊くと、宇宙からでも地球のテレビや電信電話の電波を受信し、そこから得ていると回答し、一度こういった地球の食事を体験してみたかったと話していた
・彼女の名前を訊くと、自身のことをシアラと名乗る
それは個人の名称なのか、また姓はあるのかと訊くと、本来は姓名を全て含めるともっと長くて地球の言葉では発音できない部分もあると答えた
また自身の出身は日本ではないのかと訊くと、それは違うとの回答
彼女の種族と日本との関係を訊くと、その質問には答えられないと言った
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・これ以外に以下、彼女との質疑応答
・Q)彼女の種族は現在地球にどの程度来ているのか
A)数千名程が地球観測の任に着いている
・Q)基地はどこにあるのか
A)正確な位置は答えられないが、主に月面と地球近傍の宇宙空間にある
・Q)北米以外にも地球各地を観測しているのか
A)そうだ、特に紛争や環境汚染が発生している地帯を調査している
・Q)米政府以外に、他国の政府や機関と接触しているか
A)特にしていないし、現時点で行う予定はない
・Q)彼女達の目的は何か
A)答えられないが、地球人による野放図な軍拡と地球環境破壊を憂慮している
・Q)彼女達の母星はどこにあるのか
A)答えられないが、非常に遠い所にある
・Q)母星にはどの程度人間が住んでいるのか
A)正確には答えられないが、地球とは比較にならない数が居る
・Q)技術レベルはどの程度か、ワープや反重力、宇宙エネルギー等について知っているか
A)答えられない
・Q)(写真などを示して)この異星人達を知っているか
A)知っていて、彼らの活動を監視している
・Q)他の異星人達とは交流はあるのか
A)交流していないし、彼らは自分達の存在をあまり知らないだろう
・Q)他の異星人達とは対立しているのか
A)将来的にその可能性はある、彼らは欲望を剥き出しにしている
・Q)彼女達は将来的に地球をどうしたいのか
A)答えられないが、地球文明へ干渉する場合も有り得る
・Q)それはどういった場合か
A)地球自体に大災厄が発生した時か、地球文明が危機に瀕した場合だ
・Q)米政府の代表と接触を望むか
A)こちらからは望まないが、そちらが望むなら検討する
・これ以外にも幾つかの質疑応答が行われていたが、この後に発生した事件により調査資料が紛失した為に詳細不明
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・この質疑応答のあった翌日には、彼女をUFOが収容されているハンガー26へと連れて行き、彼女にUFOの状態を確認させた
・彼女は、UFO機体の周囲を一回りして表面状態を綿密に確認し、またコクピットに昇ってコンソールの状態も確認した
この時に彼女が何を行ったのか不明だが、彼女が手をコンソールに翳して指を細かく動かすと、コンソールの上の空間に、例のホログラム表示が瞬く間に複数浮かび上がった
彼女がそれに触れながらまた指を細かく動かしていくと、表示が目まぐるしく切り替わっていった
恐らくUFOのシステム状況が表示されていたものと考えられる
・これについても撮影スタッフが彼女の近くに寄って8mmフィルム等にて子細を動画撮影していたが、後に紛失
・一連の作業が終わると、彼女はUFOの状況が問題ない事を確認出来たらしく安堵したように微笑を浮かべた
・UFOについて彼女に飛行原理や内部構造の詳細を訊くも、最初は頑なに回答しなかった
しかし、この日新たに派遣されていたNACAの調査官が、彼女自身の態度如何では今後の食事が保証出来ないと脅迫すると、悲しそうな顔を浮かべながら、少しずつではあるが技術情報を語り出した
・UFOの飛行原理は基本的に重力を制御する機関によって作動し、それは所謂素粒子間に働く第5の力を用いる
また急激な機体運動によって掛かる慣性の制御も同様の機関で行う
UFOのエネルギー源は真空中に充満する虚数量子エネルギー(別の異星人達は”宇宙エネルギー”と呼称)を特殊なジェネレーターを使って抽出しており、それを電気や光に変換して機体内部の各装置に配している
またワープ機構も存在し、通常の三次元空間に直行する異次元空間を通過する事で瞬間移動も可能
・コクピットは予想通り、操縦時に物理的なキャノピーが張られて真空中や変温変圧下での移動が可能となる
操縦には電子計算機を遥かに進歩させた、所謂人工知能とも呼ぶべきシステムがサポートし、高度な航法技術を要求する恒星間航行を容易い物としている
・これ以上については、彼女も専門技術を持たないから知らないとの旨で聞き出す事が出来なかった
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・UFO収容から3日後の未明、突如としてF基地上空に新たなUFOが飛来した
・この新手UFOは機体全体が発光していたが、形状は格納中のUFOとほぼ同機種ではないかと思われた また機体を覆うようにバリアーかオーロラのようなものが発光しながら取り巻いていた
・新手UFOは暫く上空をホバリングしていたが、ハンガー26の付近上空に移動すると 突如として強力なレーザーのような光線を真下に向けて照射し、たちまちハンガー26の直上にある施設群が蒸発 ハンガー26自体と収容されていたUFOが露出させられた
・F基地の警備兵や隣接する空軍基地の駐留部隊が直ちに応戦したが、弾丸や砲弾などが新手UFOには一切届かず
・さらに新手UFOが更に青白く光るビームを照射すると、兵士の所持している武器がたちまち蒸発し、また兵士達は意識を失ってしまい、更に他の戦車や自走砲等の対空兵器群も急に作動しなくなってしまった
そして基地全体の電気設備なども完全に機能を停止し、ブラックアウト状態となった(所謂”EM効果”と推測)
・新手UFOは静かになった基地内に着陸すると、中から一人の搭乗員が姿を現した
・僅かな目撃者の報告によると、やはり東洋系の少女の様な顔立ちで、服装等は先の彼女と同様であり、彼女とは異なりショートヘアの白髪で、大きな銀色の瞳を時折赤く瞬くように光らせながら、銃のような長物を構えて周囲を警戒しながら建物の中に入って行った
そして、暫くして建物内から再び姿を現すと新手UFOに戻り、再びそれは飛び上がっていった
・更にはハンガー26に格納されていたUFOも浮上を始め、2機のUFOは上空で合流した後に、音速を上回るスピードで空の彼方に飛び去ってしまった
・F基地はその直後に各所で火災が発生し、そして基地の電気系統機能が完全に回復に至らないままに施設全域に燃え広がり、UFOや彼女の収容時に取られていた詳細な記録や調査資料も全て焼失してしまった
・わずかに残った資料及び目撃者証言は、後にまとめられて空軍技術研究局直下の記録書館にて厳重に機密保管された
関係者や目撃者にも厳重な箝口令が敷かれ、最終的に事件そのものが封印され忘れられていった




