5-4 復習
オクウミ達との会見を終えて、宇宙船の外に出た時には
もうすっかり日も暮れてしまっていた。
ベランダから眺める夕日と、明かりが付き始めた多摩ニュータウンの街並みが、普段見慣れているはずなのに、今はとても感慨深く思える。
まるで長い間遠い国に旅に出て、今ようやく故郷に戻って来たような気分だ。
それは竜司だけでなく神崎達も感じていたようで、全員がしばらくベランダの手すりにもたれかかって夕日を見つめていた。
しかし、ベランダから赤羽邸に入り、居間のソファに座り込んだ時にはもう全員がぐったりしたようにソファに体を沈めた。
全員があの体験をした事によって、それ程へとへとに疲れていたのだ。
「はぁ…凄かった~」山科がソファに突っ伏したまま足をバタバタさせた。
「うむ…まるで宇宙一周でもしてきたかのような気分だ」東雲も、ソファにめり込ませた体を何とか捩るようにうなずく。
「まあ、確かに事実上宇宙一周というか、宇宙の歴史を一気に生で見たようなものだものね、ものすごい情報量だったわ」
春乃から手渡されたコーヒーを飲んで落ち着いた神崎も、珍しく合意した。
「ってかさ、あの話を聞いたのは、俺達がこの地球上では最初って事だよな…」竜司が天井を見上げる。
「そして、宇宙情勢に関してこれ程までに膨大で重大な情報を得ている地球人も私達だけ、よ」
「えーー、やっぱり行きたかったのです!」全員にコーヒーを配りつつ、4人の話を聞いていた春乃がちょっとむくれる。
「ぶー」沙結も同じくむくれている。
「まぁま、仕方ねーよ。二人は昨日の分からの宿題が溜まってたし。そもそもオクウミさん達の素性が知れなかったんだからな。念のためだったんだよ。それにお前達にはちょっと理解出来ない話ばっかりだったし。っていうか俺達も、ちょっとまだ理解が追いついてないっていうかさ」
「仕方ないわね。赤羽くんは脳がこの蜜柑程度しか無いものね」
神崎がテーブルの上にあった蜜柑を手にしてからかった。
「おい…ってか、うちに蜜柑なんかあったっけ?」
「シアラさんに食べさせる為に買ったんですー!地球産の果物とか食べさせてみたいのです!」
「ああ、地球産か。そう言えばシアラは?」
「今は自分の船に戻っているわね。夕ご飯の頃には、明日香さんを連れてこの家に来ると言っていたわよ」
「そーいや、ねーちゃんの具合はどうなったかな?」
「シアラさんも何も言ってきていないし、とりあえずは大丈夫なのでしょう」
「そうか…そう言えばシアラの船にも最先端の医療設備が整ってるんだったな」
竜司はオクウミ達が話していた内容をもう一度じっくり思い出す。
何しろ、彼女達は平たく言うと未来人…正確には、別の世界線における日本人の末裔という話だった。
そして彼女達は、その世界線における途方もなく巨大な銀河文明からこちらの世界線にやって来て、この日本と地球を、侵略してくる異星人から守りたいのだというのだ。
しかし果たして、彼女達を全面的に信じて良いものなのだろうか?
そして自分達は、その計画だかに参加すべきなのだろうか?
竜司が考え込むのを察したのか、神崎が呟いた。
「オクウミさん達の提案、本当に考えさせられるわね」
「全くだ。確かにオクウミさん達の提案ってすげー魅力的なんだよな。
俺だってあんな異星人によって地球侵略される所なんて見たくねーしさ、
それに、その準備段階として日本社会を変えるみたいな事を言ってただろ?ていう事はさ、今の日本での困り事っていうか面倒事も解決してくれるって事なんじゃねーのかな」
「そうね…」
確かに、言われてみればと神崎も思い至る。
竜司もそうだが神崎も、最近は特にこの日本が将来どこに行き着くのか不安だったのだ。
異星人達が侵略してくるのなら尚更なのだが、そうで無かったとしても、この日本はいずれ遠くない将来に滅亡の危機に瀕するのではないか。
頭の回る神崎だからこそ、こういう提案をされると心が揺り動かされる。
「でもなぁ、本当に信じても良いんだろうかなぁ」
竜司はついに自身の迷いを吐露し、ため息をついた。
そこで神崎は、まずは情報を整理すべきだと考えつつ言った。
「それでは軽く復習して見ましょう。
オクウミさん達の話…それとあの映像が全て本物だったとして、彼女達が所属する並行世界の銀河系は、いわゆるカルダシェフ・スケールのタイプ3に分類できそうね」
「何?そのカルタ何ちゃらって」山科が質問してきた。
「カルダシェフ・スケールよ。旧ソ連の天文学者ニコライ・カルダシェフが提唱した宇宙文明の規模についての定義ね。
タイプ1は惑星一個で使えるエネルギーを全て消費する文明。
タイプ2は一つの太陽系全てのエネルギーを消費する文明。
そしてタイプ3は一つの銀河系が有するエネルギー全てを丸ごと消費する文明、という定義がなされているわ」
「ほう、しかしあのオクウミ支部長達の説明などを聞いていると、それ以上のレベルにあるような気がするが」
東雲が眼鏡を外してレンズを拭きながら、神崎に疑問を呈する。
「そうね…確かに『人工次元世界』を創造したり並行宇宙への航行路を切り拓いたり、更にそうした異次元と実体宇宙との利用比率が1:1という話を真に受けるならば、“星間種族連合”だかの規模はまさに”タイプ4”とも言えるレベルに達しているのは間違いないのかも知れないわね」
「だっけどさー、その種族連合とかいうのと、宇宙日本ナントカとか銀河帝国とか言うのとか、なんか一度聞いただけじゃ関係性が全然理解できないんだよねー」
山科が頭の上で手をひらひらさせた。
「山科さん…あのホログラムでもちゃんと関係図を見せていたでしょう?」
「えーーっ、あれだけじゃ一発で分かんないって!」
「仕方ないわね…沙結ちゃん、このスケッチブックの紙を一枚貰っても良いかしら?」
「んー、もち」
沙結は嫌がるそぶりもなく、素直にテーブルの上にあった描きかけのスケッチブックを神崎に差し出した。
「ありがとう、沙結ちゃん。
じゃ…私が理解している限りの関係図を書いてみるわね」
と、神崎はスケッチブックの新しいページを開いて、そこにペンで文字や図形をスラスラと描いていく。
ページの上、左側に「私達の世界線」と書き、右側に「向こうの世界線」と書き記した。
その下に、それぞれに属する文明や異星人の名前を書き、さらに特筆すべき疑問点は赤ペンで書き加えて行く。
神崎が描き記す図表を、春乃や沙結も興味津々といったていで覗き込んだ。
「これで分かると思うけど、右側と左側を比較するととても不均衡という事が言えるわね。
こちら側にある、例の”グレイ”だとか”レプティリアン”ですら、話に聞く限りではその文明レベルはタイプ2止まりだと思うし、”星間種族連合”がタイプ3と仮定すれば、その使用エネルギー差はざっと10の11乗倍はあるでしょうね」
「10の11乗倍って…えーとひい、ふう、みい、で…い、一千億倍!?」東雲がのけ反った。
「まあ、例の”ヤマトクニ”の軍事力がオクウミさんの言う通りなら、こちらの異星人勢力がどんなに束になって掛かって来たところで、赤子の手をひねるようなものかも知れないわ」
「はぇー」
「でも」と、神崎が一呼吸おいて言った。
「まだまだこの関係図の中で、分からない所は一杯ある。
例えば、オクウミさんも言い澱んでいたけども、”銀河帝国”と非有機系統の人達との関係とか、”星間種族連合”内での実際の勢力図とか」
「それねー、いやなんか私も変だなぁって思ってたのよさー」山科がうなずく。
「あの態度から察するに、彼らが対立しているようにも思えるな」
東雲も拭き終わった眼鏡を掛け直しつつ呟いた。
「あと、俺が分からないのは、そもそも何で人工次元世界だとか並行宇宙なんかにやって来てるのかって事」
竜司の問いに神崎も同意する。
「確かにその通りね。まず、彼女らが人工次元世界の開拓まで行っている…それ自体はそんなに不思議な事じゃないわ。銀河間航行まで行える文明なのよ。別の宇宙を通じて銀河間とワープルートを通じさせるなんていうアイデアはこちらの世界にも既にあるし、むしろ必然的なものね。
でも不思議なのは、わざわざ時空探査局なんていう組織まで設けて並行宇宙を探査しているという話だけど、わざわざ移民をするわけでもなさそうだし、その理由がいまいちよく分からないわ」
「でもさぁ、いわゆる同胞っていうかご先祖さま?を助けたいっていうのは動機としてありじゃないの?」
「それもそうだけど、その為にわざわざ色々な世界線を調べて回っているというのは労力的にも大変なものよ」
「そう言えば、オクウミさん達が所属している支部の番号?は何だかとても凄い桁数だった気が…」
「つまり、少なくとも数千数万の世界線を人海戦術で探査しているか、その予定であるのは確かなようね」
「という事は、やはりオクウミさん達は俺達に隠している事がまだまだ一杯ある、と…」
「そして、それを知るにはやはり彼女達の仕事に協力する以外に方法が無い、という事ね…」
そこにいる全員が考え込んでしまい、しばらく経った時
上の階から物音がした。
「お、シアラが戻って来たのかな」
竜司が2階に行くと、シアラに支えられた明日香がベランダ側から廊下に入って来ていた。
「ね、ねーちゃん!大丈夫!?」
「ええ、私は大丈夫よ…もう大分怪我も治って来たし」
「そうは言っても、なんかまだ寝てないとダメなような気も」
「明日香姉さん!どうしたのですかーー!?」
後ろからついて来た春乃が声を掛けた。
「いやな、一晩だけ明日香さんをこちらに寝かせておけないだろうかと思ってな」
明日香を肩で支えているシアラが言った。
「えっ?どうして」
「実はな…オクウミ支部長が『フィムカ』号を早く修理に出せとうるさいんだ。
確かに昨日の戦闘であちこち損傷しているし、それ以外にも情報の更新やら色々としないといけないもので、オクウミ支部長がもう先回りして整備部に連絡を入れてしまったのだ。で、明日香さんを船の修理中にそのまま船内で寝かせるわけにもいかないのでな」
「はぁ…仕方ないな」
「我々の整備港にある停泊施設に滞在させる事も出来るが」
「いや、それはいいよ」
「すまん、竜司。私も出来れば早く戻りたいと言ってしまったんだ」
「あっいやいや!ねーちゃんが謝るこっちゃねーって!」
竜司はまだシアラ達に対して、どう接するべきかを決めかねている状態で、明日香を人質に差し出すような真似は出来ればしたくないと思っている。
それは明日香も似たような考えだったようだ。確かに今まで監禁されていたのに、よく知らない宇宙人に匿われるのは不安になって当たり前だ。
それよりは竜司達のような信頼出来る人達の近くに身を置いた方が良いだろう。
「それじゃ、私の部屋で寝ているのが良いのですー!」
春乃が手を挙げて明日香に提案した。
「えっ?春乃ちゃんは良いの?」
「私は沙結の所に行くのですから大丈夫ですー!」
「そ、そうか…ありがとう。もしそうしてくれるならありがたいけど、
私は別に居間のソファとかでも大丈夫だよ」
「ダメです!病人はちゃんとした寝床で寝ないといけないのですー!
それじゃ早速ベッドの準備をしてくるのですー!」
言うなり春乃はすぐに自分の部屋に入っていった。
「ありがとう、春乃ちゃん、それに竜司」
「良いって良いって。昔ねーちゃんには散々世話になったんだしさ。
あ、シアラはどうすんの?船に戻るのか?」
「ああ、今夜中に向こうの世界に一旦戻ることになるが
その前に、こちらで出来れば夕飯を頂きたいと思うのだが…」
すると隣の部屋から、春乃の声が聞こえて来た。
「良いですよー!!シアラさんは下に降りてくつろいでいて下さいねー」
「ほぁああ…この煎茶というのも、また良いものだね…」
春乃の代わりに沙結が入れたお茶を飲んで、シアラが顔をほっこりさせる。
「まだまだ寒いものね。こういう時に昔ながらの暖の取り方も悪く無いものでしょう」
神崎がテーブルの上にあった蜜柑をシアラに手渡した。
この蜜柑は皮は厚いが中身はしっかりと酸っぱくて甘い。
シアラがひと房を口にすると、やはり酸っぱい顔をしたものの満足そうにしてすぐに2房目を頬張る。
と、壁にかけてあった時計が7時の鐘を打った。
「あら、そろそろ私達も帰らないといけないわね」
「あ、そだねー」
「ふむ、じゃあ後は竜司達に任せて、俺達は明日また学校でという事で」
3人が各々帰り支度をし始める。
神崎がその途中で、竜司を居間の隅まで引っ張って小声で話しかけた。
「赤羽くん、ご両親に対しては明日香さんの事をくれぐれも隠しておくようにね」
「あー…それなんだけどさぁ、今後も隠し通す訳にもいかないと思うし、どっかのタイミングで上手い事話せないかなぁって思ってるんだけど」
「駄目よ!前にも言ったけど、赤羽くんのご両親を疑う訳じゃないけど、いつどこから情報が漏れるか分からないわ」
「いやさ、正直これって俺達の手に余ると思うんだよな。
今の所、シアラやオクウミさん達も全面的に信頼している訳じゃないし。だからここで俺達以外にもさ、誰か一人でも大人の協力者が必要だと思うんだが」
「それこそ矛盾しているんじゃないかしら。シアラさん達が信用出来ないなら、なおの事、地球人の誰も信用が置けないのではないの?」
「えぇ…一応俺の親なんだけどさ、親をも信用しちゃいけないって事か?」
「うーん…まあ由佳子おばさまも正樹おじさまも好い人柄ではあると思うのだけれど…いまいち何をしている人なのかよく分からないし」
確かに、竜司の両親は公務員とは聞かされていたものの、具体的に何の仕事をしているのかを教えてもらった事が無い。
まあ竜司や妹達はそれでもいいか、と今まで思っていたのだが、ここに来てそれが大きなネックとなるとは思っていもいなかった。
「うーん、まぁしばらく様子を見た方が良いとは思うけどね。それでウチの両親が信頼置けるってなったら、そこでちゃんと話をした方が良いだろ」
「そうね…いざとなったら、またシアラさんの船に匿ってもらうか、または向こう側の世界に一度連れて行ってもらうという手もあるし」
「おいおい、まだシアラ達を信用した訳じゃねえだろ」
「まあ、そうね」
「それにさ、これはねーちゃんがどうしたいかって意思もあるわけだしな。
だからねーちゃんが起きたら、ちょっと相談しようかなとは思うn」
「ただいまー。
あら、神崎さんに東雲くん、山科さん。いらっしゃい」
「あっ…!!由佳子おばさま、お、お邪魔してます」
何と、話し込んでいるそばから竜司の母親である由佳子が帰ってきてしまったのだ。
もちろん神崎も東雲も山科も、由佳子とは面識がある。
「ど、どうも、お邪魔してます」
「はは、えーとこんにちは!いやこんばんはだったははは」
由佳子は竜司も友人三人も妙に挙動不審なのに首を傾げつつ、居間にいるもう一人の存在に気づいた。
「あら、もう一人見かけない子がいるわね。
そちらも竜司のお友達?部活で一緒の子かしら?」
「あ、ああーそうなんだよ母さん!」
「お名前は何て言うの?」
「え…」と、竜司はシアラの顔を見る。
「初めまして、私はシアラと言う者だ。どうぞ宜しく」
蜜柑を口に含みながらも淀みなく返事するシアラに、由佳子は何の疑いもないように微笑みをシアラに向けた。
「あらあら、しあらさんと言うのね?変わった服を着ているけど、コスプレというのかしらね?
皆さん、ゆっくりしていってね」
竜司の母親はそう返しながら台所に入っていく。
「さあ、じゃあ晩ご飯の準備をしないといけないけど、皆さん、もうこんな時間だし夕ご飯は食べてく?」
「あ、ああいえいえ!お構いなく!!」
神崎達が慌てて首を横に振って遠慮するが、母親はなぜかうきうきで料理の準備を始める。
「あらー、じゃあ皆が食べられるお鍋とかにしましょうかね?
それとも丁度お肉が安かったから、すき焼きが良いかしら?」
「うーん、相変わらず母さんは話を聞かないな…
まぁもし良ければ、お前らも飯食ってけよ」
「ええ、それは構わないのだけど…で、明日香さんの事はどうするの?」
神崎は小声で竜司に話しかけ、竜司はうーんと唸った。
「そうは言っても、家にいる以上は少なくとも母さんにはどっかのタイミングで事情を話さないと…」
「にーちゃん、明日香さんがちょっとお熱出てきたので、氷枕作るの手伝って欲しいのだー!」
と、居間の戸を開けて春乃が飛び込んできた。
「え…明日香…ちゃん?」
由佳子がばったりと出くわした春乃に目を合わせる。
「おかーさん!明日香姉ちゃんが帰ってきてるのだ!今は上で寝ていムグッ!」
慌てて竜司は春乃の口を押さえた、が既に遅かった。
「明日香ちゃん…が帰ってきてるの!?今、上にいるのね!?」
ああバレた…と竜司が愕然としていると
シアラがおもむろに懐から取り出したペンライトのようなものを由佳子に向けた。
「っちょちょっと!シアラ何しようとしてんの!?」
「いや、彼女の記憶を1時間ばかり消そうと思って」
「そのライト?みたいなやつ、もしかして私達の記憶も消えちゃうんじゃない?」
山科の冷静な指摘にシアラがはっとなって、渋々その装置を懐に戻した。
「いったい、どういう事かしら?
良いから事情を話してちょうだい」
赤羽家を実質的に支配する彼女は、腰に手を当てつつ居間にいる全員を見渡しながら言った。
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「そう、それは大変だったわね…」
「由佳子おばさま、本当にご迷惑をおかけします…」
春乃の部屋で寝ている明日香のもとを訪れた由佳子は、事情を直接明日香から聞いたあと、ほろっと涙を流しながら明日香の額に濡らしたタオルを当て直した。
明日香は、細かい状況は省略したものの、ほぼありのままの情報を伝えてしまっていた。
当然、竜司達もこの事件に巻き込まれている事もある程度(竜司達が超能力に目覚めた事以外)は伝えている。
「いいのよ。心配しないでちょうだいね。
とりあえず、ゆっくりこの家で休むと良いわ。あとで客間に寝床を準備するから、夕ご飯を食べたらそちらに移ってくれるかしら」
「はい、分かりました…ありがとうございます」
「それと、今は良いけれど、いずれ落ち着いたら由美さんや和雄さんにも娘の無事を伝えた方が良いわね」
「はい…両親にはいずれ、連絡したいと思います…」
母親が居間に戻ってくると、彼女は空いているソファに座って居住まいを正した。
「皆さん、事情はよく分かりました。
いきなり信用してちょうだい、というのには無理があるかも知れないけど、私もまた人一倍明日香ちゃんの心配をしてきたわけだし、運命共同体の一人に加われると思うのだけれど」
「は、はい!それは、ええと…」由佳子の言葉に、神崎は返答に窮してしまった。
「大丈夫、私はこう見えて口が堅いのよ。
それに、竜司達にも今まで話して無かったと思うのだけど、これは今の私の仕事、そして明日香さんがなぜアメリカの秘密基地に居たかという事にも、大きな関わりを持っている事なの」
彼女はそう言って、一呼吸置いた。
「では、お互いの信頼を築く為に、まず先に私も、私自身の秘密を皆さんにお伝えする事にしましょう」
妙に改まる母親の態度に、竜司は目を丸くした。
「実は私の職場はね…内閣情報調査室・特別事象調査分室なのよ」




