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5-1 世界の真実

「亜空間から通常空間に転移、ワープ完了」




シアラがスロットルのようなハンドルを元に戻すと、コックピット前方のディスプレイに映し出されていた画像が、先ほどまでマーブル模様の灰色だったのが、みるみる間に見慣れた景色に切り替わっていく。


「はぁー、出発したときはまだ午後だったけど、もうすっかり日も暮れちまったなぁ」

「まだ4月なのだし、日没もまだまだ早いわね」

竜司と神崎は、ディスプレイから見える多摩ニュータウンの夕景を眺めながらため息をついた。

「しかし何か日本の景色はほっとするものだ。先ほどまでのネバダ砂漠の景色は、何とも殺風景だったが」

東雲も二人の感想に頷く。


「けどさ、日本の街も上空から見ると結構ごちゃごちゃしてるよねー。

 今は町の灯りのせいで奇麗に見えるけどさ。

 そういやシアラさん、この宇宙船は下の人達に見られたりしないの?」

「ああ、大丈夫だ。今『フィムカ』号は不可視状態になっているからな。

 それに、今から赤羽邸に近い”防衛免疫システム”のパージにドッキングするから。そうすれば、システムの不可視インフラと一体化するから問題ない」

山科の質問に、シアラは宇宙船を操縦してゆっくり降下させながら答えた。

「あれ?さっきまでは遺跡の中にあったよね?あっちに戻らなくても良いの?」

「あの遺跡だと、いざというときに遺跡にたどり着くまでが大変だろうし、赤羽邸の真上ならいつでもすぐに宇宙船に乗り込めるからな」


「『須佐ノ男』号達は、この上空から亜空間に入り込んで、それから待機モードに移行するわ」

明日香が真上を指差した。

竜司には、明日香があの巨大ロボット達の司令官になったというのが信じられなかったが

それでも今の彼女の態度をみるに、何となく責任感というか、自信に満ちた余裕のようなものがにじみ出つつある気もする。


「凄いのです!明日香姉さんは提督さんだったのですね!」

「てーとく」

さっき竜司が妹二人にも明日香の事を話したからか、二人は目を輝かせながら明日香に対して手で敬礼している。

何かのゲームと混同してねぇかな…


「よし、もうすぐドッキングだ」

シアラが前方を見据えながらハンドルを構え直した。

ディスプレイには、赤羽邸の2階ベランダがクローズアップされつつある。


どうやら防衛免疫システムは、渡り廊下だとかデッキの役割を持つ設備群が空中に張り巡らされていて、パージに繋がれた宇宙船と赤羽邸のベランダまで歩いて渡れるようになるらしい。

この防衛免疫システムには、他にもドローンやセンサーに当たる機能を持つ設備から、ちょっとした物を備蓄出来るストレージや会議ルームのような小部屋まで色々あるようだ。

シアラの言によれば、これらは数千年前からアメーバのように自己で点検/修復/増殖を繰り返しながら、主の帰還を待っていたのだという。


「やっぱり空中基地だったんだなぁ」

竜司は改めて感銘を受けた。




その時、コックピットにけたたましい警報が鳴り響いた。


「ん!?これは…友軍の宇宙船が急接近している!?」

敵味方識別信号は味方を指し示しているようだ。

しかし、亜空間から急激に『フィムカ』号から至近の通常空間へと転移しようとしているため、宇宙船の自動制御ユニットが慌ただしく緊急回避を行おうとして、機内がゴゴゴッと揺れた。


「きゃあ!!」「わっ何だ!?」

「緊急回避だ!何かに掴まってろ!」

シアラが全員に注意を促している間に、ディスプレイには宇宙船らしき姿が、まるで何もない空間から滲み出るように現れるさまが映し出される。

どうやら、『フィムカ』号よりも一回りか二周り程大きいようだ。

船体は『フィムカ』号と同じような純白で、鏃というかプレジャーボートのような形態をしていて銀色の部品か装飾であちこち縁取られている。


『シアラ、遅かったな』

その声を聞いたシアラは、一瞬で顔から血の気が引いた。

機内に響き渡る通信の声は明らかに女性のもので、シアラがよく知っている”ヤマトクニ”軍事標準語だった。


『えっ…!?オクウミ支部長!?』




ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー




『なるほど…シアラ二等偵察官。おおよその状況は理解した』

オクウミはしばらく目を閉じ、こめかみを指で揉んだ。


『しかしなぁ…お前のしでかした事は幾つもの軍規及び外交規約に違反する重大な行為だぞ。

 特に、ここは未開の世界線だ。

 ろくに現地の調査もせず、いきなり現地組織に武力介入するとは、いや全くやってくれたものだ』

彼女は、両手を掲げて首をすくめ、盛大にため息をした。


二人が話している場所は、オクウミの乗艦『ディアマ=スィナ』の船長室だ。

この艦には他にも7人程が乗り組んでいるが、今は周囲警戒のため艦橋に詰めている。


『しかしながら、事態は一刻を争う状況でした。

ですので、事態が収束してから改めてまとめて報告すべきだと判断しました』

『臨時待機命令下の状況でも、定期報告は必要だぞ』

オクウミはぴしゃりと断じる。

『しかも現地人に調査を手伝わせろとは言ったが、まさか戦闘に参加させるなどと… 現場での干渉結果は、もはや修復不可能なレベルに達しているのだ』

『は、はい』


『それにだ!お前が現地人に飲ませた量子意識作用薬はだな、とっくに投与が禁止になっていたものだぞ!』

『えぇ!?』

『あれは、調整されていないナチュラルな人体に投与すれば副作用が出るとの予想が出ていて、副作用の無い新薬が配布される代わりに、もう10標準年前から使用不可になっていたものだ!』

『ほ、本当ですか!?』

『嘘を言うか馬鹿者!!

 お前、寄港時の定期メンテナンスを一部省略するか怠っていただろう?その事で以前、整備部から問い合わせが来ていたのだ。その通知もそっちに転送していたはずだが?』

『あ、あー…』


オクウミは大きくため息をつくと、シアラに改めて問う。

『とにかく投与された現地人の数名に何か、症状のようなものは出ていないか?』

『あ、え~と…』

『出ているんだな!?』

『はい…』




シアラから竜司達の状態を聞かされたオクウミは、興味深いといった体でシアラを見据えながら頰杖をついた。

『ふむぅ…

 まさか、薬の副作用としてそういう事例があり得るとは聞いていたものの、本当に超能力が目覚めるとはな』

『はい、これは貴重で重要なケースです。

 ですので、臨時に戦闘に加わってもらう判断を致しました』


『そうか。よく分かった。

 しかし、この件について上層部がどう判断するかは分からんぞ。

 私もお前に対して強く弁護は出来ない。

 お前が知ってるか分からんが、この世界線における地球近傍の情勢はとてもデリケートなものになりつつある。地球各国政府と異星人種エイリアンズとの関係は、既に断交寸前の状況だ』

『支部長、いつの間にそんな調査を』

『なぁに。こちらの情報士官がちょちょいと調べればこんなもんさ。

 というか、むしろシアラは2日もここに居て、何でそんな事も調べられてないのかね?』

『うっ…』

『そこへ、今回のお前達がしでかした事が結果どうなるか?

 まず間違いなく、この一触即発の状況に更なる火種を持ち込む事に等しい。いや、万が一の事態が発生する確率が飛躍的に高まっただろうな』

『えっ、いやまさか』

『まさかのまさかになるか、それはこちらで情報を受け取って、綿密なシミュレーションを行ってからだ。それから私も含めた上層部の会合で、この世界線において今後いかに行動するか、判断する事になるだろう』

『…はっ』


『直ちに私は支部に戻る。

 こちらの日本時間で24時間後の明日、夕方頃にまた来よう。

 その時に彼らを再び呼び集めておいてくれ』




ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー




いったん赤羽邸の居間にて待機させられていた竜司達だったが

シアラが宇宙船から戻ってきて、明日に彼女の上官へ会わせると告げた時に少しばかり色めき立った。


「おお、あの妙齢の美人の事だな!!」

なぜか東雲が興奮したように眼鏡をクイっと上げた。

「やっぱあのエキゾチックな雰囲気の人がシアラさんの上司かー」

山科もうなずく。

『フィムカ』号機内で通信した際、その姿がディスプレイに表示されていたのを機内の全員が見ていた。


「明日香さんは連れてこれないわね」

「ああ、あれからすぐにぐっすりと寝ちまったしな。しばらくは安静にしておいた方が良いだろ」

明日香は『フィムカ』号の中に拡張設置された医務ルームのベッドに寝かしつけている。

赤羽家の部屋で寝てもらうのが安心かとも思ったのだが、昨晩にシアラを春乃の部屋に泊めさせた時も、両親にバレないかとヒヤヒヤしたものだった。

流石に二晩以上続けて両親に見つからないように泊めさせるのは難しすぎる。


「ウチの両親、ねーちゃんを見たらびっくりするだろうな」

「いいえ、明日香さんに会わせるわけには行かないわ。

 赤羽くんのご両親を疑う訳ではないけれど、どこから情報が漏れるかは分からないもの」

「ええ…そこまで疑うのかよ…」


とは言うものの、実のところ竜司は両親がどんな仕事に就いているのかをよく知らない。

政府関係の仕事をする国家公務員とまでは聞いた事があるが、それ以上は詳しく話してくれないのだ。

「まぁ確かに、とりあえずは情報は俺達だけに止めておくのが良いかもな」




「みなさーん、今日はウチで夕ご飯食べていきますかー?」

台所で夕飯の準備をする春乃が居間にいる全員に向けて聞いてきた。

「あっいえ、私は遠慮しておくわ。そういえばもうこんな時間ね」

居間の壁に掛かっている時計を見て神崎が答える。確かにもう7時を過ぎている。

流石にそろそろ両親も帰ってくる頃だろう。

「ああ、俺もぼちぼち帰るわ」「私もー」

東雲も山科もそれぞれ帰り支度を始めた。


「私も一旦、『フィムカ』号に戻ろう。何か入電するかも知れないから待機しなければな」

シアラも腰を上げた。

赤羽家と『フィムカ』号は、2階にあるベランダから防衛免疫システムのパージを経由して簡単に行き来できるようになっている。

これなら、急に何かがあってもすぐに『フィムカ』号に飛び乗れるという寸法だ。

「シアラさんと明日香姉さんの夕ご飯は、後で持っていくのですー!」

「そうか、それは嬉しい。春乃ちゃんのご飯はとても美味しいから」シアラが微笑んだ。

「こちらこそ光栄なのです!腕を振るってご飯作るのです!

 ちなみに今日のおかずは豚の生姜焼きなのです!」


「おお…!」

シアラは目を輝かせて生唾を飲み込んだ。




ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー




翌日の夕刻、竜司達6人は再び赤羽邸に集合した。


実際の所、竜司達は学校に居ても心はここにあらず、といった心境だった。

しかも各自が奇妙な能力を持ってしまったために、無意識に能力が発現しないように努めるのが精一杯なのだ。

それでも、例えば竜司なんかは掃除の時間にロッカーから崩れそうになる箒の束をうっかり能力で押さえ込んでしまったり、東雲はひそかに購買で買ったパンを能力で焼いて食べたり、山科は株式運用のサイトを通じてインサイダー情報を能力で入手し、大儲けを企んだりしていた。

神崎はそれを見て、いつか周囲にバレるのではないかと思って頭を抱えていたのだが。


「うむ、みんな揃ったか」

『フィムカ』号からいったん赤羽邸に来たシアラは、全員を見渡して言った。

「それでは『ディアマ=スィナ』号に向かうぞ」




「それで、あの宇宙船の中に入れば良いのね?」

神崎は、2階のベランダの戸をがらっと開けた。

「明日香さんは、まだ体調がすぐれないのかしら」

「ああ、あれから少し熱が出たりしてたからな。あと2、3日はゆっくり休養だな」

明日香の件も含め、両親への説明はどうすれば良いかな、と竜司は考えながらも神崎に続いてベランダに出て、その後ろを東雲と山科が続いた。


「にしても、俺ん家のベランダが宇宙港になるなんて、ちょっと感慨深いな…」

そうつぶやきながら、竜司はベランダの手すりから外を眺める。

「大げさね」神崎がふっと微笑しつつ、ベランダの先を見つめた。


手すりから向こうは、半透明で乳白色のデッキのようなものが続いていた。

手すりを乗り越えねばならないが、ちょうどそのデッキがベランダの中まで少し入り込んでいて、そこから階段のようなものでデッキ上に上がれるようになっている。


竜司達4人はそこから、数m昇った所にある宇宙船の入り口に入っていった。




「まあ、綺麗」

「外見よりもなんか広く感じるな。シアラの船よりももっと大きいからかな」


「それに、デザインもなんか凝ってるっていうかさ、ちょっと高級感漂うみたいな?

 シアラさんの船も凄いっちゃ凄かったんだけど、ほら何て言うか、量産型?みたいなさ」

山科が率直な感想を述べるのに対して、シアラが苦笑した。

「まあ確かにその通りだ。『フィムカ』号は数百万台も生産されている偵察船シリーズの一つだからな」


艦内の廊下をしばらく進むと、壁の片側にあるドアがふいに開いた。

「シアラ、現地人を連れて参りました!入室許可願います」


「ドアはもう開いているから、入ってきたまえ」




「ようこそ諸君。

 私は、この『ディアマ=スィナ』号艦長にして時空探査局第17=5-47-664-78=211区担当支部長をしている、オクウミという者だ。よろしく」


「え?第何区だって?」

「なっが」

「こちらこそ、どうぞ宜しくお願い致します。オクウミ支部長」

慣れたような手つきで、神崎はスッと握手のための手を差し出した。

「オクウミで構わない、諸君を歓迎するよ」

オクウミも手を差し出し、握手が交わされた。


オクウミの姿は、すらっとした長身で背丈は竜司と同じく170cm台はありそうだ。

エメラルドがかった豊かな黒髪をシニョンの様に後ろでまとめ、金属のピンで留めている。フォーマルな軍服の様な上下のスーツを着ているが、素材はシアラが着用している銀色のボディウェアに近しい。ただスーツの所々に、髪の色と合わせた様なエメラルドグリーンの装飾があしらわれている。


「に、日本語がお上手ですね」

神崎に続いて握手する竜司が若干緊張した笑顔で言うと、オクウミも笑顔で返した。

「ああ、シアラが君たちに使っていた翻訳システムをコピーしたんだ。簡単な事だよ」


神崎が再び前に一歩進みでた。

「私は神崎由宇と申します。

 日本国の多摩市市民で、現在野猿高校二年で生徒会副会長をしています」

「俺は赤羽竜司、同じく野猿高校二年でオカルト研究部っていう部活の部長してます!」

部活という部分に引っかかったのか、神崎は少し眉をひそめたがとりあえず何も言わないままだ。

「俺は東雲順一郎、同じく二年、オカルト研副部長です」

「はいはーい、私は山科詩緒里、花の17歳JK、同じくオカルト研会計でーす」


「ふむ、君達の組織や社会はとても興味深いよ。

 しかし君達の所属するような教育機関は我々の所にも存在しているから、少し懐かしさもある」

「へえー、オクウミさんの所にも学校みたいなものがあるんですか」

「ああ、そうだな。何しろ、君達の社会を祖として我々の社会は成り立っているのだから」


「…え?」

「それは、どういう事でしょうか?」

『オクウミ支部長!!その事は』

『ああ、上層部の結論が出た。

 この子達に情報を開示する事にしても良かろうとな』


「?」

「何?宇宙語?」

「ああ、済まない。

 それで、我々の事を話す前に少しばかり質問だ。

 君達、何か体に異変とか症状のようなものは出ているかね?」


竜司達一同は、お互いに顔を見合わせると

竜司から先に口を開いた。

「…はい。俺は、なんと言うか超能力?みたいなものに目覚めたというか、具体的にはサイコキネシスっていうんですかね、ご存知ですか?」

「ああ、分かるよ。続けたまえ」

「だから、あの戦闘の時に戦闘機とかミサイルをその力で墜落させてたりしてました」

「俺もです。俺は狙ったものの温度を変える事が出来るみたいで、赤羽と同じ事してました」

「私は、機械のプログラム?みたいなのを触っただけで弄くったり出来るようになった。だから明日香さんとかロボットに寄生した機械虫のプログラムをバグらせたし」

「私ですが、空間から別の空間を繋ぐゲートのようなものを生み出す事が出来ます。ですので宇宙船からロボットの中とか、自由に行き来出来るようになりました」

「あと、俺の妹二人もそういう能力みたいなものが発現したみたいです」


「それだけか?何か痛みとか苦しさとか変な症状が出たりとかは?」

「いいえ、今の所ありませんわ」


「なるほど、分かった。

 君達の身に起こった事は大変興味深い。

 しかし、この状態を放っておく訳にもまた良くないのだ」

「なぜ、私達がこんな能力に目覚めてしまったのかご存知なのですか?

 それに、今後私達の体に何か悪い影響でもあるのでしょうか?」

全員の不安を代表するかのように神崎が質問する。

「いや、恐らくそれについては、今の所心配は要らないと思う。

 多分まあ間違いなくだが、シアラが君達に飲ませた時空酔い止めが原因だろう。あの薬には、調整されていない人体には強い副作用があって今回、君達に超能力を発現させる元となったのだ」


「あっ、じゃあやっぱり…」

「ん、何だね神崎くん?」

「はい、アメリカから戻る直前にシアラさんが明日香さんにも…」

「あっ」シアラが思わず顔に手を当て、しまったという表情を浮かべたのをオクウミがちらっと見て、それから再びため息をついた。

「はぁ…それでは、その明日香という人物にも経過観察が必要だな」

彼女も額に手を当てて頭を振ってから、改めて竜司達に顔を向けた。


「私が懸念している事態というのは、その事じゃない。

 この地球を取りまく世界情勢についてなのだ。

 それについて今から説明しようと思う」




「さて、ここでいきなりだが、君達に質問だ。

 この地球に、異星人がどれだけやってきていると思う?」

「え…ええと、2、3種類とかですか?」

オクウミの質問に、竜司がおそるおそる答えた。


「いいや違う、もっとだ。

 我々が確認しているだけで、この地球には既に100種類以上の異星人や地球外知性体が来訪している。もっとも、地球の各国政府に接触までしているのはその内の10種類程度だろうが」


オクウミが指を鳴らすと、それを合図に部屋がスゥっと暗くなり

天井から地球を模したホログラム映像が竜司達の目の前まで降りてきた。


「我々が調査した所では、現在この地球では

 特に我々が”ラージノーズ”と呼ぶ異星人の1種が、地球の幾つかの国の政府と極秘条約を結び、地球側に技術提供をする代わりに、地球人の一部を資源として差し出している。

 この状態が既に数十年も続いている」


オクウミの説明を補うかのように、地球のホログラム画像を割るようにして

例の”ラージノーズ”らしき異星人の姿が現れた。

その姿は、間違いなく日本でもある意味有名な「グレイ」と呼ばれるタイプだ。


「しかし、近年になってその条約が”ラージノーズ”側によって守られなくなりつつある事が明らかになり、これにより米国を中心とした地球側と”ラージノーズ”側との間で対立が生じつつある」


ホログラム映像が切り替わり、例の”ラージノーズ”らしき異星人の姿が地球人らしき人達を宇宙船に拉致して何かの実験に供されたり、さらには解剖している様子が映し出される。


「うわぁ…」

「オエッ」

竜司たちが若干引いているにも関わらず、オクウミはさらに続けた。

「更には、地球側の事情として各国政府内の勢力が入れ替わり、どうやら政府内部に古くから存在する、地球人に偽装した別の異星人勢力同士で内部闘争が激しく行われているらしい。

 どうやら一部では、そいつらの事を”レプティリアン”と読んでいるらしいがね」


映像の中に爬虫類のような異星人、すなわち”レプティリアン”の姿も現れて、彼らが地球人に偽装して地球各国政府の中で活動する状況が映し出された。

「やっべぇ…あのエセオカルト雑誌に書かれてた事が事実だったのかよ」

「そうね、まるでSF映画のように現実味が無いのだけど、これが世界の真実なのね」

竜司や神崎、東雲や山科も展開されるホログラム映像の内容に唖然としたままだった。


「また、”ラージノーズ”の方も、彼らの版図に新たに別の種族が侵食しつつあり、彼ら自身も焦りのようなものが目立つようになっているようだ」


今度は地球がどんどんズームアウトし、太陽系すら遠ざかると天の川のような星々の連なりが映し出され、その中に一かたまりの大きなアメーバのようなものが浮かび上がる。”ラージノーズ”の宇宙での勢力圏らしい。

それらは外側から別の勢力圏によって押し出されつつある状況がアニメーションで表現されている。

更には、他の勢力と思われる囲みが銀河系のあちこちにレイヤーとなって重なりあって映し出され、幾つかのエリアでは様々な勢力圏同士がぶつかり合い、拡大したり縮小したりしている。


オクウミが一呼吸置いて話を続けた。




「とにかく、この混沌とした情勢はあと数年で臨界に達する事は間違いないだろう。

 その時、地球を巻き込む宇宙戦争ファイナルウォーが勃発すると、我々は予測している」

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