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4-5 覚醒

「……え!?」

「ね、ねーちゃん!?」

「撃たれた!?」




突然目の前に広がる血飛沫に、それを見た全員が一瞬にして体が凍りついた。

何が起こったのか、神崎ですらすぐに理解できなかった。


しかしすぐにシアラが外部スピーカーを介して警報を発する。

「お前ら全員中に入れ!!敵襲だ!!」

言い終わらないうちに斜め上方からも更なる銃撃が加えられる。


銃撃を宇宙船のシールドが跳ね返すが、それでも凄じい轟音が船外の3人を襲った。

「うぁあああああ!!」

「何っ!?」

「きゃっ!!」

竜司達がその場にしゃがみ込みながら周りを確認すると

数機の戦闘機らしき黒影が猛スピードで宇宙船の周囲を飛び回っていた。


「なっ!?なんなんだあれは!?」

「分からん、今シールドを張り直したからひとまず大丈夫だが、とにかく一旦撤収だ!!」

「ダメだシアラ!!ねーちゃんが、ねーちゃんが!!」


ロボットの掌の上では、明日香が血まみれになって倒れていた。

彼女の体はピクリとも動こうとしない。

ロボットの周囲では他の眷属らしき巨大ロボット達が猛然と戦闘機編隊を攻撃しているが

その図体のお陰か、それとも戦闘機がまるでUFOのような変幻自在な機動をしているせいか、なかなか撃墜できないでいるようだ。

それは戦闘機側から見ても同様なようで、ロボットや宇宙船側がシールドを張り直した事で、戦闘機側からの攻撃は一切跳ね返している。


と、こちらに再び急速接近する1機の戦闘機からミサイルらしきものが発射された。

ミサイルは瞬く間に突入してきて、眷属ロボットの一体に直撃する。

カッと強い光を放ってミサイルが爆散し、真っ赤な火球がロボットの表面を撫でた。

火球は一瞬で消えたが、ロボットの表面にはケロイドのように一部が焦げた跡がついた。


「なんだと!?あのミサイル、シールドの一部を破っただと!?」

シアラが驚愕する。

「ど、どういう事だ!?」

「シールドがあれば大抵の物理的攻撃が防御できるはずなんだが、

 あのミサイルは特殊らしくシールドを一部中和する機能を持っているのかも知れん。

 とにかくココは危ない!急いで撤退を!!あのロボット達にも通達する!!」


しかし、ロボット達はまるで主人を攻撃されて正気を失ったかのように辺り一面を攻撃している。

「あのロボットの掌にいる限りは、ねーちゃんが危ない!!」

「そうよ、まず明日香さんを助けない事には!!」

神崎も流石に冷静さを失ったらしく、シアラに明日香の救助を求めていた。

「し、しかし」

と、その瞬間に再び放たれたミサイルが『フィムカ』号の至近で爆発した。

「きゃああ!!」

「うぐぁあっ!!」




船内でも激しい轟音と振動が襲い、瞬く間にディスプレイ表示が全て真っ赤になって警報が鳴り響く。

「えっ何何!?どうしたの!?」

「み、ミサイルなのだーー!!」

「わふ」

「まずい!シールドが一部機能不全になった!

 再起動まで十数秒!!」

シアラが叫びながらコンソールを急いで操作し、機能の復旧を試みる。


だが、更に突入してくる別の戦闘機から再びミサイルが発射され、そのミサイルが今度はなんと明日香が横たわるロボットの掌に直撃した。

再びカッと強い光を放ってミサイルが爆散し、真っ赤な火球がロボットの掌と明日香の体を覆い尽くす。


そして、ミサイルの爆発によってシールドが破れたロボットの掌から、明日香の体がこぼれ落ちた。


「あっ!ああ!!明日香さんが!!」

「ね、ねーちゃん!!

 もうダメだ!!俺だけでも助けに!!」

「待て赤羽!!」


竜司は叫びながら、宇宙船の縁からロボットの方角に向かって思い切りジャンプする。

「ま、待って赤羽くん!!」

神崎が竜司の体を掴んで抑えようとしたが竜司の体に引っ張られ、そのまま空中に飛び込んだ。


「り、竜司、神崎さん!!今はダメだシールドが!!」

シアラが叫ぶも、もう遅かった。




二人を自由落下の感覚と凄まじい風圧が襲う。


「う、うわわわわあああああ!!!」

「きゃああああああああ!!!」


しかし竜司は、キッと目を見開いて真下を睨んだ。

「あ、あそこだ、ねーちゃんが!!」

「数十mは先に落ちて行ってるわ、どうにかして行かないと!!」

「よぉし!神崎、俺の体にしっかり捕まってろぉ!!」

と叫びながら竜司はプールに飛び込むようなスタイルで両腕を前に伸ばし、

明日香の落ちる方向へ、体を飛ばして行った。


「ね、ねーちゃん…!!」

しかし、どうしても少しも距離は縮まらない。

竜司は風圧で腕がちぎれそうになりながらも、それでも精一杯腕を伸ばす。


「ねーちゃん!!ねーちゃん!!だ、ダメか…く、っくっそーーーーー!!!」




その時、竜司の両手から仄かな光が吹き始めた。

なぜだか分からないが、竜司にはそれを”使って”明日香を引き寄せる事ができると直感した。


「いけ!いけ!!いけ!!もう少し、届け!届け!届けぇーーーーー!!!」


竜司は明日香のいる方向を睨み、キッと手に”力”を流し込む。

そうすれば、明日香を引き寄せる事ができる、そう確信した。

すると、今まで縮まらなかった明日香との距離が、どんどん縮まり始めたのだ。

「あっ!!どんどん近づいてきているわ!!」

竜司の体にしがみついて明日香の方角を見ていた神崎も、その事に気づく。


「よし!!よし!!もう少しだ…!!行けぇーーー!!」

そして見る見る間に明日香との距離を縮めた竜司達は、ついに明日香の体を引き寄せる事に成功した。




「ねーちゃん!!」

「明日香さん!!」

「ん…んんぅ…」

「良かった…明日香さん、まだ生きてるわ!!」


明日香をつかむ事が出来て一瞬ホッとした二人だったが

真下を見てハッとした。

もう地上まで数千mとない距離まで落下していて、このままだとあと数分で3人とも地上に激突してしまうだろう。


「大変!!もう地表まで間もないわ!!」

「畜生、これまでかよ…」

竜司はパラシュートも何もなしで勢いだけで明日香を助けようとしたのだが

これではただの心中と同じである。

失神している明日香をのぞく二人はどうしようもなく後悔する。


しかし、ここで神崎はある事に気づいた。

だがそれを考える間も無く、更に悪い状況が急接近してきた。

戦闘機の編隊が落下する3人を攻撃し始めたのだ。


ダダダッ!!と銃撃を3人の方角に向けて放ってくる。

「きゃっ!!」

ヒット&アウェイ戦術の教本のような機動を行う戦闘機にとっては、自由落下を行う人間など単なる的に過ぎない。

3人のそばをかすめて一旦飛び去った戦闘機は、ターンして再びこちらに機首を向ける。


「くそっ!!来るなっ!!来るんじゃねぇーーー!!!」

竜司は思わず、明日香の体を右手に持ち替えて自由になっていた左手を戦闘機に向けて翳した。

すると再び、竜司の手が光に包まれた。


その瞬間、今にも銃撃を行おうと急接近してきた戦闘機が急にその姿勢を崩し、

いきなりエンジン部分が吹き飛んだ。それからもうもうと煙を吹き出しながら墜落していった。

「な…何だ!?」

「…もしかして」


呆然とする間も無く、別の戦闘機が急接近してきた。

「チッ!!他にも居たのかよ!!」

と、神崎が何か分かったかのように竜司に言った。

「赤羽くん!!あの戦闘機に手を向けて!!墜ちるように念じて!!」

「な、何だって!?」

とにかく言われるがままに竜司は左手を再び戦闘機に向ける。

だが竜司もなぜだか分からないが、その行動によって戦闘機を墜とす事が出来ると確信していた。


「墜ちろーーー!!」

竜司が叫んだ瞬間、戦闘機はまたも機体各所から煙を吹き上げ、姿勢を崩して墜落していった。


「やっぱり…」

「すげぇ!!どうなってんだ、俺!?」

光を放っていた左手を見ながら竜司が感嘆した。

なぜか分からないが、竜司が不思議な力に目覚めたのは確かなようだ。




だが、目の前にある問題は何も解決していなかった。

あと地上までもう千mも無く、このままだとやはり3人とも地上に激突して墜落死する。

たった今、竜司が目覚めた力を行使すればひょっとしたら何とかなるかも知れないが、その後は敵地のど真ん中で、重傷を負った明日香を抱えながら竜司や神崎が逃げ果せるとも思えない。

しかし神崎は思考をフルスピードで回転させていた。


(竜司くんはなぜ今、あの能力に目覚めたの?何かに影響を受けた?媒体、あるいは媒質?

 何かを事前に摂取した?まさかアレ?そういえば、私達も同じ物を摂取した。ならば、私も?)


「赤羽くん、明日香さんをしっかり掴んで離さないようにしてて!」

「お、おう…?」

「今から、出来るかどうか分からないけど、ちょっとやって見たい事があるの。

 失敗したら、その時は赤羽くんの力を使って、地上に軟着陸出来るかやってみて頂戴」

「あ、ああ分かった。で、何をやるんだ?」


神崎の心の中でも、自分自身にも何かとてつもない力が宿り始めた事を確信していた。

今はそれを信じて、手を伸ばして念じればいい。

そして神崎には、自分がどういう能力を授かったのかが何と無く分かってきた。

(場所は、さっきまで居たあの宇宙船の上。深く深呼吸して…念じる、というか集中する。

 あの宇宙船の上の光景を、状況を、そのままそこに飛び込む事を、確信するの!!)


神崎は手を伸ばして、まるでその先に何か別の物や空間があってそれを掴むかのように手を開いた。

「お、おい神崎…地上から攻撃が始まったぞ!!」

既に地上の施設や人間が動き回っている姿が目視できるほどに近づいていて

そこから3人に向かって砲撃や銃撃が向けられていた。

しかし神崎はそれに全く構わず、目をつむって手を伸ばし続けた。


「もう少しで…手が、届く…あとちょっと…あと…ほんの…少し」


すると、神崎の手がみるみる光で包まれ、そして手を伸ばした先に光る輪のようなものが顕現した。

それはたちまち大きくなり、遂には人が通れるほどのサイズになる。


「うぇ?な、なんだあの輪は!?」

「竜司くん、今よ!私たちをこの中に!!」

「えっ!?わ、分かった!!」


竜司は左手を、光る輪とは反対方向に手を伸ばした。

そして手に力を込めると、手に反発力が生まれる。

その反動で自身の体ごと神崎と明日香を光る輪の中に押し込む事に成功した。


「うわ、やべっ!!」

竜司が光る輪の中に入り込む寸前、地上からミサイルらしきものが向かってくるのが見えた。

しかし3人が完全に光る輪を通り抜けた瞬間、光る輪が絞られるように小さくなって消滅した。

竜司が手の力を抜くと、ストンと3人とも何かの上にゆっくり着地する。




「えっ!?ここは!?」

そこは先ほどまで居た『フィムカ』号の機体の上だった。

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