表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

友人の手助け

柚莉、遅いな…

俺は隣の席を眺めながら思う。

いや、別に早く来てほしい訳じゃないし、寧ろ欠席してくれた方が良いのだが、いや、何というかその、いつも早く来てるから気になる。

って、何を言い訳してるんだ俺は。

「ねぇ」

前から突然声が聞こえる。

「ああ、りせか。どうした?」

このツインテのぽやぽやしてる幼女体型は星汲(ほしくみ) りせ。俺の家の向かいに住んでいて、オカルト好きだ。

「今日の、雪也の、運命、最悪。雪也の、人生の、中で、2番目に、最悪」

「……なぜ?」

「ん」

りせは俺に1枚のカードを見せる。

タロットカードだ。

「また占いか。まぁ、頭の隅っこには入れとくよ」

「私の、占い、なめないでよ。」

「はいはい」

「信じて、ない、でしょ。じゃあ、この藁人形に早速、水風(みずかぜ) 雪也って書いた紙と、写真と、雪也の髪を、入れて——」

「待てその写真俺の寝顔じゃねえか。なぜ持ってる?」

「鈴ヶ里さんから3000円で譲ってもらった(ドヤァ」

「柚莉あいついつの間に……」

随分とストーカー紛いなことをしてくれるもんだと思いながら、机の中から本を取り出す。

しかし、2番目に最悪な日か。

柚莉が来てない事とまさか関係があったりしないよな……?

ま、そんな非現実的な事を信じても仕方ないか。

それより早くこの本を読み終えないといけな——

「っおいお前ら!いいか、落ち着いて聞け」

ドタバタと担任教師が入ってくる。

お前が一番落ち着いた方がいいんじゃないのか。

「大変な事が起きた。


柚利が…


事故に遭った」


は?

柚利が、事故?


「ゆ……柚莉が……?」

俺は咄嗟にそう呟く。

だって、あの柚莉だぞ?

「なんであの柚莉が事故なんか……」

その時俺に、一つの光景が頭をよぎった。

俺をからかう柚莉に苛立ちを覚え、『事故にでも遭えばいいのに』と思っている光景が。

俺が、あんなことを思ったから……?

俺が、俺が悪いのか?

いや、落ち着け、冷静になるんだ。

苛立ちや怒りがそのまま具現化するんなんて有り得ないだろう。たまたまだ。

俺は不意に顔を上げると、オロオロしながらこちらを見ているりせと目が合った。

多分さっきの占いは半分冗談だったんだろう。

本当に当たって戸惑っているようだ。

それより、柚莉は大丈夫なのか?

心配だ。まさかだけど、死んだり、しないよな?

とりあえず、今の俺には軽傷で済んでいることを願うしか出来ないか……。




☆☆☆



「えと、あの、えと……」

ホームルームが終わった途端、1人の女子が話しかけてきた。

柚莉とよく一緒にいる人だよな。

確か——

遊々城(ゆゆぎ) 蓮奈(はすな)さん?どうしたんだい?」

「あ、え、その……」

良かった。この小さな村では同じ学年の奴は全員幼馴染みたいなもんだが、俺は数人としか仲良くしなかったからな。未だに名前が曖昧だ。

「そ、その!水風さんって、柚莉とよく一緒にいるじゃないですか」

「……ああ」

否定は出来ない。

「それで、あの、私と一緒に、柚莉のお見舞いに行きませんか?」

「お見舞い?」

「はい。水風さんが来たら、きっと柚莉も喜ぶと思うんです。それに……私怖いんです。柚莉の現状を知るのが。だから、一緒に来てくれたらいいな、なんて……」

お見舞い、か……。

確かに柚莉のことは気になる。授業は早退しなきゃいけないが。

折角だし、ここは行ってみるか。

「悪いけど、その誘いは断らせてもらっていいかい?」

……ん?

あれ?今、俺、なんて言った?

「授業を休んで見舞いに行く程、柚莉は俺にとって大切な友人じゃない」

「み、水風さん……」

「柚莉は人気者だから、俺以外にもいろんな人に誘ってみればいいと思うよ?いろんな女子誘ってみな」

「そう、ですよね。いろんな人に誘ってみますです……」

うわああああっ、何をやってるんだ俺は!

折角のチャンスだったのに……

なぜこんなに素直になれない……

「ねえ、僕、お見舞い、行きたいんだけど」

「星汲さん?」

意外だ。

りせが鈴ヶ里の見舞いに行きたがるとは。

なんで——

「で、雪也を、『鈴ヶ里さんのお見舞い』じゃなくて、『僕の付き添い』で、連れて行って、いい?」

「はぁ⁉︎」

「え、ええ。もちろん構わないです」

「だって。じゃあ、雪也、僕の、付き添い、よろしくね?はい、早退届。遊々城さんも、どうぞ」

「何をそんな勝手に——」

「つべこべ言わないで、書け!この、ツンデレやろー」

——そういうことか。

さすが0歳の時からの友達りせだ。

俺が素直になれてないのを見抜いてくれたか。

これはりせなりの優しさだったんだな。

「ったく、付き添いだったら仕方ねぇなぁ」

俺は早退届に署名し、りせに渡す。

すると遊々城さんは、ぱぁっと明るい顔になり、

「じゃあ、3人で柚莉の元に行きましょうです!」

と笑顔で言った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ