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苛立ち

 山紫水明の地、水鈴村(すいりんむら)

 透き通った清流に、金色の田園。

 そこに俺は暮らしている。確かにド田舎で不便だが、俺はこの村が好きだった。景色は綺麗だし、食べ物は美味しいし、何より村の皆は凄く優しい。この村も、この村の皆も大好きだ。そう、たった1人の人物を除いて。

「あはっ、さあ雪也君問題です。私は一体君の鞄を何処に隠したでしょう?」

「はぁ、柚莉、またか…」

 下らない。

 本当に下らない。

 俺の目の前にいるこの青い髪の少女、鈴ヶ里 柚莉(すずかり ゆずり)は本当に下らなかった。

 昨日は俺の筆箱を隠したかと思えば、今日は鞄ごと。

 ああもう、こんな馬鹿げた事を毎日のように繰り返されると腹が立ってくる。

 ずっと綺麗な人だ、俺とは釣り合わないだろうなと思っていたが、いざ話しかけたらこれだ。こいつは、なんだ、調子乗ってんのか?

 最初は小躍りしたよ。悪戯を俺だけに仕掛けてくるから、もしかしたら気があるんじゃないかってね。でもこう毎日だと好意よりイライラが積もっていくばかりだ。

 そもそもあの鈴ヶ里財閥のお嬢様が、なんでこんな田舎に住んでんだよ。なにやら小さい時に水鈴村にある別荘に来て、あまりに気に入ったためお手伝いさんを雇ってこっちで暮らし始めたらしいけど、親といないからこんな性格になるんだよ。さっさと東京に帰れ。

 俺は教卓の下に隠された鞄を取って、玄関に向かいながら思う。

 あんな奴、不幸になっちまえばいいのに。

「おや、雪也君もう見つけたのかい?むぅ、それでは面白くないではないか」


 俺のイライラをお前の余興に使いやがって。


「ああそうだ、今日は雪也君の家の土地を買収する事にしよう。あははっ」


 つまらない。

 やめろ。


「おいおい雪也君、なんか言ってくれよー。はっ、もしかして鼓膜が破けたかい?あーあ、可哀想にー」


 ああもう、さっさと帰れ。



「今日は私は本屋に寄ろうと思うんだが、雪也君も一緒に——って鼓膜が破れて聞こえないんだったな。雪也君って手話分かるのかな…」


 一言一言にイライラする。

 こんな奴——




  事故にでも、遭っちまえばいいのに。

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