その魔女二度目に絶望す~To despair in the witch second time
遥か昔、世界の悪である獄炎の魔女が火炙りの刑に処された。
彼女は全属性の魔法を行使し、中でも炎魔法の腕は他の追随を許さないものだった。
ある日、彼女は容疑をかけられた。それは彼女には全く無関係なものだった。
そう、彼女は嵌められたのだ。彼女の才を妬んだ全ての魔法使いによって。
彼女は火炙りの最中、こう言った。
『Saleh etc. Genru witch is the second time(去れど魔女は二度目に現る)』
その言葉を発した瞬間、魔女は更なる獄炎に包まれた。そして、骨も彼女に関する何もかもが、跡形もなく消えた。
魔女が発した言葉は、数百年たった今でも解読されることはない。
「んっ、ここは?」
目を開けると見知らぬ天井。そうだ、私はまた転生したのか。いや、今回は憑依と言った方が良いのか。今世で私が憑依したの不健康そうな男子だった。
何を基準にしたかって?見たんだよ下を。
恐らくこの体は一度死んだ。魂が病んでいたのだろう。そのせいで体に何かが患わった。そして、その空になった器に私の魂が入ったわけだ。必然のことながら前の魂はいない。
私は短く黙祷を捧げる。しばらくしたら目を開けた。そう言えば、この体は魔法を使えるのだろうか?私には魔法しかない。それが使えなければ私は私は。
『Come flame(いでよ炎)』
私の詠唱方法だが英語を使う。決してそうしないといけないわけではないが前世の癖だ。
何も起きない。
私は慌てて掌に魔力を集めた。前世の私なら想定不能だったが……
「なん…だと…」
この体、今世の私の魔力は0に等しい。細かく言えば3。そりゃ魔法を使えないわけだ。私は絶叫した。
私の前前世というのか?また前世のその前は英語翻訳を飯にしていた、三十五歳の行き遅れ。愛したのはハイボールとスルメ。典型的な駄目女だ。
いつものように部屋で酒を飲んでいたら、突然意識を失った。そして目覚めたら赤ちゃんになっていた。そしてその世界は剣と魔法の世界だった。
そこで私は何とか生きて、高名な魔法使いになった。確か、獄炎の魔女って呼ばれていた。始めて聞いたときはもっと可愛い名前をつけてくれ!と叫んだよ。
で、なんか知らないけど国家を裏切った罪で殺された。全く見に覚えがなかったので恐らく嵌められた。理由は大体わかる。私の才を妬んだからだとと思う。
そのときの私はかなり浮いていた。何故なら一人で全ての魔法使いを凌駕できる力を持っていたからだ。
まぁ、私自身その人生に飽きを感じてきたからそれに乗った。
私は処刑の最中に転生魔法を使って、死んだ。私は新しい人生を歩めて、更に向こうも私が死んで清々する。まさに一石二鳥だね。
とりま私は新しい人生を歩んでいこうと思う。決して人に侮られぬように。決して英雄にならぬように、私は生きていく。
まぁ、魔力がなかったら英雄にはなれないけどね。