トゥーア領 微睡む
その日の夜、淡い月の光が窓から入り、室内を照らす。
私達はベッドの中でまどろんでいた。
「ねえ、ティーナ。学園戻るの?」
不意にアダルトバーションのアレクサンダーが、私を抱き締めながら問い掛けてくる。
「んー、そのままって訳にはいかないしね。飛び級して卒業をするのであれば、まずは試験を受けなくてはいけなでしょ? 数年掛けて習得する国の基本の事は、ギルドの関わりで習得済みだから問題はないだろうけどね。紳士淑女の所作や儀礼関係は大体覚えているし。何より職位持ちだから学園のお世話になって職位持つこともないし、ぶっちゃけする事が無いと言えるからね」
髪を撫でるアレクサンダーの優しい手付きに心地よさを感じながら、つらつらと考えを伝える。
学園は職位を持たない(まだ何になるか決めていない)貴族やお金持ちの為の基本的なことを学ぶのを目的としている。言わば義務教育的なものである。王立なので箔が付くと世間では言われている。ブランド的なヤツである。平民でも金が無いと入れないのである。門戸は実は狭い。
紳士淑女の為の学舎を言うのをキャッチフレーズにしているので、学園卒業後はどこに出しても恥ずかしくない位の所作を身に付けているのが大半だった。極まれに例外は存在するが。
学園にいる間に、職位を決めてその職位になって卒業するのが常である。なので、学園に入る前にアコライトになっていた自分は異例とも言える。そして、プリーストになったので卒業の為の案件を満たしているのだ。
故に父親である公爵が、飛び級の許可を出したのであろう事は推察される。
「まぁ、とりあえず、明日は魔物討伐してスキル習得してそれから考えようかな。あと、隣の領地の手前にポイントセーブ作って、いつでもアンデッド系を倒しに行けるようにしておきたいかな。プリーストは通常モンスターを倒すのには不向きだしね。狩り場は幾つあってもいいからね。卒業に必要なレベルって分からないから、足りない時は何時でも行けるようにはしておく方が無難だよね」
すりすりと私は顔を、アレクサンダーの胸板に寄せる。ぬくぬくとした温かさと安堵感に眠気がくる。
背中をとんとんとされて、ふわぁとあくびが自然に出る。
ふふと小さく笑いをこぼして、アレクサンダーは言う。
「レスティーナがそれでいいなら、僕はついていくだけだね」
「アレク……朝早めに、起こして……」
「わかった。お休みティーナ」
ちゅっとおでこにアレクサンダーのキスが降る。
それが合図になり、すーーっと私は眠りに落ちた。