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トゥーア領 晩餐会


 キラキラと光るシャンデリア。

 長い楕円のテーブルと、それに掛けられた白いテーブルクロス。白と薄紅色の椅子が等間隔で並んでいる。

 ここは【歓待の間】と呼ばれる、お客様をもてなす為に作られた食事専用の間である。

 その為、テーブルは広間の端から端までの長さをしていて、二つ並んでいる。1テーブルで20人は座れるので広間の手前と奥の二つで、ざっと40人は座れる計算になる。曲線を描いている場所にも実際には座れるので、50人の数でも対応できると思う。


 さて、現在この間に集う人達の顔ぶれは多様である。領主街プラータの有力者である各ギルド長がいる。他にぶっちゃけ知らない人ばかりだ。男性が多いかと思ったが女性もいる。夫婦で参加しているのかもしれない。これなら、お見合いの初期段階と言っても、判断できない顔ぶれである。商談か、情報交換の晩餐会と言っても差し支えないであろう。


「では、行こうか。リーセロッテ」

 お父様の顔つきが、ローラント・レオ・トゥーア公爵へと変わる。家族に向ける表情とは違う、威厳のある雰囲気を纏う。そうして、お父様はお母様に片腕をそっと出す。

「はい、ローラント様」

 お父様の腕にそっと手を添えてエスコートを受ける。にっこり笑って、お母様もまた表情を変える。リーセロッテ・レオ・トゥーアとして、公爵婦人として。

 私は背筋を伸ばし、お父様とお母様に続き、後ろを歩く。テーブルの中央に到着すると、執事達が椅子を引く。お父様、お母様に合わせる様に私も一緒に座る。


「皆様、今宵は楽しんで下さい」

 着席する招待された人達を見回し、ローラント・レオ・トゥーア公爵がそう告げると、晩餐会が開始された。

 お父様の合図で次々と、食事が前菜から運ばれて来る。



 美味しい食事に舌鼓をうっている中、一人の恰幅の良い男性が、口火を切った。

「公爵様、その方はお嬢様ですか?」

「ヘイデンスタム伯爵は初めて会うのだったかな? 

ああ、愛娘のレスティーナだ」

「初めましての方もお見受けしますので、改めまして……私、レスティーナ・トゥーアです。お見知り置きください」

「これはこれは、可憐な姫君ですね」

「有り難う御座います」

「この機会に紹介しておくかな。知らないのはヘイデンスタム伯爵から、右側の方々だったかな。まずは、ヘイデンスタム伯爵はヘイデンスタム領を治めている」

「イクセル・ティム・ヘイデンスタムだ。宜しく、レディ」

「はい」

 返事を返す、私の次の言葉を遮る様にお父様が発言する。


「彼は、トゥーア領の特産物を良く取引してくれるお得意様だ」

「いやいや、公爵様も我が領地の作物を買い入れて下さっていますから!」

「安定的に消費して下さるので、領民もとても感謝してますよ」

 ダンディなイケメン公爵と、人の良さそうな伯爵の誉めたたい合いが繰り広げられる。


「次は彼だね。彼は、カール公国の辺境伯の次男で18歳の若さながら、カールシュテイン辺境伯の名代で今日は来てくれた。公国の公主の血筋を引いているが、とても気さくで頼もしい人だ」

「ユーリウス・カールシュテインです。初めまして、レディ」

「初めまして、ユーリウス様」

「彼は身軽な次男坊なのを良いことに、現在、名代を勤めると言う条件で、フェリクス王国を遊学中なんだよ」

「ええ、この国に興味のある者達とパーティを組んで旅をしながら、あちこちを回ってます。色々な作物も勉強になりますが、統治の仕方に様々な方法や考え方があって面白いですね。やはり、自分の足で回ってみたものは違います」

 ニコニコと笑うユーリウス。キラキラ王子風と言うよりも、甘え上手な下の兄弟と言う感じの、犬猫属性的な尻尾や耳が幻覚で見えそうな雰囲気を持っている。たぶん、彼が候補者の一人だろう。目付きは穏やかな感じを受けるナイルブルーの色彩、髪はさっぱりとした短髪で、綺麗な三日月が浮かぶ宵闇に似た、ダークブルー。

 確かに印象も悪くないし。パーティ組んで旅(冒険?)している所は個人的に共感が持てる。



「その隣が、2年前に伯爵を継いだから、現在19歳だったかな? セーデルルンド伯爵?」

「アドリアン・ヨルン・セーデルルンドです。若輩者ですので領地の統治について、公爵様には色々教えて頂いてます」

 低姿勢な、若手伯爵様である。

「初めまして、アドリアン様」

「宜しくお願い致します。レディ・レスティーナ」

 小さく笑顔を見せるアドリアンは、どちらかと言うとクールよりの学者肌風な感じである。

 知的な色を纏う瑠璃紺の瞳、性格を反映するかのような紫紺の髪で、後ろを一つに纏めている。

 彼も候補者だろう。



「で、最後の彼が、リュディガ・エーネストレーム。七公爵のエーネストレーム公爵家の三男で、武者修行中の為、この街の騎士団に入って頑張っておる」

「宜しくお願い致します。リュディガ様」

「リュディガと申します。お見知り置きを、レディ」

 キリリとした表情だけど、どうも硬い印象を受ける。キャロットオレンジの瞳、柔らか癖のあるクリームイエローの髪の甘い色合いを持っている。笑ったらちょっと可愛いかも? しれない。

 また、着ている服からも察する事が出来る程のガッチリした身体の作りをしている。うん、武の人らしいね。

 で、彼も三人目の候補者かな。



 確かにあの神に認定されし、バカ王子に比べると人格的にもまともである。そして、ちゃんとした目標を持って頑張っている事も伺える。

 友人として付き合うとしても本当に、優良物件である。


 彼等の言動を観察しながら、私も適度にお父様やお母様の話に、相槌とかを入れながら晩餐会を乗り切るのだった。

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