表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/40

トゥーア領 領主街プラータ1

障害怖い!!(T^T)

急ぎで投稿します。


 転移陣が運んでくれた場所は、街の中心街にある広場の時計台前だった。時計台は最上階に物見台があり、そこから領主街プラータが一望出来る。街の中に居ると建物や城壁で、外の様子が分からない。高い場所から見ないと全景は分からない。まぁ、どこの領地などもそんな感じではある。魔物の侵攻に備えのためだから仕方ない。ここプラータは、高い場所から見ると圧巻に尽きる。湖上都市とリール要塞とを混ぜた様な作りだからだ。

 また、時計台を挟み左右対称に、噴水が配置されている。この広場は、街の総ての住人を避難出来るだけの広さがある。端から端までの距離は、500メートル以上は軽くある。


 数ヶ月振りの馴染みのある風景に、ぼんやりと少しの間私は見とれた。

 広場の南、正門入り口付近には、夕時の屋台が幾つか立ち並び、買い求める客が沢山いた。街の活気が垣間見える時間でもある。

 広場は円形になっていて、ぐるりと周囲を囲む様に柱が建てられている。広場の北には、神殿とその入り口がある。私がアコライトに転職したのは、この神殿なのです。

 今、思うと感慨深い。今日は難しいけど、後日神殿に来て、神々に祈りを捧げたいと思った。


 そんな事を考えていた私のフードから、アレクサンダーはごそごそ出て来てよじ登ると、肩にちよこんと乗って私に問い掛けた。 

「ねぇ、ティーナ。真っ直ぐに帰るの?」

「ん? 細工職人の所に寄ってから帰るよ」

 記録石の腕輪を作って貰わないと、不都合だし王都に行くまでには欲しいのが本音だ。

「じゃあ、またフードの中に入ってるねー」

「うん」

 小さく返答すると、アレクサンダーはまたフードの中に引っ込んで行った。


 人が沢山いる場所では、アレクサンダーと話をすると一人で喋る変な人扱いになるからだ。大抵の人は守護天使持ちだと分かるけれど、基本見えてないから結果、不思議な光景になってしまうのだ。

 なので人がいる場所では、アレクサンダーは基本的にポケットなどに入り込んでいる。


「日が暮れるまでには、帰らないとね」

 鍛冶師達が工房を構える地区へと、私は足を向けた。

 多くの住民が行き交う。夕食の材料を買い求める奥様方が一番多いかもしれない。子供達は家へと帰っていく。

 私は、煉瓦の道路のはじっこをてくてく歩く。道は人の通る道と、馬車や騎獣の通る道が分かれている。

 家路につく者、外からやって来ている者、大人も子供も多くの人達が行き交う。

 心なしか皆の表情は明るそうだ。街の治安が良い証拠である。それは、父である公爵の采配が間違っていない事を示唆するので、娘としては嬉しく思う。



 正門から出るとそこは、南地区で、多くの宿屋や冒険者ギルドがある地区だ。住人の住居用の建物は、各地区に満遍なく散らばって建てられている。

 南地区を抜けて、久しぶりの街の様子を眺めながら、商業地区でもある西地区へと私は足を進める。反対側の東地区は、学校や病院や図書館などがある学術地区でもある。北地区は領主の城がある。

 因みに神殿の周囲は、林やお墓などがあり、各地区とを隔てる壁の役目を果たしている。


 この街の自慢の一つでもある、白色から生成り色の煉瓦や石、ペンキで塗られた、統一感のある色彩の壁と、隣接した家々がぴっちりくっ付いて高い壁の様に聳えたっている。閉塞感が有るかと言えば、意外とそうでもない。壁の色が重たく無いから、受ける印象が変わるのだろう。

 神具の封印が解けたのが原因だろうか、眼に飛び込んで来る、久方ぶりの街並みと自分の感覚にズレがある様な感じがする。なんと言うか、旅行に来ている様な感じでムズムズもやもやする。

 そんな感覚をもて余しながら、記憶を頼りに歩いて行った。



 白壁の三階建ての建物で、マリンブルーの扉に蔓草模様の装飾彫り込まれ施されている。扉の上の看板には工房名が記されている。

 私の目的の工房は、ここ【エルフィン】工房だ。


 お客様のワガママを取り入れつつ上質な細工や、アクセサリーや、簡易防具などを作るのが得意な工房である。

 幾つも工房はあるが、それぞれの親方が独自路線を走り、特化的な製品を作る事で住みわけが出来ている。たまに合作なども手掛けるが、基本相手の領分に踏み込まない事で互いに了解している。

 日本的な言い方をすれば、ガラパゴス職人が多い街でもあるかな。


 マリンブルーの扉に手を掛けて、ゆっくりと押す。

 カランカランカラン。

 工房の扉を開けると、上部に付いてるベルが鳴った。

「いらっしゃいませ」

 店番をしている工房の職人さんだろうか、私に声を掛けてくる。ひょろっとした姿の、彼は前来た時に見たことがないので、新人さんなのかもしれない。ぱっと見ても印象が薄い人なんで、忘れているかもしれない。何処にでもいる様な茶髪茶眼に、大人しめな顔の造形なので覚え難いかな。


 そんな風に思いながら、カウンターの向こう側にいる彼に問い掛けた。

「こんにちは、親方さんはいますか?」

「親方ですか? ええと、どちら様ですかい?」

「レスティーナと申します。名前を告げて頂ければ、親方さんもわかると思います」

「あ、はい。そうですか、では、親方に話してきますんで、少々お待ち下さい」

「宜しくお願いします」

 そう言うと新人さんらしき彼は、奥への続き部屋へと一旦引っ込んだ。


 グルリと室内を見渡す。入り口の左右には陳列台が並び、商談用のテーブルが一つ。反対側には上部のみガラスが嵌め込まれた木で出来た鍵付きのショーケースあり、それらと隔てるように、カウンター台が壁まで伸びている。カウンター台の右端部分だけは、人一人分の幅が上部の板のみである。それは、跳ね橋のような形になってて、その部分を持ち上げれば、向こう側から通り抜けて来れる様になっている。


「あまり変わってはいないのね」


 以前と変わらぬ工房の店内に、少しほっとした。陳列する売り物の種類は、多岐に渡る。ピアス、イヤリング、ブレスレット、アンクレット、指輪、腕輪、肩当てや胸当てなどもあった。ファッションセンスを取り入れつつ、実用性も兼ねている。女性的な感性があり、冒険者の間では有名である。特にお洒落をしたい女性にはだ。


「あ、これカワイイ」

 可憐なガーベラの様な花とネコの構図の腕輪と、可愛らしい華々がちりばめられた構図の腕輪を手に取る。

 暫く掛かるかと思いきや、それらを眺める間に、ドタドタと慌てた様に、音を発てて奥から親方が飛び出して来る。


「ティナ嬢ちゃん!」

 ムキムキな筋肉と厳つい顔の持ち主でありながら、繊細で女性的な感性を表現する細工を作り出す、エルフィン工房の親方、ルーカス・エルフィン通称【ルカ】親方である。

 ティナと、親方は私を呼んだが、冒険者ギルドなども含めて私の名前は【ティナ】の通称名で通っている。本名で全部呼ばれると色々と問題があるので、使い分けは必要だと言うことでそうなっている。何処にでも穿った見方をする者はいる。公爵令嬢だと知って、嫌がらせをしてくる可能性が無いわけでは無いのだ。

 その辺は冒険者ギルドの人達の知恵でもあった。公の場では、本来の名前レスティーナで通して、ギルドなどフランクで付き合う場であれば、ティナと使い分けていけば、勝手に別々の人間と錯覚してくれるであろうと言うわけだ。商人ギルドで交渉し易いからと、レスティーナ・トゥーアの名前で、計量シリーズを作ったのが、王達に見付かった原因だった。ついでに言えば、公爵家の名前を伏せる様に指示しなかった私も迂闊過ぎた。冒険者ティナまたは、レスティーナのみであれば、見付かる可能性も低かっただろうね。まぁ、もう、今更だけどね。お釣りが来るくらいの大儲けではあったが。宝くじ一等前後賞合わせてレベルのだけどね!(笑)


「お久しぶりです、ルカ親方」

 ニッコリ笑って、挨拶する。

「おぉ、随分来なかったな、今までどうしてたんだ?」

 がしがしとチャコールグレイ髪をかき上げて、ミントグリーンの瞳を私に向けて問う。

「王都の学校へ行ってたの」

「王都かぁ! いいなあ、あそこは質が良い魔石が売ってるんだよなあ。ちっと高いけど」

「でね、記録石を買って来たんだけど、腕輪に嵌め込んで作って欲しいんだけど、出来る?」

「納期は?」

「出来るだけ早くかな? さっき帰って来たばかりだから、いつ王都へ行くか分からないんだよね。だから、取り敢えず、早くって訳ね」

「少し話せる時間はあるか?」

「ええ、時間が無ければ寄らないわ」

 私はルーカス親方に、笑って告げる。

「んじゃ、茶でも飲みながら詰めちまうか。おーい! この間買ってきた一番高い茶と差し入れの菓子を持って来い!」

 奥にいるであろう弟子に向かって、用事を言い付けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ