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さぁ、ざまぁタイムだ! 1

 長い夢から覚める様に、私の意識がハッキリとしてきた。


――――あぁ、そうだった。あの日、国王によって、私の前世を持っている意識……意志が封じられたんだ。ボンヤリとする意識のまま、国王の言う通りに誓約を誓わされた。


 彼等が欲しがったレスティーナは『記憶チートと確固たる意志を持つ私』が発明したとされる利権と、次なる発想力と金のなる木になるアイテムだった。それを国が作ったとして、他国に売り貿易でガッポリ儲けようと言う腹積もりだったのだ。私が職人達と、商人ギルドと取り交わしたマージン、この場合、年間契約料金や特許料金とかになる。それら取っ払えば、国庫が潤い、ボロ儲けが出来るからである。けれど、純粋なレスティーナの意識が発明した訳では無い為に、国王達が求めた記憶は封印されてしまったと言うオチである。


 ぼやっとした記憶の底にある会話の1シーンはこうだった。

「レスティーナよ、そなたが作成したアイテムの事をつまびらかにせよ」

「アイテム? 私は知らない」

「そなたが商人ギルドに持ち込んだ物だぞ。知らぬ筈がなかろう!」

「私じゃないわ。私は知らない」


――――だって、それは前世の記憶にあった物を模倣しただけだもの。私が作成したんじゃないわ…………。

 虚ろな意識の私は、心の中でそう思った。


 事の顛末は、簡単だ。自分達の都合が良い様に操ろうと、反抗する意識を封じ込めたら、なんとそっちが本命でしたー! 残念~っ! ってな感じ。バカだね、本当に。



「レスティーナ! ティーナ!」

「ぁあ、聞こえてるわ、アレクサンダー」

「ティーナ……」

 耳元で聞こえる声に、私は応えを返す。アレクサンダーが安堵の吐息をついて、背後からギュウギュウに抱き締められた。正直、苦しいけれどアレクサンダーの気持ちを思うと、何も言えない。

 隔てられた世界にぽつんと独りでいたなんて、狂いそうだったろう。チャンスがあるとは言え、どれだけ寂しい時間を過ごしたのかなんて、考えただけで辛いもの。


 ゆっくりと瞼を開ける。目の前に広がるのは、学園の聖堂内部。

「ごめんね、アレク」

 私はそっと、抱き締めるアレクサンダーの腕に手で触れて謝る。

「うん、やっとティーナが僕の所に戻って来た。よかった。立てる?」

 そう言って、アレクサンダーは私を支えてくれる。ゆっくりと立ち上がって、祭壇の階段下に突っ立っていた王子達と目が合う。婚約破棄が出来て、舞い上がっていたのが垣間見える二人の立ち位置だった。カイン王子は、アデリアの肩に手を置き、アデリアはカイン王子の胸元に手を添えていた。


 ぽかーんとしているカイン王子とアデリアが、こっちを凝視している。

「れ、レスティーナ……? そいつは何者だ?」

 唖然としながらも、カイン王子は問い掛けてきた。その横で、頬を染め上げてぽそりと呟くアデリア。

「……ステキ」


 好き勝手な反応をする二人に苛つきながら、私は冷めた瞳を向けて言い返す。

「私だけの天の御使いよ。私の半身。覚えているかしら? 初めて王子、貴方と会った日に、貴方が私に渡した贈り物によって、私達は引き裂かれたのよ? まぁ、嫌々あの場に来たのでしょうから、覚えてはいないでしょうね、きっと」

 アレクサンダーは私に左手を差し出す。その手に右手を乗せる。


「そ、それは……」

 カイン王子は視線をうろうろとさ迷わせている。

「……はぁ」

 理解していたが、ここまであからさまだと私の口から出る溜め息が止まらない。首を振って意識的に気持ちを切り替える。

「まぁ、いいわ、ジャイアニストな王子様に覚えていろなんて言っても無駄ですものね。さて、私達の時間と意志を奪った代償をあの方々から取り立てましょうか」


 アレクサンダーと共に私は数歩進む。祭壇前に私達は立ち並ぶ。求めるは聖癒神ケレスの神威降臨。現在、管理神バルキリーの神威は此処に在り、呼び出す事も容易であろう。


「いくわよ、アレク」

「了解、ティーナ」

 私達はぎゅっと、繋いだ手に力を込める。


「「我らの神よ、聖癒神ケレスよ。我らは求め訴える! 我らの願いを聞き入れたまえ!」」

 私とアレクサンダーは、想いをひとつにして聖癒神に祈る。


――――私とアレク、二人の想いはひとつ。

 理不尽な時間を強いた者に裁きの代償を。


『妾の愛し子の求めにより、汝らの求める者共よ、今この場に顕現せよ!』

 以前にも聴いた威厳のある、聖癒神ケレスの声が響く。


 ドン! と、銀色の光の柱が二つ聳え立つ。一つは祭壇を丸ごと包むかの如く、もう一つは、祭壇下の王子達に近い場所にだ。


 祭壇の所の輝く光は、みるみる内に収束し、動物の姿を構成していった。

 白銀の色彩を持つ、六枚羽根の伝令鳥。転職でもお目に掛かったバルキリー神の伝令鳥だ。他のはお初だ。

 新雪の様な色彩を持つ、白猫。

 その伝令鳥と、白猫が、足でガッチリ押さえつけている黒色のネズミが一匹。良く見ると、鳥も猫も爪を食い込ませている。ネズミは、じたばたもがいているが、更に爪が深く食い込んで悪化していた。


 そして、もう一方の祭壇の下の白い光の中には、人の影が二つあった。



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