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封印されてた記憶 7

「……ねぇ、アレクサンダーはどう思う?」

 ふかふかの天蓋ベッドの上で、ゴロゴロしながら私は、アレクサンダーに問い掛けた。

 今夜の夜着は、フリフリのレースまみれのネグリジェである。お人形さんの様になっているが、アレクサンダーには可愛いと、結構好評だったりする。


「そうだねぇ、正直に言ってしまえば怪しいね。何かウラがあってもおかしくはないと思う」

 私の頭に手を伸ばして、優しく撫でながら返答をする。

 にっこり笑顔でアレクサンダーは、私の隣に寝転がっている。端から見たら、ぶっちゃけ妙な状態である。いわゆる添い寝ですよ、奥様!(笑)

 イケメンに添い寝! 乙女の妄想の理想その一!! 壁ドンと並び立つ理想シチュエーションのあれで御座います。

 最初の頃はアワアワしながら拒否を示してはいたものの、あれよと言う間になし崩しに定位置が出来上がっていました。うん、あれだ、机に突っ伏して寝たのが運のつきだった。知らぬ間にお姫様抱っこで運ばれた上、一緒にベッドインしてたのよ! 目が覚めた時の衝撃は筆舌に尽くし難い思い出です。ふ、ふふふ……。(遠い目)



「あのね、私は公爵家の跡取りじゃ無くなれば、冒険者として旅してみたいと思っているんだ。誰かと結婚とかしたいとか思えないし。アレクが居れば満たされるもの」

 魂で結ばれている現実は、伊達じゃない。恋をすっ飛ばして、その先にある無条件の愛レベルのものだ。触れる、感じられる、感覚的なものを持っていても、他者でその存在を基本知覚する者はほとんどいない。それは、マスターと守護天使との特別な絆。

 マスターだけが、見る事を感じる事を触れる事を許されている。神に力を貸して貰えれば、その姿を拝めるらしい。たまに神事を行う時などの神殿内で、神の力が及ぶ際に視認されたと言う事例がある。

 そう、守護天使の存在は、普通と違うのだ。神が認めて与えた存在。人は繁殖し、繁栄を求める様に世界に固定された存在。

 天の御使いは、人のカタチをしているが、人とは違い性欲とか、食欲とか、人が持って生まれたありとあらゆる欲望がない。あるとすれば、互いを求める欲求位だろうか。傍にあり、触れられる距離にいるそれだけで満たされていく。また、天使は繁殖する為の肉体的機能を持たない存在として降臨している。なので、不思議な事に頬のキスひとつでも半端なく、心から満たされてしまう。

 これが、この世界の人間相手なら嫉妬や欲望や希望や失望に振り回されるのだろう。


 恋愛を誰かとする……誰かを好きになって、アレクサンダーと距離を置くとか考えたら、何だか怖くなってしまう。

 唯一無二の半身を放っておいて、恋愛バカになれるなんて思えないけど……。


「…………」

 無言で私は、アレクサンダーの胸元に抱き付く。よしよし、とアレクサンダーは私を撫でてやんわりと抱き締めてくれる。

「……大好きだよ、ティーナ。何があったとしても僕は傍にいるからね」

「うん」

「ティーナが誰かを好きになったとしても、僕はティーナを嫌いにならない。人の世の枠組みは理解しているし、嫉妬も起きない。想いを傾けられるのは、レスティーナただひとりだからね」

「うん」

「だから、安心して」

「うん」

「もう、寝るといい」

 とんとんとんと背中を優しくリズミカルに、叩いて私を眠りに誘うアレクサンダー。

 グルグル考え過ぎているのを自覚している。もう、いいやーと気持ち的に吹っ切って、アレクサンダーの胸板にぐりぐりと額を寄せて、私は瞼を閉じた。



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