狙われたコデックス 07
「あった!」
ラングハート家の蔵書室で、クラネスが声を上げた。
書架の一角に、何気なくそれは仕舞われていた。
「……御祖父様も、まったく無頓着な方だ。国王陛下から賜ったものであれば、もう少し厳重に保管しておくべきだろう」
グレンがひとりごちると、それを聞いたクラネスがくすりと笑う。
「でもこうしているから、却ってどこにあるのかわかりません」
「……そうだな。きみがいなくては、探しあてることすらできなかっただろう」
クラネスはコデックスを机まで運び、そのまま真剣な表情に戻って、ページをめくる。
最後まで眺めてから、クラネスは持ってきたゴットフリートに関する書物と見比べる。
それから少し考え、顔をあげた。
「グレン様。思い当たることが、ひとつあります」
クラネスのその琥珀色の瞳に、強い光が宿る。
「さっき私は、このコデックスには彼の気に入っていた二〇曲が収められているといいました。でも、彼が死の直前に作成したという、最後の一曲がここには収められていないんです。その代わりに、これが」
クラネスはコデックスを開き、最後の一頁を開いた。茶色い羊皮紙には、古いアスファリア文字が書かれてあった。
『人生の終わりに、魂を葬送する』
クラネスは王宮から持ってきた書物に目をやる。
「彼が死の淵で作成した、葬送曲が存在すると言われています。その譜面は、現在まで見つかっていません」
「幻のレクイエムか……」
「私はコデックスを調べます」
クラネスはいつになく険しい顔をして、コデックスを開く。持っていたルーペを手に、羊皮紙に顔が触れるくらい近づいて、もうクラネスはグレンの存在など忘れたように、意識を集中させていた。
「クラネス、コデックスを解いて分割してくれ。手分けした方が早い」
グレンはそう言って、クラネスと同じ作業をする。
それをはじめて、一時間が過ぎた頃だろうか。クラネスが突然、あっと声をあげた。
「どうした」
クラネスはコデックスから顔を上げ、こちらを見る。その瞳は、はっきりと興奮していた。
「見てください、ここ」
クラネスはルーペをその場所にあてる。注意深く見れば、挿絵の一部に、数字が一文字隠れている。ルーペで見なくては、判別できないくらいの大きさで。
「他にもあるかもしれない。挿絵を見てください」
「わかった」
それからさらに一時間。二十枚の挿絵の中から、二つの文字と、六つの数字を探し出すことができた。
「頁の順番にならべると、X、1、3、0、Y、0、3、3。何かしら……」
唇を噛むクラネス。
グレンは少し考え、それからアスファリアの地図を机上に広げる。
眺めれば、すぐに自分の考えが間違っていないことがわかる。
「グレン様、何を?」
グレンは机上にあった羽ペンにインクをつけて、二本の線を勢い良く引いた。
「数字は座標だ。130と033、場所は――」
地図を覗きこみ、クラネスは声を上げた。
「アスファリア大聖堂!」




