8
「汝に言い忘れたことがある」
どうやら悪夢を観ているらしい。あの女神が目の前にいるのだから。しかも言い忘れたとかほざきやがる。
「一応神の言葉だ。君たちはわたしの言葉をありがたく聞いていればいい。」
……
「夢とは眠りの中。眠りとは擬似的な死を意味する。わたしの世界に近いのだよ。よって君に話がある時には1番の近場となるこの夢に入らせてもらう。それはいいとして」
良くねえ。安眠妨害。本当に自分勝手だなこの女神野郎。
俺がうだうだ言ってるのを知ってか知らずかソレは言葉を紡ぐ。
「時を止めたな?汝。時が止まっている物質は鋼のごとく止まったままだ。汝と汝に触れし物のみその動きを続ける。」
「触れているもの、それは汝が決めるのだ。
汝の力が続く限り時は動かぬ。触れていない物は動かせぬとも言うがな。…頭が回れば簡単か。」
いちいちシャクに触るなこのアマ。こんなものを信者が観たのなら無神論者がブームになりそうだ。
「目覚めた時、汝は拾われているであろう。そこから始める。始めようか。では、わたしを楽しませてくれ。汝に幸あれ…」
言っていることが良くわからないなあ、とぼんやりと思う。ぼんやりとしたこの感覚は夢から覚める合図なのだろうか…
目覚めると知らない天井だった。野垂れ死(つまらない死)は奴が許さないというのは数少ない俺が理解した奴の趣向だった。