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魂だけの俺は項垂れる。むちゃくちゃな話を止めることも出来ず、眺めることしか出来ないのだから。
「汝、欲しい能力を言え」
むちゃくちゃだこんなの。危険な世界に放り込むから好きな能力を言えだって?なら魔法も身体能力も要らなかった。いっそのことその世界から逸脱したいのが本音だった。
その本音を聞いたらしく、女神は優しく微笑んでもしくは新しいおもちゃを見つけたのごとく微笑んでこう言った。
「逸脱…世界からの逸脱。
時間停止を授けよう、逸脱したなら汝が世界だ。
代わりに魔法、肉体は凡人未満としよう、それで平衡を取ろう。案ずることなかれ、停止した世界では最後に汝の触れたもの以外、認知すら出来ぬ、動くことも出来ぬがな。
生きるがいい。
死ぬがいい。
そして喜べ、悲しめ。非凡なる力で私を楽しませろ!
わたしは始めることしか知らぬ。言うなればコイントスにも似た力。コイントスをした後に事がどう転ぶかはわたしも知らぬ。知らぬからこそ無限の可能性がある!人は面白い!
汝に幸あれ!」
その自己満足としか言えないような言葉を最後に、俺の意識は途切れた。