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あいろこいろ  作者: カラクリカラクリ
本編
98/104

097

「ひっ」


金華猫が息を飲む。

光は陣から鞭のようにしなって金華猫の手足を搦め捕った。


「かかったな」

「っ」


声にならない悲鳴をあげて金華猫が膝をつく。

荒い息のままに、木路蝋が呪をつむいで蘇芳を振り向いた。


「木路蝋さん、これ」

「止めは頼むぞ。氏神、夢獣の祖」

『言われなくても』

「兎さん」


頭の中で響いた呪。

蘇芳と露草を取り巻くように、似たような陣が淡い翡翠陣に光を放つ。

ふわりと重力に逆らって蘇芳の髪が浮かんだ。


「嫌よ!消えたくないっ!」

「何!?」


ぶちりと、金華猫の右手の拘束が契れて、衝撃波に窓ガラスが砕けて降り注ぐ。

それと同時に、蘇芳の周りの空気が圧力を変えた。


「!?」


息苦しさに慌てて露草を見た蘇芳の頭の中で、冷静な白銀の声がする。


『反動だ。手順をかなり省いたな。陣の力が足りない』

「そんな。どうしたら」

『手は、なくもない』


歯切れの悪い言葉。

けれど、問わずにはいられないのだ。

陣を抑えるように力を注ぎつづける木路蝋をちらりと見て、蘇芳は尋ねる。


「なんですか?」

『ここにいる連中から糧を得る。それぞれからなら、酷い量にはならないはずだ』


答えは殆ど想定内で、蘇芳は思わず少しだけ笑ってしまった。

視線の先で、エネルギーを奪われた露草と山吹の血の気のない顔と、戦い疲れた鴇と鈍、そして木路蝋の顔が揺れる。

もう充分だ。

そのために、蘇芳はここにいる。


「兎さん、任せます。だから、そのかわり、露草達は助けてください」

『どういう意味だ』

「全部、私がもらいます。だから、この世界は、護ってください」

『おい!』


ぶちりと、金華猫の左足が自由になった。

蘇芳は慌てて叫ぶ。


「兎さん、早く!」

『分かってるのか!?そんなことすれば、お前は』

「勿論です」


焦ったような声に、蘇芳が静かに頷くと、不意に苦笑するような気配がして、露草が目を開いた。


「勇ましい娘子よの」

「氏神、様」


その瞳の色をみるのは、二度目。

それは、確かに織の物だった。



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