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伽羅が初めて露草と話をしたのは、あの声を受け入れてすぐだった。
姿を見たことだけはあった。
そう高くない身長も、人を近付けないような壁も、伽羅にはそうかと映っただけだったけれど、ただその柔らかそうな髪が多分伽羅の目を惹かれたんだと思う。
思えばなんと皮肉な巡り会わせだったんだろう。
声を受け入れた反応にうずくまっていた伽羅に、露草が声をかけて来たのだから。
「ちょっと、あんた。そんなとこにいると邪魔なんだけど」
ぼんやりと見上げると、柔らかそうな髪に光が照り返していた。
「なに? 気分悪いの? 全く。体調管理くらい自分でしなよね。あんた、スポーツマンだろ」
「え?」
「なんだよ。僕が、表彰されるような人間を覚えてないとでも思うわけ?」
そう言ってから、露草は嫌そうに眉を顰める。
「あぁ。あんたは僕のこと知らないから当然か。露草。クラスメイトって概念があるなら、クラスメイトだよ」
それから良く話すようになって、冗談も言えるようになったのに。
『私はね、私を消滅させようとしてるやつと戦って勝たないといけないの』
「勝つって何?」
『私はね、人間の運や夢を食べて強くなるの。だから、沢山の餌を得て、強くなればそいつを見つけて、食べられるの。その前にやられるわけにはいかないのよ』
「見つける?」
『私が貴女に住まわせてもらったみたいに、そいつも誰かに住んでるの。その誰かの運や夢を、私が食べるために貴女に手伝って欲しいの』
「あんたが来たからだ。だから、あたし、露チャンが消える手伝いなんかしなくちゃいけない。あんたが来なかったら!」
少女を睨んで、伽羅は感情のままに叫ぶ。
「だから、だからせめて。あの男の次は露チャンじゃなく、あんたよ!」




