88/104
087*
「ちょ、ちょっと待ちなよ。あんた、何言って」
追いつかない思考。
目を背けるように動かした先で、強か背中を打ち付けたらしい鈍が起き上がらないままに僅かに呻く。
「やっぱり、そういうことなわけね」
伽羅の口から零れ落ちた言葉は、教室に良く響いた。
「どういう意味か知りませんけど、山吹をあんな風にした責任、ちゃんと取って貰いますから」
「そんなの知らないわよ。元はと言えば、そっちが悪いんじゃない」
「どういう意味ですか」
蘇芳の言葉は、まるで氷のようだ。
冷ややかで、硬質で。
全てを拒絶しているように聞こえる。
「あたしが用があるのが何か、あんた達は解ってた。それなのに、そんな小細工したんだ。覚悟はあったでしょうが」
「覚悟? 笑わせないでください」
「そりゃ、こっちの台詞だよ。まったく。まさか、露チャンがそうだなんて、本当、冗談も良いとこじゃないか」
伽羅の喉から零れた笑い声は何処か虚ろで、けれど同時に、歩みよることのできない距離を露草に感じさせた。
「伽羅、あんた本当に、」
「そっくりそのまま返すよ、露チャン。なんであんたかねぇ」
それは世界に無慈悲な問いを突き付けられた瞬間だった。




