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ばちりと、張りつめた弦が弾けるような音が唐突に響いた。
「鈍さん!」
顔を上げた蘇芳の悲鳴のような声。
のろのろと顔を向けた途端に、風が横切った。
「っ」
吹っ飛んだ鈍の背中が、机の群れにぶち当たる。
酷く鈍い音が、一拍遅れて露草の耳に届いた。
「何? どうなって」
思考が、全く追いつかない。
視線の先には俯く少女。
「きゃ、」
視界を遮ったのは、見慣れた小さな背中だった。
「貴女の、好き勝手にはさせません」
「ちょっと、蘇芳。何言って、」
「貴女ですね。夢獣使いは」
その言葉は、思考を放棄させるのに十分だった。




