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山吹の状況に触れて、珍しく弱気になっていたからだろうか。
あの瞬間の失態を、蘇芳は悔やんでも悔やみきれない。
「馬鹿か、お前は」
立ち位置は単純だ。
蘇芳の足元に、山吹がいて、呆れたように呟いた鈍を挟んで向こう側に露草がいる。
そして、もうひとり。
露草の後ろに、一人の少女が立っていた。
「はぁ!?」
「良いから、退け」
「退く訳ないだろ!伽羅になにするつもりなわけ!?」
蘇芳は少女に見覚えがない。
言葉を交わしたこともなければ、あったこともない。
ない筈だ。
それなのに。
露草の肩越しに、目が合った瞬間、蘇芳の心臓がどくりと跳ねた。
「っ!?」
思わず襟首を押さえて、蘇芳は言葉を飲み込んだ。
まるで自分のものではないみたいに、心臓が騒いでいる。
「(な、に)」
『ちっ。小僧に触れさせるな!』
鋭く放たれた言葉に、無理やり視線を押し上げると、露草の肩を、その手が掴んでいた。




