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『か娘、おい!馬鹿娘!』
不意に頭の中に響いた声に、蘇芳ははっとした。随分長い間呆然としていたような気がする。けれど、
「うさぎ、さん?」
『さっさと起きて、動け!』
「でも、山吹が」
腕の中の山吹はぴくりとも動かない。眠っているのとは違うことくらい蘇芳にも解った。泣くなんてできない。そんなのは意味がないと解っているのに。
『記憶を喰われちゃいるが、酷くはねぇ。あの小僧じゃ、こうはいかねぇぞ』
うさぎの言葉の後に、唐突に蘇芳の耳に届いたのは、怒気を孕んだ露草の声だった。




