081*
蘇芳の横顔に浮かんでいるのは焦燥だ。
まるで、兎を喰らったあとのようだ。
あの後蘇芳は、まるで喪に服すかのように外出を止め、ずっと一室に引きこもっていた。
あの時、木路蝋に引きずり出された蘇芳は、やっぱりあんな顔をしていたのだ。
どうして良いかわからないような、何かを後悔するような。
露草と違い、教室の後ろのドアから入ったらしい蘇芳は、奥に倒れている少女を抱き起していた。
ちらりと見えた顔は、露草も良く知っている。
「山吹! 山吹、しっかり」
「無駄だ」
「そんな。だって」
そして、男と露草の間で身を起そうとしている少女も。
「っ」
「立ち上がる気か?」
宙に手を上げた男に、露草ははっとして男と少女の間に割り込んだ。
「ちょっと、何やってるわけ!?」
挑むように男を睨んで、露草はさっと少女を庇うように手を上げる。
「邪魔だ」
「退く訳ないだろ」
「つゆ、チャン?」
背後でゆるゆると顔をあげた伽羅に、露草は男から視線を逸らさないまま、ちらりと流し目を向けた。
身体的に怪我はなさそうだが、頭に添えられた手と酷くゆがめられた顔が、伽羅の様子を物語っている。
「あんた、何やってるわけ?」
直接の面識自体はなくても、露草はこの男の事を知っていた。
なにより、つい先ほどまで
「本当は、あんたが黒幕だったわけ? 鈍先輩」
露草が睨みつけると、宙に手をあげたまま鈍は僅かに目を細めた。




