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あいろこいろ  作者: カラクリカラクリ
本編
81/104

080*


上手く頭が回らない。

露草は電話を手にして、鴇に続いて応接室を飛び出した。


『昼間から、なんだ。そもそも今は授ぎ』

「良いから黙って聞きなよ! こっちは混乱してるんだよ!」


電話口に喚くと、異変を察したのか木路蝋は黙り込む。

それをいいことに、露草は現状をまくし立てた。

本当は、連絡なんてする気はなかったのに。

あの時の蘇芳があまりに必死だったから、気付けばダイアルしていた。


『持ちこたえろ。すぐ行く』


露草の言葉が途切れたところに滑り込むように紡いで、木路蝋は電話口でそう告げる。

あまりにも冷静すぎる様子に、逆に露草は舌打ちしたくなった。

解っている。

こういう冷静沈着なところが、木路蝋が当主として器の大きいところなのだ。

頼りがいがある、と思わず思ってしまうような。

一人意気消沈した露草に気づかなかったように、電話口から声が零れる。


『お前は、今のところは平気だな』

「僕はね。でも、蘇芳が」

『どうした』

「突然飛び出して。今追いかけてる」


一瞬の沈黙があって、お前は行くな。ひやりと首筋に氷を押し当てられたような声がした。


「行くなって」

『お前は行くな。安全な場所を探して、そこにいろ』

「馬鹿じゃないの!? そんなことできるわけないだろ」


反射的に言い返して電話を切ると、少し先を走る鴇が心配そうに振り返る。


「大丈夫かい?」

「人手は頼んだから」

「そうか。それにしても、一体どちらに行ったんだろうね」


突き当たった階段に、鴇が足を止めた。

学校全体が妙な感じだ。

先ほどから、露草は何度も意識の中にいるはずの織に呼びかけ続けている。

昨日の今日で、なおかつ学校という場では、なかなか難しいのかもしれないが、此処で働かなくていつ働くのだ。


「まず、一階から」

「二手に別れた方が効率がいいだろ」

「良いのかい?」


心配そうな鴇に頷いて、露草は階段に足をかけた。


「これを」

「なにさ、これ」


さしだされたのは手のひらサイズの人型の紙切れで、鴇はそれを露草に押しつける。


「何かあったら、さっと撫でてくれればいい。気を付けて」

「あんたもね」


その教室にたどり着いた露草が見たのは、嵐の痕のように錯乱した机と椅子。

そして、窓際に立つ男とその前に力なく倒れた二人の少女。

そして、我を失ったように少女に駆け寄る蘇芳の姿だった。


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