80/104
079*
あぁ、もう。
うんざりしたように腕を払う。
突き放された小柄な少女は、思いの外勢いよく床にぶつかって少し跳ねた。
「鬱陶しい」
床の上で、腕が動く。
あぁ、もう。
さっさと手放してしまえばいいのに。
そうすれば、楽になれるのに。
『鬱陶しい』
もう、誰の言葉なのかもわからない。
生まれてくるこの苛立ちは、誰の感情なのだろう。
酷く緩慢な動作で、持ち上がった顔が酷く歪んで睨む。
あぁ、もう。
その動きも。
表情も。
何もかもが。
頭の奥がちりちりと何かを訴えているようなきがするのに。
苛立ちがそれを埋め尽くす様に浸していく。
「さっさと遣れ」
『了解よ』
ぐわりと頭の中で小さな種がはじけた瞬間、床の上の手は力なく落ちた。
あぁ、もう。
頭の中は霧だらけだ。
泥沼に嵌りこんだ。
もう、後戻りする術はない。




