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「貴方は、夢獣使いではない、と?」
「違う。そんな大陸の一族になった覚えはない」
「それなら」
「極東の島国出の陰陽術師。それが解りやすいか?」
淡々と告げて、鈍は重さを感じさせない動作で気を失った元番長の背中を花壇に預ける。
「どうして、言ってくれなかったんですか!」
眦を吊り上げて、蘇芳は鈍に食って掛かった。
この口調。
この様子。
あの写真。
全てが解っていたような飄々とした様子は気に障る。
「あぁ?」
「貴方がさっさと名乗り出てくれれば、こんな勘違いは」
「他家との接触は極力禁止。それが家訓だ。何処からも遠いところに立っていれば、軋轢もなにもない」
「馬鹿じゃないですか!?」
はっきりきっぱりと吐き捨てて、蘇芳は鈍の胸倉を掴んだ。
「悪魔だろうと悪霊だろうと魔だろうと呪だろうと、呼び方はなんだっていいんですよ。夢獣使いだろうと、陰陽術師だろうと、同じものを視てるのに、どうして手を結ぼうと思わないんですか。軋轢を考えるなら、仲良くなれるように尽力してくださいよ!」
ぽかんとした鈍が次の瞬間笑い出す。
憮然とした蘇芳の額を弾いて、鈍色はすっと指をあげた。
「威勢の良い啖呵の礼にひとつ教えてやる」




